鈴木亮平演じる西郷隆盛の生涯を描く大河ドラマ「西郷どん」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。
放送中の最終章「明治編」では、盟友である西郷と大久保利通(瑛太)の対立が、物語の大きな軸として描かれている。
2人は、切磋琢磨しながら成長してきた幼なじみ。しかし、岩倉使節団から帰国した大久保と、西郷の政治に対する姿勢が行き違い、徐々に亀裂が生じていく。
1年3カ月という長期間の撮影の中で変化していく大久保を、瑛太はどのように演じたのか、クランクアップ直前のインタビューで聞いた。
大久保は、いろいろな種類の種をまいてもすぐに芽が出てこない人
――明治編に入ってから、衣装なども大きく変わりましたが、心境に変化はありましたか?
何よりも“大久保卿”と呼ばれるようになったことが大きくて、責任を感じました。
僕の執務室のセットも、すごく広く造られていて、背中には日の丸を背負っているんです。そこに腰かけた時には、表情を変えた方がいいんじゃないかとか、いろいろ考えました。
明治時代に入ってから、大久保は自分の邪魔になった人間を処刑していますし、焦りをすごく感じていたように思います。日本をより豊かにするために、文明を発達させようと突っ走っていたんじゃないでしょうか。
――長期間演じてきたからこそ分かる、大久保の魅力的な部分を教えてください。
大久保は、いろいろな種類の種をまいてもすぐに芽が出てこない人で、何をやっても久光(青木崇高)に潰されたり、岩倉(笑福亭鶴瓶)にかわされてきて「いつか見てろよ」という思いを抱えてきた人だと思うんです。
大久保を演じる上で、僕自身も抑圧されているストレスや毒素をずっと抱えているような気持ちになっていました。ただ、尊敬を持って演じてさせていただこうと思っているのと、決してダークヒーローという表現にはしたくなかったので、芝居では葛藤がありました。
自分の感情を吐くことも少ない役なので、気持ちが消化不良になることも多くて、僕自身にも負荷がかかっていたようで、「撮影に行く足が重い」と思った日もたくさんありましたし、終盤までは、大久保の“演じがい”が分からなかったんです。
でも、そのいろんな思いが最終回に向けての放送に全て集約されていると言っても過言ではないです。それくらい、前半から終盤にかけての変化の振れ幅が結構大きいということは、大久保の魅力だなと感じています。
――大久保を長期間演じている中で、一貫して変えなかったのはどんな部分だったんでしょうか?
孤独感ですかね。共演者の方々とは雑談をしないようにしていました。控室にこもって、一人で携帯ゲームをしてました(笑)。孤独は、絶対に大久保の中にずっとあるものだと思っていたので、自然にそうなっていきましたね。
――最終章で対立してしまう西郷と大久保の関係性を、瑛太さんはどのように考えて演じましたか?
1年3カ月、西郷演じる亮平くんと撮影してきたので、意気投合しながらも西郷と大久保はぶつかり合うこともあって、共に前だけを向いて士気を高めてきました。
亮平くんの方が背負っているものが大きいと思うので、僕から「大丈夫?」と声をかけることもありましたし、お互いに苦労なども分かち合いながら長期間やってきました。
2人の関係性は月と太陽のように描かれていて、それが最終回に向けてさらに色濃く、本当にはっきりと明暗を分けて見えてくる展開になっていくので、ドラマチックで面白いなと思いながら演じました。
――大久保にとっての西郷は、どんな存在だったと思いますか?
大久保は剣術もあまりやっていなくて、勉学に励む性格だったので、“ガキ大将”的な存在で年上の西郷の背中を追いかけてるっていう感覚は常にありました。
僕自身も、いろんな芝居の引き出しを持っている亮平くんを見て羨ましいなと思いました。
もちろん僕は亮平くんも、亮平くんが演じている西郷のことも好きですけど、大久保はどんな人にも愛される西郷に対して、羨ましさや嫉妬心もあったと思うんです。その気持ちにも共感できます。