実はこの永井こそが、肋木を日本に持ち込んだ人物。「いだてん―」公式サイトでは、永井の人物紹介に「ヨーロッパから日本に体操を持ち込んだ日本スポーツ界のパイオニアの一人。自らが普及させた体操器具『肋木(ろくぼく)』が代名詞」とある。
スウェーデンに体育教育を学びに行った永井が、当時からスウェーデン式教育体操の一環で使われていた肋木も持ち込んだのだという。そんな歴史を持つアイテムが、スウェーデンのストックホルムで開催されるオリンピック出場を目指す四三の物語に登場するのだから、嘉納ならずとも「奇遇だ」と呟きたくもなる。
ちなみに現在では、器械体操など高度な体操技術の向上に使われるほか、文部科学省が発行する小学校体育の教師用指導資料「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」でもその名を確認できる。
同ハンドブックの「固定施設を使った運動遊び」の項では、肋木をジャングルジムやうんてい、平均台などとともに紹介。昇り降りや逆さ姿勢で運動機能を発達させるほか、じゃんけんを取り入れて“運動の楽しさ”を味わう目的や、順番を守る態度を学ぶ目的でも活用を促している。「小学校で見た」という声が多いのは、そういうわけだ。
第3回ラスト、門限を破って肋木にぶら下がる美川の足の向こう側に四三が目にしたのは、「秋の校内マラソン」「全員参加」の文字だった――。古今亭志ん生(ビートたけし)は「肋木の間から世界が見えたようでございます」ときれいにサゲた。
そして27日放送の第4回「小便小僧」では、四三が人生初の本格的なマラソン・高師マラソン大会に挑む。一方、そのころ嘉納は日本初のオリンピック予選開催を前に山積する難題に頭を抱えていた――。
例年になく“ごく近い過去”を描く同作だけに、今後もこうした「目にしたことはあるけれど使い方や由来は知らなかった」アイテムにスポットが当たることもありそうだ。近代から現代へ、地続きの歴史を味わう大河ドラマ「いだてん―」ならではの面白さに期待したい。
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