オタク知識を蓄えた不遇の10年間
――アニメ好きが市民権を得て、若い世代はナチュラルに仕事に繋げられている印象があります。吉田さんの世代からそういう状況はどう見えますか?
よきゅーん(乾曜子)ちゃんも話されていましたが、しょこたん(中川翔子)が注目されるまで、アニメ好き、特に女子のアニメ好きって白い目で見られることが多かったと思うんです。事務所にも、アニメや漫画、ゲームが好きだからそっち系のお仕事をしたいですと言っても、「お前に何ができるんだ」みたいなことを言われ続けて。ずっと仕事にならない年月を10年くらい過ごしていて、「何だよ…」って思ってました。
しょこたんのおかげでだいぶ変わりましたけど、そもそもそういうお仕事が今みたいに多くあるわけでもなかったんですよね。だから、自分は仕事にできるほど本当にアニメやゲームが好きなのか、自問自答しながら知識を蓄え続けるという10年だったので、今のアイドルたちは羨ましいなって思います。
アニメが好きということがマイナスではなく、むしろ「俺たちと同じ」っていう好感度に繋がっているじゃないですか。
――先輩として、アニメ好きのこれからの人たちに伝えていただけることはありますか?
アニメが好きな気持ちは私ももちろん同じですごく分かるのですが、先輩として自分の後悔を踏まえて言いたいことは「たくさんのことを勉強してほしい」と言うことですかね。机に向かう勉強だけじゃなく、何でも。「(何か)を知る機会」というのに貪欲になってほしい。それが絶対、後からアニメを見ることにも役立つと思います!
アニメを見るだけじゃなく、人生の中でも、手に入れた知識が何かの役に立つこともたくさんあります。
20代前半の頃はとにかくアニメ知識やゲーム知識が欲しくて学んできたし、それ以外の知識はいらない、とすら思っていたんです。でも20代後半の頃に、アニメやゲーム以外の知識を持っていた方がもっと作品を楽しめるんじゃないか、という初歩的なことに気が付いて(笑)。
例えば、バスケアニメを見るときにバスケをやってた方が断然面白く見れますよね。私はそう言う色んな経験を本当にしてきていないので、後悔しています。エンタメはもちろん色んな遊びも。
今、能や歌舞伎や落語など伝統芸能なども見にいって吸収しようと頑張ってます。
なので、今の若い子たちの中で昔の私みたいな人がいたら少しだけで良いから、色んなことに興味を持つと後悔しないよ、というアドバイスを送りたいですね。
取材・文:鈴木康道