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『リバーズ・エッジ』 恥ずかしいけど泣きに来たんだ<スピードワゴン小沢 映画連載 第1回>

2019/03/29 12:20

『リバーズ・エッジ』
『リバーズ・エッジ』(C)2018 映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社


<スピードワゴン小沢一敬連載>『このセリフに心撃ち抜かれちゃいました』


<スピードワゴン小沢一敬連載>『このセリフに心撃ち抜かれちゃいました』
<スピードワゴン小沢一敬連載>『このセリフに心撃ち抜かれちゃいました』


小沢一敬:愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。

第1回『リバーズ・エッジ』 恥ずかしいけど泣きに来たんだ


自ら小説を執筆し、年間約100冊もの小説を読むことから芸能界きっての読書芸人として知られ、また自宅に3000冊以上の漫画を所蔵するという無類の漫画好きとしても有名なスピードワゴンの小沢一敬さん。映画も大好きで、10代の頃から数々の作品を観ては名セリフをチェックしてきたと言います。そんな小沢さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」を今回からお届けします。記念すべき第1回、小沢さんが選んだのは岡崎京子のコミックを行定勲監督が実写映画化した『リバーズ・エッジ』('18)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

――まず『リバーズ・エッジ』を選ばれた理由は?

小沢一敬(以下・小沢)「10代の頃、ものすごく岡崎京子さんの作品が好きでよく読んでいたんです。『ジオラマボーイ☆パノラマガール』や『くちびるから散弾銃』とか。とてもセンスが良くて面白かったしね。でも、そんな漫画を今読めるかなという複雑な気持ちもあって。自分が歳を取ったからかな(笑)。とはいえ、主題歌を俺が大好きな小沢健二さんが歌っている。岡崎京子さんと小沢健二さんの長年の親交を考えると、2人のファンとしては映画が気になる。観てみたいけど、ちょっと複雑な気持ちもあったんですよ」

――10代の頃の小沢さんって、どんな若者だったんですか?

小沢「みんなが学校に行っている昼間に、本を読むか、映画を観るかしてました。あの頃、夢中になっていましたね。そんな頃に人生観を変えられた映画として、和田誠監督の『麻雀放浪記』('84)と出会ったし、映画にはエンタメを求めるよりは『この映画に込めた監督のメッセージは?』と意味を求めたり。だから映画も、ジョン・ヴォイト&ダスティン・ホフマン共演の『真夜中のカーボーイ』('69)や、ポール・ニューマン&ロバート・レッドフォード共演の『スティング』('73)といったアメリカン・ニューシネマや、社会派作品をよく観ていたように思います」

――そんな10代を過ごした小沢さんが夢中になった漫画の実写映画。いかがでしたか?

小沢「結論から言うと、今観られて良かったな、ですね。観る前は、もっと痛く感じるかなと思ったんです。描かれていることが、若者たちの孤独やどうしようもない欲望や焦り、不安だったりするじゃないですか。

『リバーズ・エッジ』
『リバーズ・エッジ』(C)2018 映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社


だから、『今の俺には観られないわ』となるかなと思ったけど、意外と違った。『あー、俺、この感じ、知ってる』という感覚だった。それは、原作を知ってるとか、この内容を知ってるというのではないの。俺、10代の時、これやったわと思ったの。例えば、観音崎(上杉柊平)みたいにみんなの前で調子のいいことやったし、山田(吉沢亮)みたいにみんなをバカにして見ていたり。主人公のハルナ(二階堂ふみ)は一番普通に見えるけど、エッチしているときに、心はここにないみたいだったり。登場人物全キャラを『俺は知ってる』『俺はやってる』という感じだったの。

――漫画との違いを感じましたか?

小沢「漫画ではすごく乾いている感じだったけれど、映画は湿度が高い。行定監督のカラーなのかな。それから、夜の橋のシーンが印象的なんですけど、この映画では夜のじんわりとした感じや体が夜露でぬれるような感じが映像から伝わって来ますよ」

『リバーズ・エッジ』
『リバーズ・エッジ』(C)2018 映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社


――この『リバーズ・エッジ』で、シビれた名セリフを教えてください。

小沢「俺が好きなのは、物語の始まりのほうにあるセリフ。主人公のハルナは、自分の彼氏である観音崎にいじめられていた山田を助けたことをきっかけに山田と親しくなって、『僕の秘密の宝物、教えてあげる』と夜の河原に連れて行かれるんです。で、山田がそもそも河原に行った理由を明かすんですけど、それが『恥ずかしいけど泣きに来たんだ』というセリフ。わざわざ河原のやぶの中に泣きに行ったということは、人前では泣かないってこと。人前で泣く奴は人がいなくなったら泣きやむんですよ。恥ずかしいけど、泣きに来たんだというところに山田の凛とした美しさを感じるので、僕は好きですね」

――小沢さんは人前では泣かないんですか?

小沢「いや、俺はめちゃくちゃ泣きます。山崎貴監督の『ALWAYS 三丁目の夕日』('05)を友達と観に行った時、別々に座って観ていたんだけど、俺がわんわん泣いちゃって。友達は『な、なに映画館に犬がいる』とマジで思ったって(笑)」

――ほかに名セリフは?

小沢「山田が夜、川べりでハルナに『海の匂いがしない?』と話し掛けるんです。それがいい。俺、愛知県の知多半島にある海の街で育ったんです。で、15歳の頃から建設現場で働き出して、その後、自分で軽トラを運転するようになって。仕事が終わって、帰り道で左に曲がれば自分の家なのに、右に曲がると海岸線だから、わざわざ右に曲がって、その瞬間、軽トラの窓のレバーを勢いよくグルグル回して開けると、海の匂いがパーッと入って来る。それがやりたくて、毎日その道を通っていた。だから、俺はこういうセリフに弱いのよ(笑)。自分の10代を思い出しちゃうんだよね」

――小沢健二が歌う本作の主題歌『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』には、「小沢くん、インタビューとかでは何も本当のこと言ってないじゃない」という歌詞が登場します。

小沢「そうなんだよ。実は俺もそう。いろいろ話してきたけど、インタビューとかでは何も本当のこと言ってないからね(笑)」

取材・文=前田かおり

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

【放送情報】
『リバーズ・エッジ』
WOWOWプライム 4/2(火)深夜3:00
WOWOWシネマ 5/12(日)深夜1:20

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