『人狼ゲーム』は若手女優の登竜門だ! 極限の演技に挑んだ歴代”人狼ガール”の魅力<ザテレビジョン シネマ部>
スタジオジブリ制作の映画『思い出のマーニー』('14)でヒロインの声を務めたことで注目を集めた高月彩良は、3作目『人狼ゲーム クレイジーフォックス』('15)で愛のためなら手段を選ばないという、まさに"狂った狐"を怪演し、女優として新境地を見せてくれた。
4作目『人狼ゲーム プリズン・ブレイク』('16)の主役には、TV『烈車戦隊トッキュウジャー』('14~'15)でブレイクした小島梨里杏。自責の念を抱き続けているという繊細な主人公だが、監督からは誰より"普通"であることを今作で求められたという。普通を演じるのがいちばん難しいことは明白だが、小島の演技は監督の期待に十分応えられていた。
5作目『人狼ゲーム ラヴァーズ』('17)の古畑星夏は、人狼にして「恋人」という二重の役職が与えられる複雑な役どころ。シリーズの中で一番過酷な主人公かもしれない。その理由は、彼女がゲームに隠された"ある真実"を知ってしまうから。衝撃の事実を知った瞬間の古畑の演技は、一見の価値アリだ。
映画『14の夜』('16)ではタバコを吸ってバイクに乗るヤンキー、映画『血まみれスケバンチェーンソーRED』('19)ではセーラー服にチェーンソーを持って大暴れ。どちらも6作目『人狼ゲーム マッドランド』('17)に主演した浅川梨奈の姿だ。実は彼女、SUPER☆GiRLSというアイドル・グループの元メンバー。アイドルっぽさなど微塵も感じさせない彼女の体当たり演技は、本作でも健在だ。
そして、7作目『人狼ゲーム インフェルノ』('18)の武田玲奈と小倉優香。物語が進むにつれ、この2人のキャラが入れ替わっていくような変化のある演技は特筆すべきだろう。
実は、筆者は1作目の撮影現場に参加している。肉体的にも、精神的にもリアルに極限状態の彼女たちに、スタッフでも容易に声を掛けられない現場だった。しかし、俳優たちの安全を守りながらも、冷静な目で見守るのが製作者側だ。1本の作品に自分の持てる全てを出し切ることが、次の仕事につながることを俳優たちも知っている。だからこそ、この難しい役に体当たりで挑んでいるのだ。
命懸けの『人狼ゲーム』が如き、命懸けの演技バトルを繰り広げる俳優たち。俳優としてこの厳しい現実で生き残ることができるのか。"人狼ガール"たちのリアルな戦いをしっかりと見届けてほしい。
文=山咲藍
脚本家兼ライター。映画関連冊子の編集者を経て、2009年に脚本家デビュー。『人狼ゲーム ビーストサイド』の脚本を手掛けている。制作プロダクション・スタジオブルー所属。