<山崎ナオコーラ映画連載>第1回『勝手にふるえてろ』

山崎ナオコーラの「映画マニアは、あきらめました!」

■山崎ナオコーラ:作家。1978年生まれ。2004年にデビュー。著書に、小説「趣味で腹いっぱい」、エッセイ「文豪お墓まいり記」など。目標は「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。
第1回『勝手にふるえてろ』

私は大学時代に平安文学を勉強していて、「古語の『あきらめる』という言葉には『明らかにする』という良い意味があるんですよ」と授業で教わった。現代では「あきらめるな」とよくアドバイスされるし、現代語の「あきらめる」には悪い印象が漂いがちだが、昔はポジティブに使われていた言葉だったのだ。言葉は変化する。だったら、また変わっていくかもしれない。これからは、「あきらめる」に、勝手に明るいイメージを付けていこう。そうして、私はすべてをあきらめていった。優しい人になることをあきらめ、金持ちになることをあきらめ......、どんどん自分が明らかになる。
小説家になって15年、その間もあきらめ続けた。文学賞をあきらめ、若気の至りで「ナオコーラ」とかいう変なペンネームを付けてしまったことをあきらめ(コーラが好きだから付けたのだが、年を取って、さすがに恥ずかしくなってきた。だが、この恥ずかしさとともに、ナオコーラのまま、おばあさんになっていこう)、売れる小説を書くことをあきらめ......、そうすると本当に書きたいことだけ書けるし、楽しくなる。平坦な気持ちで、軽く生きられる。
このたび、映画のコラムを書く欄が与えられた。映画は、映画に詳しい執筆者が書くべきかもしれない。でも、あきらめるのが好きな私は、ポジティブに、「映画マニアは、あきらめました!」というタイトルで書かせてもらうことにした。遠慮して断る、ということはしない。
だって、どうですか? 今この欄を読んでくださっている皆さんの中には、映画について詳しくない方だって多いですよね? 同じ地平からの文章、面白そうじゃないですか? あるいは、詳しい方もいるかもしれませんが、自分より詳しくない執筆者の、下から目線の文章も読んでみたくないですか?
もともと映画に造詣が深くなく、普通くらいの映画好きだった私が、現在は3歳児の育児中で映画館から足が遠のいており、さらに映画に詳しくなくなっているが、はりきって書く。
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