自分の武器が使えないのであれば新しい武器を作るしかない
――普段は歌舞伎の舞台でご活躍されていますが、ファンの方からの反響はありましたか?
ドラマへの出演が発表されてから舞台に出演していなかったので、肌で感じることはありませんでした。
ただ、僕の舞台を最近見ている方からすると、“はんなり”とした卯之吉とは真逆の役をやってきているんですよね。
隈取という化粧をして荒々しく演技をする“荒事”や、大立廻りをする役を演じていたので…。
“主演だから”ということより、僕の意外な一面や時代劇の魅力を感じていただければなと思います。
――時代劇と聞くと激しい立廻り(殺陣)などを想像しますが、そういった雰囲気とは異なるこの作品の印象はいかがですか?
歌舞伎役者の自分にとって、立廻りはある種の強みだと思っています。
ただ、今回はそれがない。でも、それはそれでチャンスだと感じましたね。
自分の武器が使えないのであれば新しい武器を作るしかないし、お客さまの目線も何かに特化した人だとその特化した部分に目が行きがちだと思うんです。
それがないことによって、卯之吉の“はんなりさ”に注目していただけるのではないかなと思いました。
――演じている卯之吉や作品の魅力を教えてください。
一番は卯之吉、そしてこの作品の代名詞である“はんなり”を追い求めていきたいと思っています。
“はんなり”ってなんとなく日本人の中にはイメージとしてあるけれど、言葉で表現するとなると難しいですよね。
僕の中では、品がありおしとやか、艶やかさやたおやかさと思ってやっています。
それで周囲と卯之吉の時間の流れ方の違いや育ちの違いを出すことができれば、周囲の個性豊かなキャラクターの中で卯之吉のキャラクターを確立することができるかなと。
あとは卯之吉の人間味でしょうか。
幼い頃に大切なものを失っていて、心にぽっかりと穴が空いている。だからこその人間味や、すかしていそうに見えて実はとても親身だったりするところが卯之吉の魅力だと思います。
そんな卯之吉だからこそ、周囲の人たちが協力してくれるんでしょうね。
――卯之吉と隼人さんご自身の共通点はありますか?
全然違います!
強いて言うなら興味を持ったらとことん突き詰めてしまうところでしょうか。
卯之吉は夜道もお化けも刀も怖いのに、事件にのめり込むと夜道の中を探しに行ってしまったり…。
のめり込むと周りが見えなくなってすごい集中力を発揮するというところは同じだと思います。
あとはお化けが怖いところかな…。