<ミヤザキタケル 映画連載 第3回 >見た目や形に囚われてしまう人の心【ザテレビジョンシネマ部】

2019/05/18 19:00 配信

映画

『ワンダー 君は太陽』

『ワンダー 君は太陽』

(c) 2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. Artwork & Supplementary Materials (c) 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ミヤザキタケルの「シネマ・マリアージュ」

 

 

■ミヤザキタケル:長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。

映画アドバイザー・ミヤザキタケルがおすすめの映画を1本厳選して紹介すると同時に、あわせて観るとさらに楽しめる「もう1本」を紹介するシネマ・マリアージュ。

第3回 見た目や形に囚われてしまう人の心

第3回となる今回は、容姿の違いから生じる不和によって分かり合えなくなってしまう人の心や葛藤を描いた作品であり、同時に、分かり合うことができた際の素晴らしさや愛おしさをも感じさせてくれる『ワンダー 君は太陽』と『シェイプ・オブ・ウォーター』をマリアージュ。

『ワンダー 君は太陽』('17)

 『ワンダー 君は太陽』

『ワンダー 君は太陽』

(c)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. Artwork & Supplementary Materials (c) 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

初めに言ってしまおう。R・J・パラシオのベストセラー小説を映画化した本作は、涙なしでは観られない。

トリーチャーコリンズ症候群という遺伝子疾患が原因で、顔が変形して生まれてきた10歳の少年オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)。そんな彼が初めて学校へ通うことで巻き起こるさまざまな出来事を通し、差別や偏見、誤解にまみれたこの世界で、他者と分かり合うために必要なものを示してくれる作品です。

人を見た目で判断してはならないと、人にとって重要なのは見た目ではなく"心"だと、かつて誰もが教わってきたことだろう。その通りだと思うけれど、肝心要の他者の心にたどり着くまでには時間がかかる。ある程度の信頼関係が芽生えていなければ、他者の心に触れることなどできやしない。そして、心は一朝一夕で触れられるものでもなければ、一朝一夕で開示できるものでもない。となると、どうしたって見た目にばかり囚われてしまうのが道理。だからこそ、世の中は分かり合えないことや理不尽なことであふれている。けれど、この作品を観た者同士であれば一時的かもしれないが理解し合える。誤解なく互いの心に触れられる。何故ならば、オギーの周囲の人たちが抱く葛藤を通じて自分自身の弱さやおごりを見つめ直し、間違ったことより正しいことを、正しいことより親切なことを選ぼうと思えるはずだから。

 『ワンダー 君は太陽』

『ワンダー 君は太陽』

(c)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. Artwork & Supplementary Materials (c) 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

映画だから、物語だから、僕たちは無条件にオギーやその家族の味方でいられるけれど、初めてオギーの顔を目にした瞬間、戸惑ってしまう人もいると思う。実人生において彼のような存在に遭遇したのなら、必ずしも肩入れできるとは限らない。他人事だと決め込み、場合によっては非難してしまうことだってあるかもしれない。そう、劇中においてオギーと関わる人々が抱くさまざまな思いは、良くも悪くもぼくらが抱くであろう思いであり、可能性。オギーが物語の主軸ではあるけれど、本作で登場人物ひとりひとりの心持ちが丁寧に描かれているのは、今その目に見えていることだけが全てではないことを示すためであり、見た目に左右されてしまいがちな僕たちにとって、本当に大切にすべきことが何であるのかを示すため。

人生における大事なことに気が付けるタイミングは、人それぞれに違う。10代にして多くのことに気が付けている者もいれば、ある程度の年齢に達しても全く気が付けていない者もいる。もちろんそれだけが全てではないし、否定したり考えを押し付けるのも違う。頭ごなしに否定したって不和が生じるだけ。考えを押し付けたところで、理解するに至るだけの経験が伴っていなければ汲み取ってなどもらえない。目に見える事実を突き付けることを「優しさ」と呼ぶこともあるが、相手が自力で気が付けるようになるまで辛抱強く待つことや、その後押しをしてあげられることもまた「優しさ」のひとつ。相互理解へと至るためには必要不可欠な要素であると思う。

人は一度間違えないと気が付けない。間違えて、痛い目に遭って、後悔して、そこで初めて考えを改める。同じ間違いを犯さぬよう努め、同質の痛みを抱える者の心に寄り添えるようにだってなっていく。その積み重ねがより良き自分を構築し、他者の心を見据えられるだけの心を形成していく。ただ、犯した間違いから目を背け続けていれば、心はやがて腐ってしまう。他者に寄り添う術など持たぬまま、悲しく惨めな人生を送るだけ。己自身との向き合い方ひとつで、人生は如何様にも変化する。

世界はたくさんの悪意であふれているが、目を凝らせば同等かそれ以上の善意もあふれている。あらゆる苦難を家族や友人と共に乗り越えていくオギーの勇気は、きっと映画を観る者の心にかかった霧を晴らしてくれる。日頃見落としている他者の思いや善意に気が付くためのキッカケを与えてくれると思います。

『ワンダー 君は太陽』を観た後はこの作品! (2/2)

<放送情報>
ワンダー 君は太陽
WOWOWシネマ 5/26(日)よる9:00
WOWOWプライム 5/28(火)よる8:00
WOWOWシネマ 6/6(木)午後4:35

シェイプ・オブ・ウォーター
WOWOWシネマ 5/28(火)深夜1:00

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