――若くて、素人に限りなく近いアイドルと語り合う秘訣はあるんですか?
そこに関して僕は何かしらの長けている部分があると思うんです。でも、何でなのかなぁ、僕自身がノーガードでしゃべっているからなのかもしれませんね。だから相手も勝手にノーガードになると思うんですよ。それに僕は基本的に嘘をつかないので、相手もオープンになってくれるのかもしれませんね。
逆に、完成されたアイドルとは何をしゃべっていいのか分からないし、苦手なんです。空中戦と言いますか、ガードが固すぎて15ラウンド戦って判定で終わる感じですね(笑)。
――無名のアイドルが求めているものは何だと思いますか。
そこが難しいところで、やっぱりみんなそれぞれ求めているものが違います。本人たちはそれを言おうとしませんが、僕はまず、最初にそれをつかむようにしています。
例えば、武道館に立つのが目標なら、武道館までのしごきをするし、テレビに出てスターになりたいのならもっと厳しく指導します。地方に行けば行くほど、口では「売れたいです」って言うんですよ。じゃあ、家族にも会えない、彼氏も作れない、お金もないで5年間頑張れるのかといえば、みんな本音では嫌だと思っている。それでも頑張る、ほんの一握りの子には厳しく言います。
ただちやほやされればいいんです、って感じの子には、可愛いねって言うだけにして厳しくはしません。そういう姿を見て、徳井さんはあの子にだけ優しいって言う子もいますよ。僕にしてみたら逆なんですけどね。まぁ、今はハラスメントだ何だと言われる時代ですが、最高を目指すなら死ぬ気でやらないと話にならないと思います。
――無名の女の子が有名になるために必要なことって何ですか。
それは運です。可愛い子でちょっと人気が出たとしますよね。金儲けだけを考える運営だったら、死ぬほどライブに出して握手券やチェキ券を売れるときに売れるだけ売るわけです。1年間だけなら何千万円にもなると思いますよ。でも、その子の10年後を考えたら、ダンスや歌や演技の基礎練習にもっと時間を使うべきなんです。つまり、運営サイドが、どう動くかってことですね。そうやってちゃんと先まで考えてくれる事務所と出会うのは、まさに運なんです。
――“地下アイドル”という言葉がありますが、それに代わる徳井さんなりのネーミングは何かありますか。
なるほど、地下アイドルに代わる言葉ですね。アイドルと言ってもいろいろな子がいますから…頑張っている子もいれば、頑張っていない子もいて、前向きに頑張っても報われない子もいるし、そういうのが混ざり合ってうごめいているというところから僕は地獄だと思っているので、“地獄アイドル”ですかね。まさに芸能界の地獄ですね(笑)。
這い上がろうとしている人に抱きついてくる人もいるし、みんなで地獄でいいじゃんって感じでいる人もいますしね。せっかく蜘蛛の糸が何本も降りてきているのに1本を取り合って落ちていったり、急に光が照らされて昇っていく人もいるし、まさに芥川龍之介の世界ですよ(笑)。
――その子たちは、なぜアイドルになりたいと思うんですか。
ちやほやされたいという子もいるし、人を感動させたいと思うアーティスト系の子もいます。スポットライト症候群って言うんですかね、一度辞めても帰って来る子が多いんです。恋愛したり遊んだりして自由になっても1年ぐらいしたら虚無感に襲われるんですよ。そんなにいい世界じゃないと分かっているはずなのに帰って来ちゃう。知らなきゃ帰って来ることもないので知らない方がいいんですよ。
――ご自分のお子さんがそんな世界に入りたいと言ったらどうされますか。
うちの息子は芸人になりたいって言ってますけど、運しかないし、運が悪けりゃ終わりだよ、100人中10人も残らないよ、とは言いましたけど、若者には伝わらないですね。
アイドルも運だと思います。そりゃ続けてやっていればいつかは花開くかもしれないけど、それが80歳になってからかもしれないし、花が開く前に死んじゃうかもしれない。もし僕に娘がいてアイドルになりたいと言ったら絶対に反対します。
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