この後にドキュメンタリー『バスキア、10代最後のとき(2017)』(9月9日夜7:15 WOWOWシネマほか)を観れば、多数のインタビュイーが矢継ぎ早に語る当時の裏話を、すんなり理解できるはずだ。アンディ・ウォーホルを街中で見かけて強引にポストカードを売りつけ、アート界に足がかりをつくった『バスキア』の名場面も、実話エピソードとして語られている。
ゴッホは19世紀後半に活躍したオランダの画家で、絵の具を塗り重ねた荒々しいタッチで日本でも人気が高い。圧倒的な作品の魅力に加え、謎めいた人生も興味の的となったから、彼をテーマとする映画は数多い。
古いものでは『炎の人ゴッホ(1956)』。伝記小説を基にその生涯を描いた劇映画で、カーク・ダグラスが演じた情熱的かつ悲劇的なゴッホはその後のゴッホ像の基になったといわれている。
最近では、死の真相に迫るミステリー『ゴッホ 最期の手紙(2017)』が、全編油絵によるアニメーションの唯一無二な芸術性で大きな話題となった。
今後の作品としては、先述した『バスキア』でゴッホとバスキアを対比させたジュリアン・シュナーベル監督による『永遠の門 ゴッホの見た未来』(2019年11月8日公開)。収集者の視点でゴッホをとらえたドキュメンタリー『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』(2019年10月25日公開)などが予定されている。
ゴッホの時代から遡ること約200年。同じオランダの画家で、現存する作品はわずか40点足らずながら、勝るとも劣らぬ人気を誇るのがフェルメールだ。
柔らかな光の表現と写実的な作風は現代人にとっても馴染みやすい。カメラの原型とされる光学装置で映し出した実景をトレースする製作法は、背景写真をパソコンで加工して仕上げる新海誠アニメにも通ずる先進性といえるかもしれない。
“フェルメール・ブルー”と呼ばれる独特の青色も特徴で、それは映画の中でも丁寧に再現されている。代表作の制作秘話『真珠の耳飾りの少女(2003)』では、青いターバンを巻いた有名な絵画のヒロインを、まだ当時10代だったスカーレット・ヨハンソンが見事な再現度で好演。一躍その名を広めた。映画自体もフェルメール・タッチの映像美でうっとりさせられる。
もうひとつ、『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛(2017)』(9月8日夜10:00 WOWOWシネマほか)も外せない。フェルメールの絵から着想を得た小説を原作とする映画作品で、これも随所にフェルメール・ブルーをあしらい、この画家の世界観を映像に落とし込んだアート映画だ。大勢の子持ちだったフェルメール自身の人生を思わせる設定など、マニアにとっても見どころは多い。
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