「きのう何食べた?」安達奈緒子が脚本賞 『二人の世界を突きつめて描けるのは奇跡のような感じがしました』
愛し合う二人に「詰め寄られているような凄みさえ感じました」
――主人公を演じた西島秀俊様、内野聖陽様についてもお伺いします。お二人が演じることが決まってから、お二人を意識して書かれた場面などはありますか?
西島秀俊さんと内野聖陽さんという名優のお二人が演じられるのですから、ご本人に寄せて書く必要など全くない、わたしはひたすら物語の『シロさんとケンジ』と向き合っていさえすればよい、あとはお二人に委ねればよい、と安心して書いておりました。ただ声だけは少し意識していたように思います。
――実際のお二人のビジュアルや演技をご覧になってのご感想を教えてください。
この作品において、何よりも大事にしたかったのは『二人の距離感』です。原作もそうであるように、この作品は直接表現で愛を伝え合うことはしません。『食』や『生活』を描くことで、人にとって何が大切かという主題を伝えているので、そこは譲れません。
ですので、とにかく最後の最後まで身体的接触は避ける、指一本、触れさせませんよ、というこちらの意図を行間に詰め込んでおいたつもりです。そうしたら、見事にしてやられてしまった、と言いますか、愛情表現として触れ合うことはほぼないのに、画面の中には、お互いを思い合い求め合っている恋人たちが確かにそこにいて、俺たちは愛し合ってる、だからなんだ、とこっちに詰め寄られているような凄みさえ感じました。
指先、足のつま先に至るまでシロさんへの思いやりと優しさに溢れたケンジさんと、言葉も態度もそっけないけれど、どう考えてもあなたのほうが好きでしょう、と分かってしまうシロさんが、ここまで肉体を持って迫ってこられると、もう圧倒されるといいますか、最終話ラストのケンジさんがシロさんを抱きしめるシーンは二人の思いが溢れ過ぎていて、最終話まで絶対に触れるな、とか言ってすみませんでした、どうぞいつまでもお二人で仲良くお過ごしください、ですが今はせめて見守らせてください、とひれ伏す気持ちでした。お二人に演じて頂けて本当に幸せでした。