狩撫麻礼&いましろたかしの漫画『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』を、山田孝之×山下敦弘監督の盟友コンビで実写化。謎のロボットの力を借りて埋蔵金を探す男たちの姿を通し、変わらぬ世界で生きていかねばならない人間の力強さを描いています。
正直なところ、途中までギャグ映画なのではないかと疑ってしまう。それはそれで十分面白くもあるのだが、登場人物たちの行動は何もかも本気であることに途中で気が付かされる。生きることに精一杯な人間の苦悩を、世間からのけ者にされてしまった者たちの孤独を、この社会の在り方までをも繊細かつ泥臭く本作は描いている。
劇中、「間違っているのが世界」というセリフがあり、それがあるからこそすべてがつながっていく。怪しい活動家の一味の兄(山田孝之)と、金にも女にも不自由しない商社マンの弟(佐藤健)。一見真逆に思える兄弟だが、根っこの部分では同じ。心の飢えや乾きを満たせず、ともにこの世界でもがき苦しんでいた。たとえ世界が間違っていようとも、僕たちもこの現実を生きていかねばならない。正解・不正解のある話ではないけれど、何のために、誰のために、何を成すために生きるのか。その心持ち次第でたどる道筋は大きく変わる。不器用過ぎる男たちの生きざまや、希望とも絶望とも取れる終幕が、混迷極めるこの時代を生き抜くための強さを示してくれると思います。
生きていく上でのヒントを教えてくれる3本の作品とともに、今月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。
長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。
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