「孤独のグルメ」原作者・久住昌之が思いを語る「今でも毎回驚かされます」＜インタビュー＞
――メニューはお店に行ってから選んでいるんですか？
はい、その場で好きな料理を選んでいます。スタッフに「好きなものを食べてください」と言われているので。ただ、五郎(松重)とかぶらないようにしていますね。
今までで一番笑ったのが、箱根でステーキ丼とアワビ丼の2択のお店（Season4 第3話「神奈川県足柄下郡箱根町のステーキ丼」）。松重さんがそこのステーキ丼があまりにうまかったから、絶対オススメです、って言ったんです。そう言われちゃ、食べるしかないじゃないですか。それで、ボクのコーナーでステーキ丼を食べたら、その瞬間SNSで「アワビ行けハゲ！」って書かれて(笑)。「いいね」が1000個くらい付いていて、最高におかしかったです。
それ以来、五郎とは食べるものを変えないといけないんだなと。でも、たまには同じのを食べて、そういうことを言われるのも面白いかなって思います。
名言のルーツは、散歩から？
――五郎の名言が話題になっていますが、言い回しなどはどのように発想されていますか？
脚本家のシナリオ読んで、パッと思い付くもんなんですが、つまづくと、そこでなかなか思いつかず苦しむこともあります。思い付くというのは本当に不思議なことですよね。漫画の原作者は思い付く職業と言ってもいい。思い付くまでは、ぼんやりとただ何もしていない人に見えているんじゃないかな(笑)。
手を動かしていれば思い付くというものでもないので、散歩に出たりします。
――2017年に亡くなられた谷口ジローさんとの連載当時やドラマ化のエピソードなどあれば教えてください。
単行本の2巻が出る時の話なんですけど、その時はもうドラマが始まっていたし、1巻を出してから10年くらいたっているんです。だからなかなか10年前の気持ちになれなくて、新作の第一話ができるまで、2カ月くらいかかりました。
苦しんでる時、自宅で転んで、ろっ骨を折って入院したんです。入院中、何もすることがなくて、あれこれ考えるんだけど、食事ぐらいしか楽しみがない。あ、そうか、まずは病院から始めようと思いついたんです。病院食も新鮮だったし。
そこで、やっとリアルタイムの五郎の気持ちになれました。入院していなかったらできなかったかもしれない。怪我してよかったなと思っています。ただ10年前に戻るんではなくて、今現在のリアルな食との向かい合いが大事なんです。
本当に谷口さんの漫画は何回も何回も読んでくれる人が多いんです。それは谷口さんがすごく時間をかけて、丁寧に作ってくれたからだと思います。
そして、「孤独のグルメ」のドラマも何回も見てくれている人が多いです。そこが谷口さんと僕の漫画に似ていて、すごくうれしいです。それは、ドラマのスタッフが谷口さんの精神を受け継いでいるということだと思うし、やっぱり一つのことを静かにはしゃがず時間をかけて、面白くやるというのは大事なことだと思います。なので、自分のコーナーの適当な絵も少し丁寧に描きました(笑)
毎週金曜深夜0:12-0:52ほか
テレビ東京系で放送
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