「孤独のグルメ」原作者・久住昌之が思いを語る「今でも毎回驚かされます」<インタビュー>
――漫画の作画が谷口ジローさんでなければならない理由は何ですか?
谷口さんは、背景に“もの”を語らせることができる稀有な漫画家なんです。食べ物だけを丁寧に描いて、人は簡単にとかはしないです。食べ物と人間と背景を同等に描いた人なんです。なのに、絵画的にはならず、あくまで漫画なんです。細密なのにわかりやすいくて、読みやすい。そういうところが外国の人にも受け入れられていることだと思います。
――五郎が松重豊さんで良かったなと思うことはありますか。
むしろ松重さん以外では考えられないです。今まで続いたのも松重さんだったからだと思うし、初めてお話したとき、すぐに僕の“面白い”が分かる人だなと思ったので。僕の書いたセリフの持たせる間や、強弱がすばらしい。役者としてテクニシャンだと思います。舞台もすごく長いけど、自然体で「どうだ」という感じがしない。
口元とかに食べ物が垂れたのを、さりげなくすすったりするのとかがうまいんだよね(笑)。普通だったらNG、もう一回となるところを生かしちゃうのがすごいですね。
松重さんには今でも毎回驚かされます。
――久住さんが思う、「孤独のグルメ」の醍醐味は何ですか?
例えば、下仁田のタンメン(Season7 第4話「群馬県甘楽郡下仁田町のタンメンと豚すき焼き」)ですが、1分くらい無言で食べ続けていました。普通、監督は我慢できないですよ。カット割ります。カメラ止めます。納豆を混ぜるところも「混ぜれば混ぜるほどうまくなる」と言って、ずーっとワンカメでただただ混ぜてるの(笑)。
ああいうところは他の番組じゃできないでしょう。あれは面白いよねー。実は音楽でフォローしてたりするんだけど。そういうところが3歳くらいの子どももじーっと見ちゃうところだと思う。今のテレビみたいにパッパッと画面が変わらないから。
ハイハイしている小さい子どもが「孤独のグルメ」をつけると絵本を放り投げてやってくるっていうんです。どこが好きなんだか謎なんですけど、「夜泣きのための最終兵器として、どれだけ役に立ったか」ってファンの方に言われました。最後の手段に五郎さんを流すと、泣き止むらしいです。
そして、松重さんはけっこうガツガツ食べるし、こぼしたり拭いたりする。でも、どこか、品があるんです。松重さんならではの醍醐味じゃないですかね。
あとは毎回たくさんの新しい音楽が入るというのが、醍醐味ですね、なーんて(笑)。
――最後に視聴者の方々にメッセージなどあればお願いいたします。
やっぱりシーズン8になって、8年もやっているのでマンネリにならないよう、いろいろと時間を惜しまず工夫してるんで、そういうところを見つけて楽しんでください。
ちょっとつまんなくなったなと思っても、後から盛り返します(笑)。必ず面白くやりますので、よろしくお願いします。