――本作では“家族”の物語が展開されますが、血のつながりを描く時に意識したことはありますか?
白石和彌:基本的には台本に書かれているものを撮っていくんですけど、俳優さんたちにちょっとしたことをお願いする時に、やっぱり自分の家族との記憶とかを意識せざるを得なかったというのはありますよね。
健くんが演じる雄二が久しぶりに帰って来た時、兄妹はどういう顔でしゃべるのかを考えたりして。お芝居を見ながら「やっぱり、そうなるよね」っていう感じで、いつの間にか自分の家族と照らし合わせていたようなところがありました。
――その中で、家族について感じたことは?
白石:近い関係だからこそ、結構面倒くさいものだなと。致し方ないことだったとはいえ、母親(田中裕子演じる稲村こはる)が起こしてしまったことに対して、どこか受け入れないといけなかったりする現実があって。
関係を切ることはできないし、許したいと思わざるを得ないところがある。無償の愛をくれる存在というものを僕も親になって初めて感じました。
――白石さんの作品では、これまで擬似家族を描くことが多かったですけど、今回は“本当の家族”のお話。
白石:周りから「初めて本当の家族を描くんですね」って言われて段々そういう意識が強くなってきましたけど(笑)、そんなに構えて描いたつもりはありません。
――佐藤さんは“家族”を演じるということで心掛けたことはありますか?
佐藤健:家族という関係で向き合っていくわけですから、なるべく共演者の人たちに気を使わないようにしました。でも、撮影に入ると、そういう意識は忘れて自然と家族になっていたような気がします。
三兄妹という設定は僕の中で新鮮でした。ラブでもない友達でもない、でも一緒にいても悪くない関係というのは芝居をしていてすごく楽しかったです。
――鈴木亮平さん(長男・大樹役)との兄弟関係もそうですし、松岡茉優さん(長女・園子役)とも本当の兄妹のようでしたね。
佐藤:それは、鈴木さんや松岡さんのおかげです。
白石:すごくすてきな関係でしたよね。松岡さんは、こっちが何も言わなくても兄妹喧嘩のシーンで勝手にスリッパを投げちゃったりしますから(笑)。
一言言ってから投げてくれって思いましたけど(笑)、そういうことが普通にできるような家族の関係が自然と作れていたんでしょうね。
11月8日(金)全国ロードショー
監督:白石和彌 脚本:髙橋泉
原作:桑原裕子「ひとよ」
製作幹事・配給:日活
企画・制作プロダクション:ROBOT
<キャスト>
佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、
大悟(千鳥)、佐々木蔵之介・田中裕子ほか
(C)2019「ひとよ」製作委員会
【HP】www.hitoyo-movie.jp