「カメ止め」公開の翌年にはスピンオフ作品「カメラを止めるな!スピンオフ『ハリウッド大作戦!』(2019)」(1月3日[金]夜10:45 WOWOWシネマほか)を発表。彼は製作総指揮と脚本を担当し、昔からの仲間の中泉裕矢に監督を任せる。何だか順風満帆な映画人生を送っている模様。が、しかし! 言うまでもなく「カメ止め」は1日して成らず──なのであった。
このことが分かるのも今回の特集の肝で、2011年の初の長編、(三谷幸喜ラブな)ディスカッション・コメディ「お米とおっぱい。(2011)」(1月3日[金]夜11:45 WOWOWシネマ他ほか)や、インディーズで製作していた短編を集めた「上田慎一郎 ショートムービーコレクション Part1(2011)」(1月3日[金]深夜1:30 WOWOWシネマほか「恋する小説家」「ハートにコブラツイスト」「Last Wedding Dress」「テイク8」の4作品)と、「~Part2(2014)」(1月3日[金]深夜3:30 WOWOWシネマほか「彼女の告白ランキング」「ナポリタン」「ヘタクソで上手な絵」「たまえのスーパーはらわた」「正装戦士スーツレンジャー」の5作品)が“映画の申し子”である片鱗を見せてくれるだろう。
現在35歳の上田監督。15年ほど前は迷走期で、マルチ商法の詐欺に遭ったり、小説を出したりして大きな借金をし、代々木公園でホームレスをしていたことも。だが、失敗こそは成功のもと。それは「カメ止め」の不退転な作劇が証明している。日本映画界では珍しい、体を張った「エンターテインメントに徹した作家」の軌跡をどうか、ずずいと眺望してほしい。
ライター。『キネマ旬報』『映画秘宝』『クイック・ジャパン』『ケトル』『DVD&動画配信でーた』などで執筆。モデルとなった書籍『夫が脳で倒れたら』が発売中
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