『史実を再現するだけでは意味がありません』制作統括・落合将氏が語る「麒麟がくる」制作の背景
「月刊ザテレビジョン」3月号では、大河ドラマでは初めて主人公として描かれる明智光秀を長谷川博己が演じる大河ドラマ「麒麟がくる」の特集を掲載。40代に入るまで全く史料が残されていないという光秀をどう描いていくのか、同作の制作統括を務める・落合将氏に話を聞いた。
今回は、本誌誌面には収まり切らなかったインタビューの内容を紹介していく。
戦国時代を生きる無名の青年を通して、戦国時代のありようを描く
主演の長谷川は、以前のインタビューで「池端(俊策)先生の脚本の中にいる新しい光秀に集中しました」と語っていたが、「光秀について40歳まで分かっていないというのは、史実にとらわれずに創作ができるということ。戦国時代の前史としてまだ何者でもない信長や家康、秀吉以降の戦国時代ではなく、その前史的な部分を真正面から描きたいというのが僕らの中にあったので、それで光秀を主人公にすることにしました。新しい明智光秀像というよりは、1人の戦国時代を生きる無名の青年がどういうものに出合って、どういうふうに成長していくかを通して、戦国時代そのもののありようを描きたいと思っています」と落合氏。
さらに、「池端さんも言っておりますけど、ドラマは研究結果の発表の場ではなく、史実をそのまま再現するだけでは意味がありません。当然、史実を無視はしないですし、池端さんは莫大な量の史料を読み込んでいます。光秀に関しては何も分からないですけど、周りの武将は分かっていることも多いので、それらを知った上で、明智光秀像というよりは、池端さんの作り上げるキャラクターをわれわれは作っています」と話した。
そうやってキャラクターを作り上げていく同作。斎藤道三(本木雅弘)については「道三がケチだというのは池端さんが創作した部分です。道三は、史料はあるんですけど、どれを信じたらいいの?という不明瞭なものばかりで。秀吉や家康の治世、要するに平和な時代になってから史料が起こされたので、文書が全然ないんですよね。そのなかでケチだという特徴は、(父親の代から)築き上げたものを守ろうとするキャラクターなんじゃないかということで、池端先生は創作されたようです」と語った。
カラフルな色使いで短い人生を謳歌する武将たちを表現
また、同作は鮮やかな色使いが視聴者の間でも話題に。これについては「監督の大原拓は、彼の父親から戦国時代の大河ドラマを何本もやっている人で、戦国時代への造詣も深いんですが、『カラフルな時代であった』と。伊達政宗とかはとても派手な衣装を着ていて、そのような色使いを着ることで自分を主張していたと。昔の人は短命ですし、いつ戦乱で死ぬか分からないので、生きているうちは自分の存在をパーッと見せようという思想的な部分もあったようです。実際にそういう資料もいっぱいあります。それに加えて、今回は4K放送ということもあって、鮮やかな色使いを取り入れようということになりました」と、その意図を明かした。
今後の注目はミステリアスな伊呂波太夫
そして、今後の要注目人物についても質問すると、落合氏は「伊呂波太夫(いろはだゆう)ですね」と尾野真千子演じる旅一座の女座長の名を挙げ、「いろいろと鍵を握る、ミステリアスな役どころになっています」と理由に含みを持たせた。
大河ドラマ「麒麟がくる」は毎週日曜、NHK総合で夜8時、NHK BSプレミアムで夜6時、NHK BS4Kで朝9時から放送中。