谷口賢志「巌窟王を舞台にしたい、モンテ・クリスト伯爵を演じたい!」の念願かなえる
――一方で同世代の方々との共演は楽しめましたか?
そうですね。今回はいい具合に大人チームと若手チームとに分かれていましたので。大人チームとは全員古くからの付き合いがあり、舞台上で本気でケンカしながら仲良くできる仲間たちなので、信頼して思いっ切りやりあっています(笑)。
――今回の舞台は、照明や音響の効果も見どころの一つですね。
舞台は総合芸術と言われていますが、音楽や照明、そして今回は映像も含めて見応えがあります。そういった意味で言うとあらゆる2.5次元の中でも「巌窟王」は総合芸術として表現しやすい作品なのかなと思います。衣装へのこだわりも強くて、僕のマントに映像が映るようになっているんですけど、とにかくカッコいいです。生で見ての迫力は、もちろんすごいですけど、映像で見ても背景など美しく映っています。
――生で観るのが舞台の醍醐味ですが、配信で見る楽しみ方を教えてください。
配信の一番のメリットは、遠く離れている方にも演劇を観ていただけるということですね。僕は東京都内でいつも演劇をやっているので、東京以外の所に住んでいる方々から、なぜ東京でしかやってくれないんだという声をよく聞きます。僕たちだって行けるものなら全国いろんな所に行きたいんですが、そういうわけにもいかないので、やはりこの配信があるというのはとてもすばらしいことだと思います。それに、俺、今メッチャいい顔している、ここ寄ってくれたら細かい芝居が伝えられるのになって思う時もあるんですが、映像だとそういうところも見てもらえるのが嬉しいです(笑)。
――今は舞台上の臨場感を映像でもだいぶ感じることができるようになりましたね。
本当に素晴らしいですよね。僕は舞台も映像もやりますけど、演劇をやっている時は特にそういうことを考えます。今は映像の技術が上がっていますし、ちょっと小さいカメラを舞台の中心に置いておけば、家でVR画像で見れちゃうんじゃないかと(笑)。そうするともう劇場に足を運ぶっていうことがなくなってしまうんじゃないかとか、劇場がなくなってしまうんじゃないかとか、そういう危機感を感じながらも、映像の面白さも認めています。また、生だからできること、伝えられることを、役者一人ひとりが真剣に考えていかないといけないなとも思っています。
ただの復讐劇ではなく、その先に希望を届けられるような本当に優れた作品
――「巌窟王」のような復讐劇の魅力って何ですか。
僕も復讐劇が好きですが、やっぱりみんな正直者がバカを見る世界は嫌いだと思うんですよ。心のどこかで、一生懸命生きている人や正直者は幸せになってほしいし、それを邪魔する人や悪いことをした人を成敗してほしいと願っているんです。必殺仕事人じゃないですけど、ずるいことをしている人を許したくないという気持ちは誰もが持っているもので、そこが復讐劇の魅力なんだろうなと思います。
――この物語はまさに復讐劇という魅力にあふれている作品ですね。
はい。今回の舞台の基になっているアニメ版は、モンテ・クリスト伯爵が主役ではなく、アルベールという男の子を主役に置いているという点が非常に面白いところなんです。モンテ・クリスト伯爵の復讐はいろんな形で果たされていくのですが、そんな絶望の中でもそれを抱きしめられる愛があるんです。アニメ版の「巌窟王」は、ただ復讐だけではないその先に希望を届けられるような、本当に優れた作品だと思います。
――複雑な物語のようで、実は内容はストレートなんですよね。
すごいシンプルなんです。悪いことをした3人組がお金持ちになっていって、そこに裏切られた男が復讐しに来るという話なんですが、シンプルなものって深いなと改めて思いました。
――アクションシーンも、この作品の見どころの一つですね。
映像も使って、すごく迫力のある戦いが表現されています。甲冑同士の戦いもありますし、みんなが必死で頑張って暴れまわっている姿を楽しんでください。
――本来は長編ドラマですが、舞台ではダイジェストのように伝えていかなければならない難しさもあると思います。
ありますね。そこはどうしても避けては通れないところです。けれど、そこはそこで俳優としては苦しくとも楽しく考えられる部分ではあるので、ダイジェストだからこそ生まれる舞台版の魅力を届けられたらいいと思っています。
アニメ「巌窟王」から15年、そしてエドモン・ダンテスが牢獄に入れられていたのが同じく15年!
――この舞台を観ることがきっかけになってアニメ版の『巌窟王』に興味を持つ人もいるのではないでしょうか。
それは、こういう舞台の目的の一つだと思います。舞台を楽しんでもらうのはもちろんですが、アニメを見たことがない人にも見てもらうことで、その世界がもっと広がればいいなと思っています。そして小説の原作にまで手を伸ばしていただけたら、さらにいろんなものが広がっていってくれるんです。そこに大きな意義があるなと思っています。逆に15年前にアニメを見ていた人たちがもう一度思い返し魂を震わせてくれたら、そして涙を流してくれたら嬉しいですね。
――配信を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
アニメ『巌窟王』から15年が経ちました。そしてエドモン・ダンテスが牢獄に入れられていたのが同じく15年間で、奇跡的にも同じ時間を経て今回、舞台として復活することができました。そして光栄にもモンテ・クリスト伯爵を演じさせていただくことができました。もう偽りなくみんなで命懸けで作った舞台です。会場に足を運べなかった方もたくさんいると思いますが、今回は配信という機会を得られました。僕たちは画面を通してでも魂が伝わる演技をしていますので、それがみなさんに届いてくれれば嬉しいです。舞台『巌窟王』を存分に楽しんでください。
たにぐち・まさし●1977年11月5日生まれ、東京都出身。1999年「救急戦隊ゴーゴーファイブ」のゴーブルー/巽流水役でデビュー。2020年5月、舞台「BEASTARS THE STAGE」、6月舞台「Re:フォロワー」に出演予定。