<攻殻機動隊「S.A.C. TRILOGY-BOX : STANDARD EDITION」&「SAC_2045」> 神山健治監督×マフィア梶田の濃密対談公開!
「“ゴースト”をファンタジーとして使うことで面白いものにできそうだという手応えがあります」(神山)
マフィア梶田:「攻殻機動隊 SAC_2045」は、タイトルの「2045」という数字からすると、2045年問題(シンギュラリティ)が物語の核として組み込まれているんでしょうか?
神山健治:そうですね。でも世の中の流行は移り変わりが早いので、このアニメが配信される頃にはもう “シンギュラリティ”という言葉は忘却されているかもしれないですが。
梶田:神山監督の視点って、テクノロジーや社会に対してすごく俯瞰しつつも、AIに対してロマンチックだと思うんです。2045年というAIが発展しているであろう世界で、どこまで“ゴースト”の存在を突き詰めるんでしょう?
神山:“ゴースト”というのは「攻殻」において唯一のファンタジーですよね。“ゴースト”って、ある意味こちらに主観があって生まれるものだと思います。大事にしている車には“ゴースト”が宿る。「事故が起きる寸前だったけど、コイツ(車)が今、俺を救ってくれたかも」みたいなことは、自分が勝手に思ってるだけ。でもそう思ったときにはもう、その車には“ゴースト”は存在している。
梶田:AIやロボットに対して人間が愛着を抱いた瞬間に“ゴースト”が宿る、というね。
神山:そう。僕は、それとテクノロジーは似ている気がするんです。思いを入れていかないと新しいテクノロジーは発見されていかない。…どうしても数多の作品では新しいテクノロジーは敵として登場していますよね。「ターミネーター」(1984年ほか)などのハリウッド映画で、新しいテクノロジーは悪役です。日本でも「これ以上科学は発展しない方がいいよ」という自然回帰に正義があるスタイルが定着している。でも、「攻殻」の原作者である士郎正宗先生は「科学は悪役じゃないよ、未来に希望があるものとして存在してるんだよ、という描き方をしなさい」とおっしゃっていて、今でも深く共感しています。人類は手に入れたテクノロジーはどうしても捨てられないので、それならば共存しながらそのテクノロジーを使って問題解決をしていく…という発想が芽生えるきっかけになったのが、その士郎先生の言葉だった。そこは「攻殻」を作る以上は守り続けたいと思っています。
梶田:自分もテクノロジーはどんどん発展していった方がいいんじゃないかと思うんですが、一方で、発展しすぎたことによる弊害で取り返しがつかない状況に追い込まれていますよね。たとえば、昔の車はイジれば直せたけど、今はコンピュータ制御だからイジっても直せない、とか。
神山:生活の基盤になっているインターネットサービスが急に停止してしまったらパニックになるとかね。そういう意味では、人類は危機的状況へと突っ走ってる。
梶田:それでいうと、先日発表された「SAC_2045」のストーリーに出てくる“ポスト・ヒューマン”という存在は悪役ではない?
神山:よくぶち当たる「発展したAIには人類が地球にとって一番の害と判断されて排除されてしまう」ということについて考えたくて。そこで登場するのが“ポスト・ヒューマン”ですね。
梶田:AIの発展については「S.A.C.」シリーズでも描かれていますよね。タチコマたちが自発的に公安9課のメンバーを救い、自己犠牲の心まで芽生える。でも、ドックでのタチコマたちの会議シーンとか、実は怖いですよね。人間の監視のない中でAI同士がどんどん会話していき、些細なきっかけで人類の敵に回ってしまうかもしれない。
神山:原作漫画ではね、AIたちは「人間って支配すると面倒くさいな」という結論になるんですよ。「1日に3回もご飯食べさせてあげないといけないし、そんなに面倒なら支配せずに僕らが支配されている方がハッピーなんじゃない?」と革命は起きなかった、という皮肉で面白い短編があります。AIをよく表していますよね(笑)。
そういう危機感があるからこそ、「SAC_2045」では“ポスト・ヒューマン”を登場させます。そこにファンタジーとして“ゴースト”をうまく使うことで、エンターテイメントとしても面白いものにできそうだという手応えがあります。
3月27日(金)発売 / 14000円+税 / 発売・販売元:バンダイナムコアーツ
【HP】https://v-storage.bnarts.jp/gits_sac/
■「攻殻機動隊 SAC_2045」
Netflixにて2020年4月全世界独占配信
【HP】https://www.ghostintheshell-sac2045.jp/
【Twitter】@gitssac2045
◆2020年4月春アニメまとめ!◆