「M−1グランプリ」で話題!ぺこぱインタビュー「軽々しく「『M−1―』優勝を目指します」とは言えません」【後編】

2020/02/16 09:05 配信

芸能一般

いろいろ試してきたものの、なかなか光を浴びることがなかったぺこぱの芸人人生。そんな彼らに一縷の望みが見え始めたのは、2019年からだ。その前年、「M−1グランプリ」で話題になった“ノリツッコまない芸”が完成する。前編が「迷走編」ならば、後編は「光明編」だ。

写真左からボケのシュウペイ、ツッコミの松陰寺太勇撮影=二瓶彩


芸人を辞めるなら、全部やりきってからにしようと


松陰寺太勇(以下・松陰寺)「2018年あたりから、着物は着ていましたが、ローラーシューズは脱ぐことが多くなりました。季節が変わるとき、ちょっとずつ服を脱いでいくじゃないですか。それと同じように、一気に脱ぐと風邪を引いちゃうので、まずはローラーシューズを脱いで足袋になって。あと、僕がまたツッコミに回りました。でも僕がツッコんでも、全然ウケないんです」

シュウペイ「まぁ、着物で化粧をしているヤツが“何でだよ!”と言っても、お客さんは“いや、お前が何でだよ!”と思うからね」

松陰寺「だからツッコんだ後にもう一つ裏切ろうと、“○○とも言い切れない”と言うようにしたんです。それがウケたので、全部その形にして2018年の『M−1―』に挑みました。すると初めて準々決勝に進めたんです。ネタはまだ荒い状態なのにそこまで行けたので、“ちゃんと作っていけば、来年は決勝もあるな”と感じたことを覚えています」

実際、2019年頭の「新春おもしろ荘」(日本テレビ系)で優勝。光が見えた…気がした。

松陰寺「“来た!”と思ったのは、本当に一瞬でした。オンエアを見たときに、これはないなと思ったんです。売れる人の出方じゃなかったな、世に出るのはパンケーキ(夢屋まさる)なんだろうな、と。でも、それが逆に良かったですね。未完成な状態で世間に知られるより、ネタをちゃんと作りたかったから。あと、このときに岡村(隆史)さんから“その着物、変やで”と廊下とトイレで2回も言われて、“めっちゃ言うやん、この人!”と思いました(笑)」

だが 「おもしろ荘」優勝の勢いに乗って追撃を——そう思った矢先、所属事務所がお笑い界から撤退。フリーとなってしまう。

松陰寺「フリーだとテレビ局に知り合いがいない限り、オーディションの話がほぼ来ないんです。フラフラしているより事務所に入って、ちゃんとネタを披露できる環境に身を置きたかった。それで師匠のTAIGAさんを追って、サンミュージックへの移籍を決めました。そのTAIGAさんから“『M−1―』が始まったら、スーツを着なさい。それまでは着物でいいから”というアドバイスを、実はもらっていたんですよ。岡村さんからも言われたので、じゃあスーツにしようと。紫の着物を気に入っていたので、7千円くらいの安い紫のスーツを見つけて、ネットで買いました。でも僕の手足が短いせいで、全体的に着丈が長くて。いろいろと調節した結果、お直し料金に1万2千円かかりました(笑)」

そして2019年末、『M−1―』決勝進出者としてコンビ名が呼ばれる。

松陰寺「予選を進んで行くうちに、お客さんの反応を見て“今年はあるな”と思っていたよね」

シュウペイ「僕は2回戦くらいから、多分行けるなと感じていました。逆にそういう意識を持った方が、自信になるなと思ったので」

松陰寺「カッコいいことを言ってますが、シュウペイは2回戦でネタを飛ばしたんですけどね(笑)。でもこの年は、精神的にもいい状態で臨めたんですよ。何をやっていいのか分からないまま芸人活動を続けるより、“『M−1―』で決勝に行く”と目的がハッキリしていたので、気持ちは楽でした」

シュウペイ「準備がしっかりできた感じです。ちょうどこれくらいの時期に“お笑い第七世代”と呼ばれる後輩たちが台頭してきましたけど、僕らも負けてはいないと思っていたので」

松陰寺「実際に決勝進出が決まったときは、ホッとしました。準決勝止まりだと敗者復活でネタバレしちゃうし、来年さらにいいネタを作らなきゃいけない。今年が無理だと今後は厳しそうな感触があったので、安堵の気持ちが大きかったです」

シュウペイ「僕はエントリーナンバー・846の“はっぴゃく…”と言われた段階で、号泣していました。あんまりこういうことで泣くタイプじゃないんですけど、思わず涙を流すくらいうれしかったです。今までやってきたことが実るって、こういうことなんだと。辞めなくて良かった、という感情があふれ出てきて」

芸歴12年。辞めようと思ったことは、何度もあったという。

松陰寺「でも、辞めるのなら全部やりきってからにしようと思って。思いついたネタ、まだ形にしていないアイディア、それを全部やってからだと思っていました」

シュウペイ「僕は昔から何も達成せず、ここまで来たんです。幼いころはサッカー選手になりたいと思っていたけど、叶わなかった。フリーターから芸人になって、周りからは“どうせすぐに辞めるだろ”と言われていました。それが悔しくて、お笑いで結果を出したかったんです」

松陰寺「話が戻るんですけど…」

シュウペイ「“時を戻そう”だね(笑)」

松陰寺「僕らが組んで初めて出たライブには、シュウペイのギャル男友達が大量にライブ会場へ駆け付けてくれたんです。投票で優勝者を決めるイベントだったんですが、彼らが投票してくれたおかげで、初ライブで優勝しちゃったんですよ」

シュウペイ「人脈だけはあるんで」

松陰寺「もしそこで誰も来てくれなくて、チンチンにスベっていたら、ここまで続けていなかったかも」

シュウペイ「1年目から“俺ら、売れるな”と思っちゃったもんね(笑)」