松坂桃李主演作も! 3月初放送映画3作品を厳選!<ザテレビジョンシネマ部>
映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。
今月は、今とは違う時代、異なる価値観の社会を生きた者たちの葛藤をつづった3本を紹介します。
『居眠り磐音』(2019)
シリーズ累計発行部数2,000万部を超える佐伯泰英の小説を、『空飛ぶタイヤ』(2018)の本木克英監督、時代劇初主演となる松坂桃李ら豪華キャストで映画化。友を斬り愛する人とたもとを分かつことになった浪人、坂崎磐音の戦いを通し、いつの世も変わらぬ人の心を描いた作品です。
時代劇を敬遠したり、時代背景がくみ取れず楽しめなかったりという人もいると思う。でも、安心してほしい。本作が時代劇であることは事実だが、不思議と時代劇時代劇していない。
それは、歴史的背景をくみ取る必要がほとんどなく、登場人物の設定や関係性に親しみを抱きやすいことに加え、劇中の人間模様が今を生きる僕たちと変わらないからだ。
幼い頃からともに歩み続けてきた仲間や愛しき人との関係性は、ちょっとやそっとのことでは崩れない。こと磐音と幼馴染みの友たちの関係性においていえば、特に強固なもの。
剣術の稽古で衝突しても、3年の江戸勤めで遠距離になっても、彼らのつながりが断ち切れることはなかった。が、たったひとつの嘘によっていともたやすく打ち砕かれる。どんな小さなものであれ、嘘は心に「不安」を生じさせ、不安はやがて「疑念」をはらむ。
疑念は「怒り」や「憎しみ」を帯び始め、怒りや憎しみに冒された心は「誤解」や「不和」を巻き起こす。本作でそのメカニズムや心の機微を感じ取ることができるから、誰もがその身をもって経験したことがあるはずだから、深く作品世界に没入できる。
本作の時代設定で現代と大きく異なる点があるとすれば、人を殺める刀を多くの者が所持していること。対話による問題解決がかなわなければ、その力に頼ってしまうということ。
そして、一度でも刀による問題解決にすがってしまったが最後、逃れることのできない呪縛にとらわれてしまうということ。その因果を背負うことになった磐音が抱く葛藤が、とても繊細に、ドラマチックに、時にはロマンチックに描かれていくからこそ、観る者の心は突き動かされる。
時代は違えど、誰の心にもまとわり付く負の感情を、それらの感情を払拭し得る善意・誠意・信頼・愛情の可能性を描いたエンターテインメント時代劇です。