日本の運命を託された勇敢な50人、佐藤浩市「僕らはそれを伝えるメッセンジャー」<Fukushima 50(フクシマフィフティ)>
浩市さんとお会いした瞬間に、思わずゾッと…(吉岡)
――伊崎と遥香が避難所で無事に再会するシーンは、事前に何か打合せをされたのでしょうか?
佐藤「いや、あまり話していません。彼女はまだ若いけど、なかなかクレバーでスマートな方なので、この子なら大丈夫だろうと思いました。ごめんね、上から目線の言い方で(笑)」
吉岡「いえいえ、ぜひとも上から目線でお願いします(笑)」
佐藤「あと、伊崎と遥香は、お互いに何とかしたいと思いつつも、そんなに友好な関係でもなく。その発端は伊崎が遥香の結婚に反対したことにあるんですけど、そこから震災が起き、こんな有事になるならば、お互いにもっと歩み寄っておけばよかったと思うわけです。僕も吉岡も自然とそういう親子の関係が透けて見えればいいなと思っていたので、余計なことは話さずにいました」
吉岡「確かにそうでしたね。でも、私は避難所の撮影で初めて浩市さんとお会いした瞬間に、思わずゾッとしてしまいました。浩市さんといえば、若々しくてデニムの似合うカッコいい方というイメージがあったのですが、そのときの浩市さんには悲壮感が漂っていて、最初は何と言葉をおかけしたらいいのか分かりませんでした。私なんかが話し掛けてもいいのかなとも思ったし、この撮影で10歳ぐらい老けられたのではないかと思うぐらい苦しそうな表情をされていました」
佐藤「多分、それは僕だけでなく、中操にいたメンバーはみんなそうだったと思います。撮影が進んでいくうちに、みんな驚くほど顔が変わっていきましたから」
吉岡「本当に壮絶な撮影だったんだと思います。だからこそ、避難所でお父さんと再会したときには、これまで当たり前だと思っていた家族と過ごす時間がようやく戻ってきたような感覚がありました」
――吉岡さんの目には、自分が犠牲になることもいとわず、事故に立ち向かった方々の姿はどう映りましたか?
吉岡「こういうことが起こるという想定がない中で、皆さんができる限りのことで立ち向かわれていて。突然、日本という国を守らないといけないという重圧の中、最良の判断をしなけばならないというのは本当に苦しかったと思います。皆さんに対しては敬意しかないです」
佐藤「やはり自分の家族やその土地の空気や匂い、そういったものを守りたいという気持ちは、皆さんの中に当然あったと思います。この映画で描かれるのは特殊な経験なので、簡単に自分に置き換えることはできませんが、もし家族の身に何かあったと考えるなら、“身を挺す”という言葉がありますが、自分もそうなるだろうと思います」
3月6日公開
監督=若松節朗
出演=佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、吉岡里帆、富田靖子、佐野史郎、安田成美ほか
原作=「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
製作=KADOKAWA
配給=松竹、KADOKAWA
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