“恋愛映画が好きじゃない”というスピードワゴン小沢一敬が語る『パリ、嘘つきな恋』<ザテレビジョンシネマ部>
今回、小沢さんがシビれた名セリフは?
──もちろんです。今回、小沢さんがシビれた名セリフは?
小沢「また 偶然に」
※編集部注:ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。
──偶然出会った美しい女性、ジュリー(キャロリーヌ・アングラーデ)の気を引くために「自分は車椅子生活だ」と嘘をついたジョスラン。そして、ジュリーの姉で、車椅子生活を送りながらもヴァイオリニストとして世界中を飛び回るフロランス(アレクサンドラ・ラミー)。ジュリーの紹介で出会った2人。あるとき、偶然を装ってフロランスのコンサートを観に行ったジョスランは、一晩のデートのあと、彼女のホテルの部屋に誘われますが、彼女をだましていることに気が引けたのか、部屋には入らずに帰ろうとします。その別れ際に、フロランスがジョスランに向けて言ったセリフですね。
小沢「他にも好きなセリフとかシャレたセリフもたくさんあったけど、やっぱり、このセリフがこの映画の一番のキーワードだと思うんだ。偶然を装う嘘っていうのが、このストーリーでは重要なポイントでしょ」
──そうですね。コンサートを観に来たジョスランは、『偶然 近くで仕事があって公演のことを知った』って嘘をつきますし、フロランスもラストシーンで偶然を装った嘘でお返しをします。
小沢「ああいうシャレた嘘にだまされてあげるっていうのが、大人の条件なのかもしれないな、って思うんだよ」
──嘘だって分かってるけど、あえてツッコミはしないという。
小沢「そうね。あそこで『そんなわけあるか~い!』って言ったら終わっちゃうもんね。ああいう楽しい嘘、素敵な嘘を共有できるっていう関係っていいよね。『パリ、嘘つきな恋』っていう邦題の通り、たしかにジョスランは嘘つきで、車椅子生活者のフリまでしてるんだけど、あれも相手を傷つけるためについた嘘じゃなく、ちょっとした遊び心で始めた嘘が取り返しつかなくなって、引っ込みつかなくなっただけじゃない」
──しかもその嘘も、まさに偶然のタイミングで車椅子生活者だと勘違いされたことがきっかけだったし。
小沢「そうそう。それに対して、これはネタバレになっちゃうけど、実はフロランスのほうも、彼が嘘をついてると最初から気づいてて。それを『嘘つき!』って言ってしまえば話は終わるんだけど、終わらせないために、ずっとだまされてあげてるんだよね。あとで、そのことを妹に告白するときに言う、『車椅子の純粋な少女は知らないふりをした。私もウソをついて“幸せ”を味わった。愛されるって素敵』って、あのセリフも好きなんだけどさ」
──結局、お互いが素敵な嘘でだまし合ってたわけですよね。
小沢「そういう意味で、今回の名セリフに選んだ『また 偶然に』っていうのは、『また、偶然のフリして誘ってね』っていう意味だし、『私も偶然って言いながら会いに行くから、その嘘に付き合ってね』っていう意味でもあったわけで。ああいうのが好きだね」
──大人の会話ですね、まさに。
小沢「実はこの映画に関して、俺にもすごい偶然の話があってさ」