厳戒態勢の「UFC249」 2大タイトル戦の見どころを“世界のTK”が解説!
3年ぶりの復帰戦でドミニク・クルーズがアッと言わせる!?
――続いてセミ・メインイベントのバンタム級タイトルマッチ。こちらも当初は王者セフードにジョゼ・アルドが挑戦予定だったのが欠場となったため、代わりに元王者ドミニク・クルーズが3年ぶりの復帰戦で、いきなりタイトル挑戦のチャンスをつかみました。
高阪:ドミニクは何度か復帰戦をけがで棒に振っています。だから彼が今回、どれだけのコンディションを作り上げてきたのかがまずポイントとなる。
いい状態でオクタゴンに上がる前提の話になりますが、そもそもドミニク・クルーズというのは、変幻自在のステップとそこから何が飛び出すかわからない打撃やタックル、さらに相手に空振りをさせる高いディフェンス能力も持っている。そういう選手が、今絶好調の王者セフードと対戦するのは、非常に興味深いです。
――ドミニクは10年前のWECバンタム級王者時代から、常にMMAの進化の最前線にいた選手ですよね。一方、対する王者セフードは“絶対王者”と呼ばれたデメトリアス・ジョンソンを下して王者になってから、さらに覚醒した感があります。
高阪:セフードはレスリングで北京五輪の金メダリストですが、レスラーがMMAに転向する場合はボクシングに力を入れて、それをレスリングに溶け込ませるパターンが多いんです。でもセフードは違っていて、伝統派空手のような構えで傾姿勢を取らずにまっすぐ立つ。そこが特徴的かなと思います。
――スタンス的には、 堀口恭司やリョート・マチダのような。
高阪:そうですね。彼の中でいろんな打撃の打ち方を試行錯誤しているうちに、強い打撃をしっかり打てる形としてこの構えに行き着いたんだと思うんです。それでデメトリアス・ジョンソンやマルロン・モラエスを翻弄していますからね。
その形を見つけてから、覚醒した感があります。また、普通ならあの構えからスパーンと両足タックルには行けないのですが、そこはそもそもの才能なんでしょう。
――レスリングと空手の融合に成功していると。
高阪:対するドミニクは構えがあってないような状態なので、すごく対照的です。しっかり構えて、力を溜めて打つセフードに対し、ドミニクはステップの中で最短距離で打撃を当てることをやるので。
そしてドミニクは、局面ごとにあらゆる動きができるので、相手からすると動きが読めないというか、試合を作れなくなることが起こっているんです。
でも、セフードは基本“待ち”のスタイル。だからドミニクに変に合わせることをしないと思うし、惑わされない気もするんです。だからセフードがどう仕掛けていくかでしょうね。それでドミニクの翻弄するような動きさえも巻き込んでしまうような強さがセフードにあれば、これはもう本物です。
――ものすごいポテンシャルを持っている人が、それを見つけてしまったという。
高阪:セフードは元フライ級でも、体格差を苦にしないでしょうしね。本人は「バンタムどころか、フェザーでもライトでも大丈夫だ」みたいなことを言っていますが、実際練習で上の階級の選手とやっても組み負けていないんだと思います。そんなセフードに、故障明けの35歳、ドミニクが勝ったら大変なことです。
――でも、ドミニクなら何かやってくれそうな気もします。
「けがを乗り越えて、気持ちがしっかり作れていれば、もともと才能で言えば飛び抜けていますから。才能が体を超えてしまっているから、故障が多いのかもしれない。
ハードパンチャーが拳をけがしやすいのと同じで、溢れ出る才能が体の機能を超えてしまっている。彼のトレーニング映像なんかを見ると、美しいですからね。流れるような、絵に描いたような総合格闘技ができる選手なので。
――MMAファイターとして覚醒した金メダリストと、MMAの申し子の戦い。これは楽しみです。
高阪:それがこういう大変な時期に見られるわけですからね。また、練習するのも大変なこの時期にしっかり心と体を仕上げてくることに、見る立場として拍手を送りたいですね。今回はいろんな意味で、ファイターの強さ、すごさを見せてくれることを期待したいと思います!
5月10日(日)朝11:00ー昼3:00
WOWOWライブにて生中継
https://www.wowow.co.jp/sports/ufc/