歌や王子様のイメージとは離れた役でも活躍
ミュージカルとテレビドラマの仕事が山崎のなかでいい感じに融合しはじめていくなかで、逆にミュージカル俳優であることを生かしたのが、初主演ドラマ「あいの結婚相談所」(2017年、テレビ朝日系)。
劇中、海で、山で、森で、山崎が歌い踊るミュージカルコーナーのようなところが話題になった。本物のミュージカル俳優がやっているのだから本格的でとても見応えがあり、最終回はミュージカル俳優の大先輩・鹿賀丈史まで参加して大人数のミュージカルシーンが作られた。
このときの脚本家に「エール」第7週から登板している清水友佳子がいる(最終回でメインライターの徳尾浩司と共作になっている)。ここでもまた「エール」との縁を感じるような出会いがあったのである。
同年、NHKでは「おやすみ王子」(NHK Eテレ)という“王子”キャラを全面的にアピールした番組で朗読もやっていた。
このように得意ジャンルを生かし、テレビドラマファンにも山崎育三郎の存在感をどんどん浸透させていきながら、その一方でミュージカルや王子様のイメージとは離れた役にも挑む。
ドラマ10「昭和元禄落語心中」(2018年、NHK 総合)で演じた型破りな落語家役は、口跡がよく落語の内容がよくわかるうえ、放蕩な人物の色気も漂わせ、俳優として前進した。
舞台出身の俳優の演技は濃すぎると敬遠されることもあるものだが、山崎の場合、プリンスキャラという甘いムードが程よいのと、もって生まれた華やかさはやっぱりテレビで見ていても愛されるのである。
キラキラプリンスキャラだけでなく、ユーモラスなこともできるところも最近は注目されている。
バラエティー番組「その他の人に会ってみた」(TBS 系)では好きな野球の形態模写を披露。私は野球選手に詳しくないので完コピ!とは断言できないが、野球好きな人にはたまらないであろう、しっかり特徴を真似ているように見えた。ひとつひとつのポーズが鮮やかで面白く才能を感じた。
この笑いの才能も、コント演出も多い「エール」には生かされていくのだろうと感じる。
意味深なことを言ってすぐに消えてしまうちょっととぼけた久志は、裕一と鉄男(中村蒼)で「福島三羽ガラス」として音楽の道を突き進んでいくという。これからの活躍を楽しみにしたい。歌もたくさん歌ってほしい。(文・木俣冬)