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木村佳乃がオススメ!“諦めない心”と“家族の愛情”が感じられる伝記ドラマ『マイ・レフトフット』<ザテレビジョンシネマ部>

2020/06/05 12:10

【写真を見る】木村佳乃が本当に脳性麻痺の方だと思っていたというダニエル・デイ=ルイス『マイ・レフトフット』
【写真を見る】木村佳乃が本当に脳性麻痺の方だと思っていたというダニエル・デイ=ルイス『マイ・レフトフット』 (C)Ferndale Film Ltd / ITV Studios Limited 1989


映画を愛する著名人や映画評論家がおすすめの映画作品を紹介する“フィルムガレージ”。今回は女優の木村佳乃さんにお越しいただきました。

木村佳乃
木村佳乃


――映画は映画館で観る派ですか?

木村佳乃(以下、木村)「本当は映画館で観るのが好きで、それこそ昔は映画館でしか観ていなかったのですが、子どもが産まれてからは映画館に行く回数はガクッと減りました。行くとしても子どもたちと観られるような映画ですね。ドラえもんだったり、ディズニーだったり。あとは吹き替えをさせていただいた『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2019)』や『ジュラシック・ワールド(2015)』も子どもたちと一緒に映画館に観に行きました」

――好きな俳優はいらっしゃいますか?

木村「ヴィゴ・モーテンセンが大好きです。『ヒストリー・オブ・バイオレンス(2005)』、『イースタン・プロミス(2007)』など好きな作品がたくさんありますが、中でも『グリーンブック(2018)』は新境地でしたね。すごく泣けました。好きな映画です」

――そんな木村さんに、今回はキュレーターとして『マイ・レフトフット(1989)』(6月18日(木)夜6:10、WOWOWプライムほか)を選んでいただきました。脳性小児麻痺に侵されたアイルランド人の画家であるクリスティ・ブラウンの半生を描く伝記ドラマです。生まれながらに左足しか動かせない不遇の主人公クリスティを演じたダニエル・デイ=ルイスが第62回アカデミー賞主演男優賞を受賞したほか、クリスティの母ブリジット役のブレンダ・フリッカーが助演女優賞に輝きました。

木村「初めてダニエル・デイ=ルイスを観たのがこの作品でした。その時は、あまりにも演技が自然すぎて、彼を本当に脳性麻痺の方だと思っていたんです。後に『ラスト・オブ・モヒカン(1992)』を観たときは驚きました。体型も全然違うし、同じ人とは思えない、『お芝居でここまでできるんだ』って。普通に演技するだけでも体力が要るのに、体を硬直させて、左足だけを動かして、そしてあのしゃべり方。相当な練習量と、体力、気力、忍耐力が必要だと思います。彼は役に入り込むことで有名ですが、体重の増減とか見た目に関することは彼にとって大したことではなくて、それをやった上で、役の感情まで理解して完全に成り切れるところがすごいですよね。クリスティは、彼にしかできなかった役だと思います」

――デイ=ルイスは、撮影の前からクリスティが実際に使っていた車椅子を使用して体に慣らしていたそうです。『リンカーン(2012)』の撮影前にも当時の書簡の文体、米大統領リンカーン本人の文体をまねながら奥さん役のサリー・フィールドと文通をしていたという逸話もありますが、役者として、こういった彼の画面に映らない部分の努力や役作りをどう思いますか?

木村「たっぷりと準備期間が設けられるのは素直にうらやましいです。なかなかそんな機会には恵まれないので。演技はもちろん見える部分も大事ですが、彼は見えない部分、“心”をより大事にする方ですよね。演じるのが実在の人物なら特に。繊細で知的な彼らしい役作りだと思います。修業するように役に近づいていきますよね」

『マイ・レフトフット』
『マイ・レフトフット』(C)Ferndale Film Ltd / ITV Studios Limited 1989


――時間をかけるという意味では、彼はここ30年間で12本しか出演していません。作品数が少ないというのは、逆に言えば、役作りに時間をかけられるということで、それが演技にも影響していそうです。

木村「そうですね。きっと軽い気持ちでは仕事を引き受けない方だと思います。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007)』もすごかったですよね。観ていてつらくなるような、鬼気迫るものがある演技。彼は1回1回、全身全霊って感じがします」

――加えて、監督も選んでますね。『マイ・レフトフット』のジム・シェリダン監督とは後に『父の祈りを(1993)』『ボクサー(1997)』でも組んでいますし、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督とも『ファントム・スレッド(2017)』で再タッグを果たしました。この業界ではこういったご縁みたいなものは珍しくないと思いますが、木村さんにもあったりしますか?

木村「森田芳光監督。監督の『それから(1985)』は演技の道を志したきっかけの作品でもあります。私、夏目漱石が大好きで、それまでは好きな小説が映画化される時って、自分が思い描いていたイメージとのギャップでがっかりすることが多かったんです。『それから』は初めて私の想像をはるかに超えてきた映画でした。初めて出た映画も森田さんの『失楽園(1997)』で、撮影が終わった時、森田監督はまだ若かった私に『たくさん本を読んで、たくさん映画を観て、とにかく勉強しろ。人形のような女優になるな。自分のやりたい役、自分が目指す女優像を常に考えるんだぞ』というようなことを言ってくれたりもしました。すごく感謝していますし、オーディションに受かったのも何かのご縁ですよね。それからも何回かお仕事をいただいたりして、そう考えると、監督とは並々ならぬご縁でつながっていたんじゃないかと思います」

『マイ・レフトフット』
『マイ・レフトフット』(C)Ferndale Film Ltd / ITV Studios Limited 1989


――素敵なお話です。では、『マイ・レフトフット』で魅力に感じたところや、印象に残ったシーンを教えてください。

木村「クリスティが結構悪い言葉を使うというか、毒づくんです。人を傷つけるようなことを言ったり、泥酔してめちゃくちゃになったり。ただの美談じゃなくて、人間らしさもちゃんと描いているところがいいですよね。好きなシーンでいうと、クリスティが失恋して自暴自棄になっているときに、母ブリジットが庭に穴を掘って、クリスティだけの部屋を作ろうとする場面。あとは、クリスティが初めて足で“MOTHER”と書いて、それに感動したお父さんがクリスティを肩に担いで酒場に行くシーンも好きです」

――序盤、父のパディ(レイ・マカナリー)はクリスティの障害を受け入れることができず罵倒していましたが、彼に「言葉も分からないし字も扱えない」と侮辱されたクリスティが、悔しさから左足にチョークを持ち、必死にはいずり回りながら床に初めての字“MOTHER”を書いてみせる。これに感動したパディがクリスティを褒めたたえ、彼を担いで酒場まで自慢しにいく。それまで悪者のように見えていたパディの、不器用な愛情が垣間見えるシーンですね。

木村「不器用ですよね。そう考えると、『グリーンブック』のヴィゴ・モーテンセンにも通じるものを感じるので、不器用な男性が好きなのかもしれません。」

――木村さんは一家の母親でもありますが、『マイ・レフトフット』で描かれる家族像をどう思いましたか?

木村「やっぱり私は女性ですし、母になったからか余計にブリジットの視点で観ちゃいますね。ブラウン一家は彼女の存在で成り立っているように見えました。この作品は何回も観ているんですが、改めて観たら、ブリジットに感情移入しすぎちゃって。若い時は彼女の気持ちにここまで共感できませんでした。酒癖の悪い夫に暴言を吐かれたりしながらも、文句も言わず、働き者で、夫を一生懸命立てようとする……ブリジットは、日本のお母さん像に近いと思います」

――最後になりましたが『マイ・レフトフット』、どんな方におすすめしたいですか?

木村「子どもですね。小学校高学年くらいなら、もうこの映画のメッセージが伝わるはず。クリスティの生まれつきの障害があったとしても“諦めない心”、そしてそんな彼を支える家族の“愛情”。そういったものをこの映画を観て、子どもたちに感じてほしいと思います」

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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[放送情報]
「マイ・レフトフット」
WOWOWプライム 6/18(木)よる6:10
WOWOWシネマ 7/6(月)午前5:15

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