ミュージカル界のスターとして知られる古川雄大が、連続テレビ小説「エール」(NHK総合ほか)で怪演。ヒロイン・音(二階堂ふみ)の“ミュージックティーチャー”(歌の先生)である御手洗清太郎役で、6月放送の第13週では御手洗が主人公・裕一(窪田正孝)の所属するコロンブスレコードの新人歌手オーディションに挑む様を演じ、裕一の幼馴染・佐藤久志(山崎育三郎)と激しく火花を散らした。そんな古川に、自身のオーディション体験、歌の先生についても聞いた。
――御手洗はドイツ留学の経験がある優秀な音楽教師でありながら、音や裕一には「先生って呼ばないで」と言いますね。
御手洗は個性的な人。奇抜で他人の目を引く言動をしますが、「先生と呼ばれるのが嫌」と言っていたのも実は過酷な過去から来ているんですね。そういう陰の部分があるので、ただのハイテンションな人じゃないんだと思ってもらえたのでは。海外留学を控えた裕一が音の実家に来たとき、御手洗が自分の過去を告白するシーンはとても重要です。そこで、普段のテンションとは違う御手洗の顔が見えたらいいなと思っていました。御手洗は本当に自分の行きたいところには居場所がない。そこが裕一とも通じるところで、だからこそ彼の前では本音がポロッとこぼれてしまう。それを語ることによって裕一への“エール”を送っているという意識でいました。御手洗は、自分の才能を使って音楽を教えることで誰かを助けたいと思っているんです。
――しかし、第13週では新人歌手のオーディションを受ける。そんな御手洗の気持ちの変化をどう理解していましたか。
御手洗がオーディションを受けたのは、両親が亡くなりどうなるかわからない状況の中で「最後のチャンスにかけてみたい」という気持ちになったから。そういった奇抜さの裏にある葛藤がしっかり描かれていたからこそ、愛されるキャラクターになったと思います。オーディションには落ちてしまいましたが、「自分の実力は出し切った」という気持ちなのでは。久志というライバルの歌声を聞いて、彼の力も認めていたので、オーディションには落ちたけれど、踏ん切りがついたんでしょうね。自分は歌手ではなくミュージックティーチャーなんだなという境地に行き着いたのだと思います。その意味でも、御手洗にとって久志という存在は大きかった…。と言っておいて、このあと、御手洗が「まだあきらめられない!」って言って出てきたら面白いですけれど(笑)。
――舞台で活躍する古川さんもたくさんのオーディションを受けてきたということで、御手洗に共感できるところはありましたか。
僕はオーディションを受けるとき、御手洗のように「これが最後のチャンス」という意気込みで挑むというよりは、自分の今の力を見てもらって、「落ちたならしょうがない」という意識でいました。だから、たとえ落ちても引きずらない…。いや、やっぱり引きずりますね(笑)。自分自身も、オーディションに受からない期間があって…。そのときにはちょっと悩みました。「なんでだめだったんだろう」と考えるようになりました。2018年のミュージカル「モーツァルト!」の主役オーディションでは「この役はなんとしても取るんだ」という御手洗のような気持ちで臨みました。それぐらい全力を出さないと取れない役で、「僕はこの役を絶対やりたいんだ」とアピールする気持ちが強かったです。
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