――今回は、お互い手の内がしっかりとわかった上での3試合目になると。
高阪:だからこの3試合目はお互いやりづらいと思うんです。コーミエからしたらボディブローのディフェンスはしっかりと準備してくるでしょうけど、ミオシッチもそれを見越しているから、そのままボディ狙いでくるとは考えにくい。また、相手の攻撃に対処するというやり方だと、どうしても後手後手に回ることになりますから。
――となると、先の先を読むというか、また新たな戦略を考えなければならないわけですね。
高阪:そういうことです。だからコーミエ側からすると、抜群のレスリング力を持っていながら、1回目も2回目もそこまでタックルを混ぜてくることはなかったし、グラウンドコントロールに徹することはやっていないので。前半は寝かせたり、ケージレスリングで体力を削っておいて、後半、打撃勝負を仕掛けるということも考えられます。
――コーミエ自身も「今回はテイクダウン地獄を味わわせる」と言っています。
高阪:テイクダウンまで行かなくても、ケージに押し付けてのコントロールも容易でしょうからね。ケージに押さえつけられているだけでも体力は奪われているので、そこもミオシッチは気をつけながら試合をしなきゃいけない。
だからコーミエの攻撃にミオシッチがどう対応するか、という展開になると思うんです。普通、挑戦者が王者への攻略法を練るものですけど、この二人に関しては、王者の方が対策に時間をかける必要がある。
――確かにコーミエにとって、ミオシッチのような長身(193cm)のストライカーは、今までライトヘビー級時代も含めて何度も戦っていますが、ミオシッチにとってはコーミエのような体の小さいトップレスラー(180cm)との対戦というのは、コーミエだけです。
高阪:だからコーミエ相手の時だけ、練習内容も試合の組み立ても変えなきゃいけない。またパンチの使い方がコーミエは独特なんです。基本、ジャブと右ストレートですが、微妙な距離設定なんですよ。
普通、こんな身長が低い選手は、ここにパンチは届かないだろうっていうところにも届いてしまう。だから、コーミエのパンチが届く距離を、いかに外して自分の打撃を入れることができるかが、ミオシッチとしてはひとつポイントだと思います。
――また、コーミエはクリンチもうまいです。
高阪:ただ、ミオシッチも2回目の試合の時、コーミエが前に出て組もうとしてきたところを、サイドステップで体を入れ替えるシーンがあったんです。
前からその動きをやっていたのですが、組みに来る相手に至近距離でそれができたというのは、ミオシッチにとっても収穫だったかもしれない。
1試合目の時は、組みにきたコーミエを前に押し返すか、後ろに下がるかしかやってなかったんですが、「横にずらすと相手がこんな簡単にいなすことができるんだ」という感覚がつかめていたら、あの“いなし”の技術は一つのキモになるかもしれない。
――そこで組ませずに、コーミエにペースをにぎらせなかったら、ミオシッチがKOする可能性も高まるという。
高阪:そうですね。組もうとしたところをいなされると、絶対に対応が遅れるんですよ。そういう時に打撃をもらったりするものなので。
だからスタンドの攻防も、単純に打撃だけでなく、そういった組みも交えた探り合いという、高い次元での攻防が見られるんじゃないかと思います。
――ヘビー級だけれども、大味ではなく細かい技術も駆使した試合になるだろうと。
高阪:そうです。ですから、今回はヘビー級の迫力はもちろんですが、細かい技術の攻防までじっくりと見てほしいですね。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)