閉じる

<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「はじまり」【短期集中連載/第1回】

2020/08/24 19:30

映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)に向けて同作誕生の背景とそこに込めた想いを語る短期集中連載がスタート
映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)に向けて同作誕生の背景とそこに込めた想いを語る短期集中連載がスタート


翌朝から、さっそく絵本制作をスタートさせました。とはいえ、これまで「絵」なんてまともに描いたことがありません。この時、僕の中で「信じていたこと」と「決めていたこと」がそれぞれ一つずつありました。

信じていたことは、「タモリさんが始めさせたのだから、僕は絵を描けるようになる」ということ。決めていたことは、「絵本作家に用意されている競争に参加しない」ということ。用意された競争に参加した時点で負けが決定してしまいます。今度こそ、世界一を狙いに行きます。

僕は「今この時点で世界中の絵本作家さんに勝っているポイント」を割り出して、そこを軸足にして、絵本制作を進めることに決めました。ところが、さすが素人です。画力も負けていますし、出版のノウハウも、コネもツテも無い。当然ですが、プロの絵本作家さんには負けているところだらけです。しかし、一つだけ。素人の僕がプロの絵本作家さんに勝っているポイントがありました。それは、「時間」です。

「時間」というのは、「一つの作品を仕上げるまでにかけられる時間」のことです。絵を描くことを生業としている人は、コンスタントに、短い時間で作品を仕上げ続けなければいけません。「作品の売り上げ」で生計を立てているからです。

他方、ありがたいことに、その頃の僕には、まだテレビのレギュラー番組が残っていました(※レギュラー番組って、すぐには終わらせられないんです)。僕はテレビの収入で、どうにか食いつないでいくことができるので、「作品の売り上げ」がなくても生きていくことができます。一つの作品の制作に極端な時間をかけることが可能です。

これが、その時に見つけた「専業家」と「複業家」の最大の違いでした。「専業家」には時間の自由がなく、「複業家」には時間の自由があります。場合によっては、複業家は、一つの作品を仕上げるまでに10年かけることだって可能です。僕は、この場所で花を咲かせることに決めました。

すぐに文房具屋に走り、最もペン先が細いボールペン(0.03ミリ)を購入しました。通常、絵本のストーリーは、20ページほどで完結しますが、僕が描く絵本のストーリーは、その倍。40ページ…場合によっては、80ページに及びます。

つまり、「完成させるまでに数年間かかってしまう絵本」を選んだわけです。その絵本は、プロの絵本作家さん(専業家)には作ることができません。「才能」や「センス」の問題ではなく、物理的な問題です。プロの絵本作家さんには、「収入が数年間止まってしまってしまう絵本」に手を出すことはできないのです。

そこで結果を出せるかどうかはまた別の話ですが、そこで結果を出すことができれば、今度は簡単には負けません。誰にでも才能の種はあって、大切なのは「その種をどこに植えるか?」

その場所を教えてくれるのが「努力」の役割で、これ以上できないほどの努力をした結果、絶望を見て、僕は絵本の世界に転がり込みました。20歳で始めた芸能活動で、努力しきっていなければ、きっと僕は絶望を見ることもなく、あのままテレビの世界に残っていたと思います。それはそれで、どんな人生だったのかな。(※第2回は8月31日[月]更新予定)

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

前へ
次へ
◼︎「ゴミ人間 ~日本中から笑われた夢がある~」2020年12月18日(金)発売
↓Amazonでの予約はバナーをクリック↓


◼︎「別冊カドカワ【総力特集】西野亮廣」2020年12月18日(金)発売
↓Amazonでの予約はバナーをクリック↓


◼︎ムビチケ前売券の購入はこちら
https://mvtk.jp/Film/070395

◼︎『映画 えんとつ町のプぺル』特報【12月公開】

PROFILE●1980年、兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年、梶原雄太と「キングコング」を結成。2001年に深夜番組『はねるのトびら』のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。同番組がゴールデン枠に移行した2005年に「テレビ番組出演をメインにしたタレント活動」に疑問を持ち、「自分の生きる場所」を模索。2009年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本デビューを果たす。2016年、完全分業制による第4作絵本『えんとつ町のプペル』を刊行し、累計発行部数45万部を超えるベストセラーに。2020年12月公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務める。クラウドファンディングでの合計調達額は3億8000万円を突破。現在、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は6万9000人を突破し、国内最大となっている。芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。

◼︎オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」
https://salon.jp/nishino
西野が考えるエンタメの未来や、現在とりかかっているプロジェクトを先んじて知れたり、場合によってはクリエイターとして強引に参加させられたりする国内最大の会員制のコミュニケーションサロン。コワーキングスペース「ZIP」の利用やサロンメンバーだけでの特典も多数。

画像一覧
2

  • 映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)に向けて同作誕生の背景とそこに込めた想いを語る短期集中連載がスタート
  • 【写真を見る】映画『えんとつ町のプペル』キービジュアルをチェック

関連人物

  • No Image

    西野亮廣

  • 【春ドラマ】2024年4月期の新ドラマまとめ一覧

    随時更新中!【春ドラマ】2024年4月期の新ドラマまとめ一覧

  • コミック試し読みまとめ

    話題の作品がいっぱい!コミック試し読みまとめ

  • 推したい!フレッシュFACE

    推したい!フレッシュFACE

  • 【冬ドラマ】2024年1月期の新ドラマまとめ一覧

    随時更新中!【冬ドラマ】2024年1月期の新ドラマまとめ一覧

  • 【冬アニメまとめ】2024年1月期の新アニメ一覧

    随時更新中!【冬アニメまとめ】2024年1月期の新アニメ一覧

  • 第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞

    投票〆切は4/5!第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞

もっと見る