江口洋介らが語り合う!撮影は「“5時間ドラマ”に向かうような気分」<天使にリクエストを 座談会前編>
上白石萌歌「今までにない化学反応が起こりそうだなと感じていました」
上白石:脚本を読んだ時感じたのは、今までにない切り口だなと。探偵色もありながら、人の人生の最後に寄り添う福祉の精神が混ざるっていうのは、今までにない化学反応が起こりそうだなと感じていました。わたし、大森さんの作品が元々大好きなんです。
大森:本当ですか?ありがとうございます。
上白石:重いテーマなんですけど、その中で寺本さん(志尊)とのコミカルなやり取りがあったりとか、人と人との会話の温もりが脚本に詰まっていて、早くせりふを口にしたい!っていう気持ちが、自粛期間中ずっとありました。演じていてもすごく楽しかったです。
江口:僕は50歳を過ぎてますが、20代の上白石さんと志尊君、それに倍賞さんと、年齢やタイプの異なる人物が出てきて。それぞれの年代による、生や死に対しての価値観の微妙な違いが、みんなで話すシーンに織り込まれている感じがありました。
大森:そうですね。これを書いている時はまだコロナの“コ”の字も全然意識していない時期だったんですけれども、どうしても僕らの中では、死というものを、災害や不幸のように感じてしまう所があるじゃないですか。
コロナでこれだけ日常が変わってしまうのも、その根底にあるのは、死への恐怖だと思うんです。でもね、人間は誰しも、最後は死を迎えるわけで、それがそれこそ最大の不幸であるとしたら、人生の最後に最大の不幸が待ってるって思うのも、なんか辛いじゃないですか。
江口:そうですね。
大森:でも、生き残ってしまった人にとって、どうしても受け入れがたい死もあるわけです。そういう死も見つめていかないと、やはり死を美化する物語になってしまうと思ったんです。
死と生というものが、表裏一体ではなく、両方表にあって、人間の通る道の上に生も死もあるということを、当たり前のように描いていかないと、本当の人間の背負っている宿命みたいなものが見えてこないだろうなと。
主人公の島田は、物語の最初、絶望の淵にいるような、一番受け入れがたい死を背負った状態でスタートします。自分の人生と向き合えなかった主人公が、人の人生と向き合うことで、本来の自分を取り戻していったり、また生きることに前向きになっていく話になるかなと思ったんです。人の死によって我々は生かされているということもあると思うんです。
9月19日(土)スタート
毎週土曜夜9:00-9:50[全5回]
NHK総合放送
【作】大森寿美男
【音楽】河野伸
【出演】江口洋介、上白石萌歌、志尊淳、板谷由夏、倍賞美津子
【演出】片岡敬司 ほか
【制作統括】陸田元一(NHKエンタープライズ)、高橋練(NHK)(高ははしごだか)