草彅剛『読んだときに涙があふれてきて』「ミッドナイトスワン」で見えた“新しい世界”
もっと自由に認めあえる社会になれば幸せだなと
――以前、雑誌で内田監督に「これからは年下の俳優さんたちと寄り添いながら作品を作っていく」とおっしゃっていましたけど、樹咲ちゃんのような年下の方と共演するにあたって心掛けていることはありますか?
現場で周りを見ても僕より年下の方が多いのでね。しっかりしないといけないんだなとは思うんですけど。責任感は出てきたのかなと思います。この現場を自分が引っ張っていかないといけないんだなと。前は思わなかったんですよ。僕も年上の方に引っ張ってもらって作品に出られていたので。今回の樹咲ちゃんだったら、どういうふうにしたら彼女がよくなるのかなとは思ってました。自分だけよくなっても作品はよくならないと思うんです。まあ、もともと自分だけ、自分だけとは思ってないんだけど、どうしても自分のことになると精一杯になっちゃうので。だけど大きな心で周りを見る、そういう意識があるだけで違うと思うんです。その人にとってプラスになるのであったら何でも教えてあげたい、という気持ちはだんだん出てきたかなと思います。
――初めて作品をご覧になったあと、席を立てなかったとのことですが、それはどんな感覚だったんでしょうか。
毎回、自分の作品は最高じゃないか!と思うんだけど、特に今回はいい余韻があって。その余韻にもっと浸りたかったけど、試写室だからすぐ立ち上がりましたけど。映画館にいたら多分2分ぐらい、いい余韻に浸っていたと思う。見終わって、内田監督に「監督とめぐりあえてよかったです」と言いました。
――凪沙は自分の母親にすらありのままの姿を認めてもらえないし、一果もネグレクトを受けてツラい思いをしている。今、起きている問題に踏み込んで、なおかつ優しく温かく包んだいい映画だと思います。最後に映画のテーマについて考えをお聞かせください。
凪沙みたいなトランスジェンダーの方は、多かれ少なかれ、悩みを抱えていると思うので、そういう方にとっても、偏見や差別が和らいだり、少しでもなくなったりしてくれれば、僕もうれしいなと思いますね。そういう偏見とか、日本はまだ遅れているみたいなので、もっと自由に認めあえる社会になれば幸せだなと。あと、こういうコロナの状況で、エンターテイメントの世界は普段の活動ができない環境にあったりするんですけど、こういう作品を通して、人は元気になるなって改めて思ったりもしたんですね。エンターテイメントの作品としてもたくさんの人に楽しんで見てもらって、この時期だからこそ話し合っていただけるといいなと思います。
取材・文=吉野千絵
9月25日(金)全国公開
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