「おじカワ」「トクサツガガガ」…今、なぜ“オタク”を描いたドラマが増えているのか
“オタク”に対するまなざしの変化
これまでにも“オタク”を描いた作品がなかったわけではないが、向けられるまなざしは今とは異なり、少々厳しいものだった。
例えば、社会現象にもなった「ずっとあなたが好きだった」(1992年、TBS系)では、佐野史郎の怪演で社会現象にもなった“マザコンでオタク”な夫“柏田冬彦は「んん~~」と唇を突き出してうなったり木馬に揺られるなど、過度に不気味に、好奇の視線が向けられるような描かれ方がされている。
また、「踊る大捜査線」(1997年、フジテレビ系)第5話では、深津絵里演じるヒロイン・恩田すみれを襲うストーカー・野口達夫(伊集院光)は美少女アニメオタクであり、“アニメの登場人物とすみれの区別がつかなくなった結果”犯行に及んでおり、“オタク”は現実と空想の世界が判別できていない結果犯罪に走る存在として描かれている。さらには、いかりや長介演じる名物刑事・和久平八郎は織田裕二演じる青島俊作に対し「まさかお前も何かのマニアっていうんじゃないだろうな」と発言するなど、“オタク”に対しての偏見を感じざるを得ない発言をしている。
これは、80年代後半に連続少女誘拐殺人事件を起こした宮崎勤が多くのアニメ作品を所持していたことから、“オタク”に対するマイナスイメージが社会に根付いてしまったことも関係していると思われる。90年代のドラマにおいては“オタク”に対する世間の偏見が反映されていたと言えるのではないだろうか。
それが「電車男」(2005年、フジテレビ系)において、“オタク”に対するまなざしは変化を見せる。“オタク”な主人公・電車男はヒロイン・エルメスを救った上、努力して彼女を恋人にするという好意的な描かれ方をするのだ。さらに2000年代中頃以降は矢口真里や中川翔子など、「オタクであること」を積極的に発言する芸能人が増加したことで徐々に偏見は払拭され、“オタク”は市民権を獲得していった。