7月21日にデビュー10周年を迎えた高橋優のニューアルバム『PERSONALITY』。全15曲という大ボリュームで、1曲1曲それぞれがとてもビビッドな色を放つ、多彩なアルバムになっている。多くの曲がコロナ禍において生まれた曲だという。
「僕コロナ禍で30~40曲書いたんですけど、何にも使われなくてもいいって思いながら曲を書くことは、それこそインディーズ時代以来で。この10年は、時間に追われながらとか、1曲入魂でタイアップ先のクライアントやスタッフに満場一致で気に入ってもらえる曲を書かないといけないっていうタイミングもあって。それも僕の中で尊い経験になっていて。でもステイホーム中は、これはどこにも出せないだろうと思いながら、自分でクスッと笑いながら曲を書いたりしてて。思えば、中学とか高校の時って、家で時間があり余ってる中で曲を作っていて。要はラブレターみたいなもので、人に見せるのも恥ずかしいみたいな。それが奇しくもコロナ禍で、またそういう時間がたくさんあって。変な曲をいっぱい書きましたね(笑)。うんこの曲書いて、スタッフだけでも笑ってくれるかなって思ってたら、みんなが口をそろえて『アルバムに入れるに決まってんじゃん! うんこは最優先でしょ』って言ってくれて(笑)。それが『東京うんこ哀歌』って曲なんですけど。『ABC』って曲は、AメロはコードがAだけ、BメロはBだけ、サビはCだけって、コードが続いていくだけの曲で。だからギターの弾き始めの人には良い練習になる曲なんじゃないかなって。そういう実験的なこともできた。改めて曲作りにピュアになれた気がします」
一方、昨年12月からスタートしていたツアー「free style stroke」は、新型コロナウイルスの影響で3月に中止となってしまった。
「ツアーに向けて、練習を重ねて体も作ったので、中止になって2週間くらいは自分の精神的にも穴が空いた状態で、なかなか曲を作る気にもなれませんでした。でも時間があり余ってるからなんか書こうって思い始めて、朝起きて、昨日書いた曲の続きをやろうかなとか思ったりしているところから生活の軸ができ始めた。自分は根っからそういう人間なんだなって気付きましたね。一人暮らしで家にずっといたら、別に朝起きるきっかけってないんです。夕方まで寝ていても誰も怒らないですし。でも、日のある時間に歌詞書くとまた気分が違うから、朝のうちに起きて続きやろうかなって思ったり、それで起きたら晴れてるし、走りに行こうかなとか。ジョギングの帰りにスーパー寄って総菜買って鍋でも作ろうかなとか、鍋煮てる最中にもう1フレーズ書いてみようかなとか、そうやって生活が回って行く感じはありました」
アルバムのレコーディングは、初タッグを組んだ蔦谷好位置との楽曲「one stroke」からスタート。この曲はツアーでも演奏されていた。
「もっとライブに合う曲にしたいなとか、意味合いがフィットする曲にしたいなって思って、ツアーで歌いながら歌詞を変えていったんです。それでツアー終わってからレコーディングしたんですけど。元々は、小学校の時に、友達と遊んで夕方別れる際に、『ばいばい~!』って友達のことを追っかけてたことを題材に書いて。友達も僕に向かって『ばいばい~!』って返してくれる。大人になって振り返ってみると、その一連の流れって一つも合理的じゃなくて。車の中から手を振っている時間って、まどろっこしかったりもするわけですけど、衝動的で人間関係の美しい部分でもある。いろんな大切なものが入ってた気がしていて。よくよく考えたらライブもそうだなって。“距離との距離は今どれくらい”とか、“手を伸ばせば触れられそうだ”って歌詞とかは、車からバイバイするシチュエーションにも置き換えられるけど、お客さんと僕の関係にも置き換えられる。ライブだって別に合理的ではないわけですけど、家族以上の人間関係が育まれている気がするなって思って、どんどん歌詞が変わっていきました。アルバムはダークな曲も多いんですけど、その中で『one stroke』はかげがえのない前向きな曲ですし、僕とリスナーのことを歌ってる大切な曲ですね。でも今回は主役になれる曲が15曲揃ったと思ってるので、その一つの構成要因という感じでもあります」
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