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アニメ映画「サカサマのパテマ」吉浦康裕監督インタビュー(4)~ラストシーン。そして、その先へ――。~

2014/03/31 20:31

ラストとなるその(4)では、気になるラストシーンについて明かす
ラストとなるその(4)では、気になるラストシーンについて明かす (C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013

――映画は最後に大きな「オチ」が待っています。あれは最初から考えてあったのでしょうか。

吉浦:いえ、実は考えていませんでした(笑)。プロットの段階で考え出したものです。そもそも、物語の展開として、パテマがそのまま空へと落ちていったらどうなるのか、というのを入れたいと考えていたんです。ただ、そのまま落ちただけではお話にならない(笑)。そんな時に、あるライブに行って2階席からステージを見ていたら、アンコールの演出でパッと天井の照明がついたんです。それを見て、オチを思い付いたんです。

――そこから、ラストが導き出されるわけですね。

吉浦:そうです。そのオチから、それまで迷っていたエンディングのまとめ方も決まりました。ラストもずっと迷っていて、例えば「パテマの逆さまが元に戻りました。二人一緒になれました。めでたし、めでたし」は分かりやすいけれど、安直ですよね。どっちかの価値観に合わせちゃうということは、サカサマ人を否定し続けている悪役のイザムラと同じ考え方になってしまうし。じゃあ、どういうラストがあるか。それが先程のオチがヒントとなって、最後の大オチを思いつくことができた。それでようやく「これで終わった感じになるな」と思えました(笑)。

――違う価値観を持ったまま信頼し合う、という要素はすごく現代に必要なものを描いていると思いました。

吉浦:なるほど。時代性というものを強く意識したわけではないですが、エンターテインメントを真面目に作ろうとすると普遍的なものが入ってきますよね。その結果だと思います。

――お話をうかがっていると、「サカサマのパテマ」はこれまで以上に多くの人に楽しんでもらいたいと考えて作られたのかな、と思いました。

吉浦:多くの人に楽しんでほしいのはこれまでと変わらないんですが、「イヴの時間」は、見た目がハードなSFに見えたり、せりふ芝居中心だったりで、中高生以上の作品だったとは思うんです。「サカサマのパテマ」は、それよりももうちょっと広げて、小学生からうちの両親ぐらいの世代まで楽しめるようにしたいというのはありました。海外の上映ではファミリー向けとして宣伝されたので、小学生ぐらいの子供さんがストレートに楽しんでくれているのを見ました。

――「サカサマのパテマ」を作っていて、大変だったところというのはありますか?

吉浦:いや、「サカサマのパテマ」は今までの作品の中では比較的精神的に楽に作れた方でした。「これをあとどのくらい作り続けるんだろう」と思いながら「イヴの時間」を作っていた時のほうが相当つらかったですね(笑)。

――それは何が違うのでしょうか。

吉浦:「イヴの時間」の時は、いろんなことを一人でやっていたので、さまざまな問題を一人で抱えなくてはいけなかったんです。相談できる相手もあまりいなくて。今回は、映画を作るという目的も明確にあり、スタッフも集まってくれたので、そこが違いますね。先ほどお話したように、こちらが何かアイデアをいうと金子さん(美術監督の金子雄司)のように、それについていろいろ打ち返してくれることもたくさんありましたし。

――制作は順調だったんですね。

吉浦:そうですね。ひとつ不安があったとすると、「逆さま」という映像の面白さは、作ってみないとわからない、というところでした。最初に配信で見せた冒頭のAパートを完成させるまでは、「逆さま」というコンセプトが面白くなるのか、スタッフも100%の確信は持てない状態で作業をしていたようで。完成した映像を見て、スタッフは「あ、なるほど」と思ってくれたらしいです(笑)。

――吉浦監督にとって、「サカサマのパテマ」という作品は、どういう位置づけの作品になりましたか。

吉浦:やっぱり初長編というのは一つあります。20代で作った「イヴの時間」は、制約を逆手にとってがむしゃらに作った作品でした。「サカサマのパテマ」はそれに対して、「作りたいから作る」という気持ちで作った最初の作品かなと思いますね。「イヴの時間」ももちろん作りたかったんですけれど、目標の見据え方が違うというか。「サカサマのパテマ」は映画が作りたくて、映画を作ろうと思って企画を立てて、自分でスタッフも集めて、映画を作った。そういう意味ではスタート地点だと思っています。ぜひこのスタッフで新しい作品を作りたいと思っています。

――最後に、これから「サカサマのパテマ」をご覧になろうとしている方にメッセージをお願いします。

この作品は、「ヒロインだけ重力が逆に働いていたら?」というアイデアを突き詰めて、正統派のボーイ・ミーツ・ガールにまとめた作品です。非常にシンプルな作品で、ビジュアルを見て「あ、面白そう」と思ったら、その通り楽しんでいただける映画だと思います。ビジュアル通りの映画ですので、ぜひ見ていただきたいです。

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

「サカサマのパテマ」
4月25日(金)発売
Blu-ray限定版 7800円(税抜)
DVD限定版 6800円(税抜)
DVD通常版 4800円(税抜)

【特典内容】
<特典>
・作画監督又賀大介描き下ろし三方背外箱
・特製サウンドトラックCD(25曲 約30分収録 予定)
・豪華ブックレット(涌井 学書き下ろし小説「二人の夢(仮題)」&又賀大介描き下ろし挿絵、スタッフ座談会など)
※ブックレット表紙はキャラクターデザイン茶山隆介描き下ろし
・最後の手紙レプリカ
<映像特典>
・東京国際映画祭舞台挨拶
・初日舞台挨拶
・キャスト(藤井ゆきよ・岡本信彦)、吉浦監督インタビュー映像
・サカサマな「サカサマのパテマ」(本編シーンを“サカサマ”視点でダイジェスト収録)
・予告編集
<音声特典>
・藤井ゆきよ×岡本信彦らキャストによるオーディオコメンタリー
※DVD限定版はBlu-rayと同一。DVD通常版は映像、音声特典のみ収録。収録内容は変更になる場合あり。

発売:アスミック・エース/KADOKAWA 角川書店
販売:KADOKAWA 角川書店/アスミック・エース

■公式HP
patema.jp/

画像一覧
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  • ラストとなるその(4)では、気になるラストシーンについて明かす
  • 【画像】「サカサマのパテマ」とは吉浦監督にとってどんな作品になったのか?
  • 4月25日(金)発売Blu-ray/DVD限定版のジャケット
  • 特典のブックレットより
  • 各種特典が満載のBlu-ray/DVD限定版の展開図
  • 「ザテレビジョン」からのプレゼント!

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