ラストにどんでん返しが!? 伊原剛志主演「トクボウ」Pに聞く裏話(前編)

2014/06/23 17:00 配信

ドラマ

伊原剛志がダークヒーロー・朝倉を演じる「トクボウ」。そのキャラクターの異質さは、これまでの伊原からは想像のつかないものに(C)高橋秀武/集英社・読売テレビ

実力派・個性派俳優たちの“連ドラ初主演”作品が目立つ今期ドラマ。

伊原剛志が50歳にして初の連ドラ初主演を果たした「トクボウ 警察庁特殊防犯課」(日本テレビ系)は、虚無的なオーラを漂わせる刑事・朝倉草平が法では裁けない悪を“矯正執行”の名のもとに裁いていくという刑事ドラマで、勧善懲悪ながらダークな部分も併せ持つ作品に。また、作内では朝倉が矯正執行の際に行う“悪人を縄で縛り上げる”という仕置によって名高達男や升毅ら俳優界の重鎮らが縛り上げられており、日本有数の緊縛師・有末剛氏監修によるその芸術的な“縛りの美しさ”も一部の注目を集めている。

そこで今回は6月26日(木)に放送される最終話に向け、本作を企画した福田浩之プロデューサーに作品にかけた思い、主演役者・伊原剛志と朝倉の魅力、そして最終回の展開になどについて話を聞いた。

■朝倉草平を「人間くさいヒーロー」にしたくて

――「トクボウ 警察庁特殊防犯課」(以下、トクボウ)は、伊原さんが演じる朝倉草平が“矯正執行”の名の下に悪人を縄で縛り上げて更生させていくという刑事ドラマですが、まずこの作品の企画が立ち上がった経緯を教えてください。

まず、勧善懲悪のヒーローものをやりたいなとはずっと思っていました。そして僕としては、さらに単なる勧善懲悪ではないものを目指したかったんです。そこで「トクボウ」の原作(高橋秀武「トクボウ 朝倉草平」)を見つけて、これだと思って企画を立ち上げました。

――朝倉草平はかなりクセのある人物というか、どちらかと言えばアンチヒーロー的な人物ですね。

どこか闇を抱えていて、ヒーローなんだけど虚無感や喪失感、もしくは泥くささのある主人公を据えた作品をやりたかったんです。映画の「ダークナイト」('08年)のバットマンや「スパイダーマン」('02年)のスパイダーマンのような感じで。個人的には朝倉は蜘蛛の糸が出ない(代わりに)縄を使う日本のスパイダーマンだと思っているんです。

あと、原作は時事ネタを風刺的に描いていたことでも引かれたんです。設定は突飛でも、扱うテーマはリアリティーのあるものにしようと思っていたんです。設定は突飛なまま、食品偽装問題とかを取り上げても違和感のない作品がいいなと。

――たしかに、風刺作品としての部分もドラマにそのまま反映されています。第2話では法的にグレーゾーンだったJK散歩についてのお話でしたが、放送のちょっと前に実際に罰則化されたりもしました。

そう、JK散歩はすごいタイミングが良くああいうふうになりましたね。

――その中で、朝倉役に伊原さんを選ばれた理由はどこにあったんですか?

理由としては大きく2つありました。まず、キャラクターの設定として、ドラマでは原作の朝倉よりもっと人間くささというか、等身大の人間に近い朝倉を作りたかったんです。原作の朝倉は縄が服の袖から勝手にビュッと出たり、それこそスパイダーマン的な見せ方もしているんですけど、ドラマではもうちょっとリアリティーのある見せ方に寄せたかったんですよ。

だから、縄を縛るシーンなんかでもちゃんと用意して、縄を出して、順々に縛っていって…と段階で見せているんですよね。そんな方向性がある中で、僕らと一緒に人間くささ、泥くささのある朝倉を作っていてもらえるのは誰かなあと考えていたときに、伊原さんが浮かんだんです。

――もう1つの理由は?

それは「この人がこんなことやったところを見たことない!」というキャスティングをしたい、というのは僕の中に常にあるからなんですね。伊原さんはこれまで、善にしても悪にしても真っすぐな人間を演じられてきたイメージがあるじゃないですか。その中で、いつも「死にたい…」とか言っている朝倉をやってもらったらどんなふうになるんだろうという興味が単純にあったんです。

あと、朝倉が悪人をおふざけで縛っているように見えてしまったら、途端に作品としてダメになってしまうんだと思うんですよ。朝倉は悪人を懲らしめるために真剣に縄で縛っている、という見え方が大前提としてあって、その上で誰が縛られているかとかをツッコむこともできる作品にしたくて。(伊原さんは)そのバランスが取れる役者さんだと思ったんです。

――企画立ち上げから試行錯誤されたんですね。

いや、そこは1話の反応を見るまで不安でしたね。この原作を選んだのも、伊原さんを起用するのもある程度の考えを持ってのことだったんですけど、企画書では全然伝わらなくて。

――ただあらすじを書くと「伊原剛志が悪人を縄で縛るドラマ」という言い方になりますからね。

よく分からないですよね。原作も割とSM的な表現が多いから、卑猥なドラマと思われる可能性もあるし…いやそういうことじゃなくて、というところで苦労しました。なので初めて、女性スタッフを集めて試写会をやりました。でもそこで、割と狙い通りに勧善懲悪の部分に注目してくれたし、完全にギャグのドラマと思った人もいなかったので、このやり方でいいんだと安心しました。それは、伊原さんがリアリティーとギャグの間の、良いバランスで朝倉を作ってくれたからだと思います。

(後編へ)