はいだしょうこ、ミュージカル「ひめゆり」への思い
ミュージカル「ひめゆり」が、7月16日より東京・シアター1010にて上演。
同作品は、ミュージカル座創立20周年記念公演で、'96年の初演より上演を続けるミュージカル座の代表作。沖縄戦で犠牲になったひめゆり学徒隊の悲劇を全編41曲の歌でつづり、戦争の悲惨さと命の尊さを訴えている。
今回、終戦70年という節目の年の公演で、キミ役として主演を務めるはいだしょうこにインタビューを行い、作品への思いや見どころなどを語ってもらった。
――作品への思いを教えてください
中学生の時に本田美奈子さんの「ミス・サイゴン」という舞台を見てすごく感動して、その時から美奈子さんのファンになりました。その後、美奈子さんが出演する作品を見させていただいていた中、この「ひめゆり」に出合い、見終わった後にいろいろ考えさせられるものがありました。その時に「いつか私も、キミ役として舞台の上で生きられたらいいな」と思っていました。
――何年か越しの夢がかなったキミ役、感動もひとしおなのでは?
今は一生懸命稽古に励んでいるところなので、「あの美奈子さんが演じていた役を自分がさせていただける!」という感動よりも、本番に向けての思いの方が強くて実感は沸いていないんですよ…(笑)。ただ、“いろんなことがあるけど生きていく”ということもテーマになっているので、美奈子さんの思いも一緒に舞台に立てたらなと思っています。
――憧れの人が演じた役ということで、特別な思いもある?
ポスター撮影の時に防災頭巾をかぶって撮影したのですが、その防災頭巾は出演当時の美奈子さんがかぶっていたものらしく、かぶった瞬間に“重み”を感じましたし、美奈子さんに「見守ってください」と思いながらかぶらせてもらっています。今作で美奈子さんの演じられた役をやらせてもらうのは2作目となるのですが、勝手にご縁を感じていて光栄に思うとともに強い思いがありますね。
――この舞台に向けて、何かやられたことはありますか?
沖縄に行って、ひめゆりの塔や(ひめゆり学徒隊が配属された避難指定壕の)アブチラガマを巡りました。アブチラガマの中に入らせていただいたのですが、もう手の施しようがない方を運ぶ場所や、ひめゆり学徒隊が立ったまま休んだ場所などを目の当たりにして、その過酷さに触れました。
私たちは懐中電灯を持って入ったのですが、中でライトを消すと本当に真っ暗なんです。目が慣れるということも一切なく、その暗さだけで恐怖を感じました。そんな中でいろいろな事が起っていたと思うと、言葉が出ないくらい胸が苦しくなりました。
――ひめゆり学徒隊の悲劇をつづった作品ですが、作品に対する感想は?
戦争というものは、一方が苦しいというものではなく、殺す側も殺される側も、みんながそれぞれいろんな思いを抱えて生きていたんだな、ということをあらためて考えさせられました。
また、全てが“悲しい”というだけじゃなく、キミがみんなからの“生のバトン”を受け取り、ボロボロになりながらも亡くなった人たちの分まで前向きに生きていこうという姿勢から、今、生きているということが幸せだなと感じました。見ていただいた方には、それぞれいろんな思いを受け取って帰っていただけるよう、稽古に励んでいます。
――稽古で苦労していることはありますか?
今まで出演したミュージカルは古典のものが多くて、発声がクラシックの作品が多かったんです。きれいに粒をそろえて歌い、表情や表現を付けていくのですが、今回は地声と裏声を感情に合わせて変化させる、ということを学びました。
きれいにまとめ過ぎるのではなく、とにかく思いを言葉に乗せる。歌と歌の間の“伸ばし”にはこんな意味がある、といったことは初めての体験だったのですごく勉強になっています。
――役の心情的にも大変そうですが?
体力と気力は本当に消耗しています。励ましながらも仲間たちが亡くなっていくので、毎回演じながら涙が止まらなくなります。死を受け止める気力や、それでも生きていかなきゃいけないという気力、自分も過酷な状況の中、人を励ます力など、肉体的にも精神的にも毎回ボロボロで稽古が終わった後はいつもぐったりしていますね(笑)。
――劇中での印象的なシーンは?
(登場人物の)ゆきちゃんが歌う「小鳥の歌」です。小鳥になってお母さんのいる庭に飛んで行ってお母さんの肩に止まったらきっとお母さんは気付いてくれる、という内容なのですが、歌の上手な子がいつも歌う歌。昔、観劇した時にもすごく印象的でした。
また、キミが、命がまだあるのだから死ぬなんて言わないで、と兵士を励ますシーンもすごく印象的です。人を励ましながらも自分にも言い聞かせているという内容でもあるので、自分でも思い入れのある場面ですね。
――役作りで気を付けていることは?
今回の役はあまり深く考え過ぎないようにしています。ひめゆり学徒隊のみんなも当時、戦争は初めての体験で、自分の周りで起こる事は知らないことばかり。状況に振り回されながら、その時の状況を受け入れ、その時の感情を出しているので、そんなキミちゃんの心情に寄り添えるように瞬間瞬間の感情を大事にしたいと思っています。
――劇中では、ひめゆり学徒隊がやりたいことを語る場面もありますが、はいださんが今やりたいことは?
やはりこれから先も歌を歌っていきたいなと思います。今できることは何でも挑戦したいという思いもあるのですが、やっぱり私の中で歌というものが中心にあるんです。バラエティーに出たり他のことをしていても、必ず歌というものは大切にしていきたいし、そこだけはブレたくないところなんです。これからも歌える限りは歌っていきたいと思っています!
――最後にメッセージをお願いします!
戦後70年ということもありますし、この作品を通して、今一度忘れかけている戦争の悲惨さ、命の大切さを考えてほしいと思っています。幅広い年代の方に見てもらいたいのですが、特に戦争を知らない子供たちに見てもらいたいですね。きっと必ず何かを受け取って帰ってもらえると思いますので、ぜひご家族で見に来ていただきたいです。
7月16日~21日(火)
東京・シアター1010
■公式HP
【HP】www.musical-za.com/STAGE/himeyuri15/stage.htm