日本エレキテル連合は7月15日(水)、DVD「グッバイヒューズ」をリリースした。
「グッバイヒューズ」は、彼女たちのレパートリーの中から選りすぐられた8本のネタを新たに撮りおろしたオリジナル作品。
「ダメよ、ダメダメ」の“朱美ちゃんと細貝さん”ネタで大ブレイクし、「2014年新語・流行語大賞」の年間大賞を受賞。ライブやテレビだけではなく、YouTubeでも自身のチャンネルを持ち勢力的に活動する彼女たちの新作は、あえて“朱美ちゃん”ネタを収録しない、日本エレキテル連合が持つキャラクターの豊富さを示す意欲作となっている。
そこで今回は日本エレキテル連合の中野聡子と橋本小雪に「グッバイヒューズ」に収録されたコントへの思い、そして彼女たちが追い求める理想の笑いの姿について聞いた。
――今回収録される8本のコントは、どのように選ばれたのでしょうか?
中野聡子(以下、中野):ライブで評判が良かったネタと、自己満足で作っているネタと、まだ世の中にほとんど出ていない、挑戦の意味も含めたネタをバランス良く入れようと思いました。
橋本小雪(以下、橋本)その上で、今私たちが「とにかく見せたい!」と思っているものを順番に入れていった感じですね。
――朱美ちゃんと細貝さんのネタが入っていないのには意図があるんでしょうか?
中野:朱美ちゃんと細貝さんは私たちを救ってくれた大好きなネタなんですけど、今回は一旦距離を置いて、他のキャラクターを追求してみようと思いました。なので、タイトルも今まで私たちの核になっていた部品がなくて、「エレキテルのヒューズが飛んでいる」という意味で「グッバイヒューズ」としているんです。
――なるほど。「自己満足で作っている」ネタが気になります。
中野:DVDの最後に収録されている「白いババア」ですね。
橋本:ライブで、爆笑が起きないタイプのネタです。クスクス笑いと、たまに悲鳴が上がるぐらい。
中野:自分でも何が面白いのかがたまに分からなくなるんですけど…いつかみなさんに面白いと思ってもらえる日が来るかなと思ってやり続けています。
――愛着があるんですね。
橋本:そうですね。そう、「白いババア」は天竺鼠の川原さんが絶賛してくれたんですよ。川原さんみたいなおかしな方に絶賛してもらったので、最近では自信を持ってやるようになりました(笑)。
中野:でもいきなり白いババアを見てもらうのは怖いので、最後に入れていたりします。
――ははは。では、「挑戦の意味も含めたネタ」というのは。
中野 それは、「シザーズin1998」というネタですね。コント内でやっている漫才が挑戦でした。私たちはずっと漫才に憧れがあったんです。でも最初漫才をやったとき、お互いに無理だと悟ってそれ以来やらなくなって。
橋本:センスが全くないんですよ。でももう一度挑戦してみたいと思って、コントでやろうとしました。
中野:あえてコントの中で、というのは照れと逃げが半分半分でした。でもやっぱり全然できなくて、何度も撮り直して……。
橋本:二人ともセンターマイクとか寄り過ぎちゃったりとか、本当にぎこちないんですよ。
中野:でも苦戦した分だけ、収録されているものは思い描いていたものになりました。私たちなりの漫才はこういうもの、というのは示せているんじゃないかと思っています。
橋本:私たちが持っている、漫才への憧れが詰まったコントだよね。
――今回、朱美ちゃんのネタと距離を取っているということは、今回のDVDを機にこれから活動していく上での心境の変化などもあったのでしょうか? 例えばテレビに対しての取り組み方などは。
中野:いや、それは変わらないです。こういうDVDを出すと「テレビでの姿はあくまでテレビ用で、これが本当の姿だ」とか評されたりすると思うんですけど、それはまったく逆で、テレビでもライブでもどこでもずっと同じことをこれからもやりたいという意思を込めているんです。
橋本:今もテレビでやらせてもらうネタとライブのネタのテイストに変わりないよね。
中野:そもそも、私たちの目指している理想は「テレビコント」なんですよ。
――お二人の「テレビコント」の理想はどこにあるのでしょうか?
中野:憧れはなにより志村けんさんなんですけど、もうひとつ大きな存在として「ワンナイR&R」('00~'06年フジテレビ系)の影響が強くて、理想になっています。特に山口智充さんのムチャゴロウさんとかスタジオミュージシャンの黒木さんとか、チョコボーイ山口さんとか、ああいう笑いをずっとやりたいと思っているんです。
橋本:目立つメイクとか凝った衣装とか、「ワンナイR&R」のイメージだよね。
中野:テレビ番組に出るのは毎回すごくうれしいし、これからも積極的に出たいんです。自分のやりたいことをやるためにテレビでは顔を売っておいて、本当にやりたいことはライブでやればいいなんて言う人もいるんですけど、それはテレビを作っている人に失礼だと思うんですよ。
――そうですね。
中野:でも私たちがやってることは、どうやらテレビのメーンのルールとはちょっとズレがあるみたい(笑)。たくさんテレビ番組に出させていただいた時期も、反応を見て柔軟にネタを変えることができないというか、「私たち、変われないなあ」って不器用さをすごい感じていました。
橋本:でも日本エレキテル連合として、こういうお笑いをやりたいって根本の部分はずっと変わっていないし、このDVDでもテレビでもYouTubeでも、ずっと変わらずやり続けていきたいなと思っています。
――では、この作品をどういう人に見てほしいですか?
中野:うまく言えないんですけど…そう、社会でうまく立ち居振る舞えてない人に見てもらいたいです。私たちのキャラクターって、社会のメーンルールに適応できなかった人しかないんですよ。
橋本:全てのキャラクターがどうしようもないんですけど、いとおしいんです。
中野:そうなんですよ、本当にいとおしくて。「他人からは哀れに思われてもそれでいいじゃん」という思いを込めているつもりなので、うまく立ち居振る舞えていない、なかなか生きていて元気になれない人にこそ、「グッバイヒューズ」を見てほしいです。
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