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「オトナ女子」のセットは物語とともに“進化”する

2015/11/19 08:00

フジテレビ美術制作局デザイナーの鈴木賢太氏
フジテレビ美術制作局デザイナーの鈴木賢太氏

毎週木曜に放送中の篠原涼子主演ドラマ「オトナ女子」(フジテレビ系)で、美術デザインを担当するフジテレビ美術制作局デザイナーの鈴木賢太氏にインタビュー。

亜紀(篠原)と文夫(江口洋介)が丁々発止のやりとりを繰り広げるおしゃれなカフェや、亜紀が住むマンションについて、制作秘話やこだわりを語ってもらった。

亜紀もよく訪れる、文夫が“生活する”カフェ。マスター・霜田(池田成志)と文夫たちの静かな空間が、亜紀が現れることで痛快なトークの場と変容し、毎回の見どころとなっている。そんなおしゃれカフェで、鈴木氏がこだわった部分とは?

「劇中で映る時間でいえば、このカフェが一番長いのではないかと思い、『オトナ女子』で一番重要な場所はここなのだろうなと個人的に思っていました。そこで想像したのは、文夫はこのカフェが居心地良く、自分専用の場所まで作り、誰よりもこのカフェについて詳しいだろうなと。

マスターも文夫の才能を理解し、いつかまた彼がすごい物を書くだろうと想定してそこにいることを許可している。それが染み出る空間を作るため、テクスチャーはグレーっぽい空間で、その中に鉄の素材が効いた骨格を作りました」

具体的なコンセプトでいえば“和カフェ”というところから案が練られていったそう。

「鎌倉の古民家じゃないですけど、はやりのラインでいきたいね、と。ただ、それでは今の時代にてらい過ぎているというか、ウケているものに迎合する感じになってしまうので、リアリティーはあるけど“半歩先”を提案するために、倉庫の男らしさと、和カフェの融合にたどり着きました。アンティークに茶色を集めることで、和とマッチして『小倉トースト』が似合う作りになったと思います(笑)」

置物や時計などインテリアもアンティークのすてきな物が多いが、内装は「深めの木彫を中心にして、真ちゅうやガラス、アンティーク系のものを用意しました。アンティークを集めているだけの店にせず、一点一点個性のある物をそろえようと。一人の男のセンスで統一されている感じを目指しました」

また、文夫がいるスペースは特に気を使ったそうで「文夫がここを家のようにしていることを表現するのは難しかったです。ここに洋服がたくさんあってもおかしいでしょう?(笑) ですからあくまで彼にとっては書斎なのだというところから入り、後ろの本棚に必要な物が全て入っているイメージにしました。

特に文夫が入り浸っている感じを出すための仕掛けとして用意したのが金魚と水差しです。本来マスターがやるべき仕事を彼が担っているということを表す、明確な役割を作りました。作っていく上で監督といろいろと話をしまして、場合によってはマスターがいないときに、文夫がカウンターに立つこともあるくらい熟知している感じを意識しました」

あくまで鈴木氏は美術デザインの担当であり、台本や監督の意向に沿うためにはまずはドラマ本筋のストーリーが決まらないと進めることはできない。

「台本と設定があって、その上でわれわれが肉付けしていく感じで作っています。大まかなストーリーラインは何となく最終回に向けてあるんですけれど、各話どこに起伏を持たせて面白くしていくか。キャラクターの“厚み”が重要なんです。誰がいても同じストーリーになるのではなく、そのキャラだからこそ、そのストーリーになるということを目指す。その前提で、美術の側からできることを提案していきます」

ドラマのセットはどれもデザイナーのこだわりが詰まっているもの。それが完成するまでにはかなりの月日を要すると思うが、どのくらいの期間なのだろうか。

「『今回カフェのセットが必要です』と言われてから設計し、実際に建つまで1カ月半くらいの時間がありました。でも、最初の1カ月くらいずっと考える時間で、『もう時間がない!』となってから、ロケハンをして、同時にキャラクターも固まっていく。いつもドラマはそうですが、終盤に一気に固まることが多いんですよ。なかなか計画的にはいかない(笑)。

テレビの美術セットは結構スピードが求められます。ですから1カ月半あっても、方向性が決まってから僕が使える日数はせいぜい3日くらい。それまでの間にいろんな状況に対応できるように事前準備をしておいて、いざラインが決まったとき、すぐに使える物が用意できているように準備しておくのが大事です」

極限のスピードで高い精度の“作品”作り上げる鈴木氏。ちなみに鈴木氏が最初にドラマのデザインを手掛けたのは「医龍-Team Medical Dragon -」シリーズ('06年ほか)。以来、「ラスト・シンデレラ」('13年)「ディア・シスター」('14年)などの名作を担当しつつ、並行して「VS嵐」などのバラエティーのセットも作ってきた。

「どちらもやってきましたが、得意分野でいうと…バラエティーです(笑)。ただ、バラエティーをやっているとコントセットを作ることがあるのですが、コントセットは一つの空間に全てが凝縮されているので、ドラマをやる上で良かったのかなと思います。

それにバラエティー側にもいいことがあって、ドラマの影響ですごくリアルな空間を作ることが多いのですが、リアルなセットの中に変なキャラクターがいるからこそ笑えると思うんです。僕が両方でやっていることがお互いにいい影響を及ぼしているのではないかなと思います」と明かした。

作り手には避けて通れない「壁」にぶち当たったときのことについても聞いてみた。

「今回でいえばマンションになりますかね。最終的にはいいバランスのところに落ち着きましたが、振り幅はとても大きかったです。すぐにこれでいこう!とはならず、最後まで答えにたどり着きませんでした。他の部分が形付けられて、ロケも始まり、いよいよマンションでの撮影だとなったとき、初めてそこに必要なものが形として見えたんです。それから亜紀がそこに佇んだことを想定し、出てくる色味はこれだろうなという『正解』が見えたので、その正解に向けて一気に進めました」

最後に鈴木氏は「僕らは第一に出演者、キャラクターと向き合っていますが、視聴者の方はさらにその後ろにも注目して見られています。それはすごくやりがいがあることですしうれしいですよね。ドラマをちゃんと見てくれているのだなあと思うので、これからも細部にこだわり、真剣に向き合っていかないといけないと思いました」と、力強く前を向いた。

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

「オトナ女子」
毎週木曜夜10:00-10:54
フジテレビ系で放送

画像一覧
22

  • フジテレビ美術制作局デザイナーの鈴木賢太氏
  • 【写真を見る】亜紀(篠原涼子)と伸治(斎藤工)がかつて愛を育んだベッド!
  • 亜紀がマンションで仕事をするときのデスク
  • 亜紀の飼い猫・ちくわをモチーフにした、かわいらしい模様のオリジナルグラス
  • スタイリッシュな亜紀のオフィス。明暗を表現するため、左右の壁の茶色の色を変えているそう
  • 新企画のアイデアなどが話される会議室
  • 社員の息抜きの場になっている給湯室
  • オフィスの定番・行き先ボードもちゃんと記入されている
  • 付箋がベッタリ張られているメッセージボード
  • さらには会社の遊び心を表すボードまで
  • オフィス周りのこだわりを語る鈴木氏
  • 過去に作られた恋愛アプリのパネルも
  • そして亜紀の名刺はこんな感じ
  • 文夫(江口洋介)が入り浸るカフェ
  • 文夫が作業するデスク。奥の椅子は座り心地抜群!
  • おなじみの小倉トーストが!
  • 時には自分で水を入れてしまうほど、文夫にとっては“家”のようになっているカフェ
  • 需要に合わせて、急きょ料理の“実作業”ができるように変更したというキッチン
  • こちらもストーリーに合わせて追加された化粧室
  • 亜紀が文夫に頼まれて取って来たあの埴輪(はにわ)も!
  • マスターが、文夫が書いた脚本を保管している引き出し
  • 先日行われたセットツアーでは、セット内に随所に散りばめたこだわりについて、鈴木氏が集まった視聴者らに解説を

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オトナ女子

出演者:篠原涼子 江口洋介 吉瀬美智子 鈴木砂羽 谷原章介 

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  • 篠原涼子

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