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角川源義賞・角川財団学芸賞・城山三郎賞贈呈式開催

2015/12/16 08:15

東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントにて、第37回角川源義賞、第13回角川財団学芸賞、第2回城山三郎賞の贈呈式が行われた
東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントにて、第37回角川源義賞、第13回角川財団学芸賞、第2回城山三郎賞の贈呈式が行われた

第37回角川源義賞、第13回角川財団学芸賞、第2回城山三郎賞の贈呈式が行われた。

日本文学を研究した個人のち学術書で高い完成度を有する著作・著者に贈られる「角川源義賞[歴史研究部門]」は、高埜利彦(たかの・としひこ)氏の『近世の朝廷と宗教』(吉川弘文館刊)が選ばれた。

藤井讓治選考委員は、「近世の朝廷・宗教研究を、政治・社会の流れの中に置くことで、豊かな近世史像を描き出している。通史、全体的視点が研究を厚くし、この研究が1990年代以降の身分制研究を主導してきた」と評し、「収録されているのは2008年ころまでのもので、最後の論稿から時間が経過している。その後、さまざまな蓄積や展開があるでしょうから、現段階での最新研究を開陳していただきたい」と期待の言葉を贈った。

登壇した高埜氏は、「受賞の報に、足元から沸きあがるような喜びを感じました。個人で賞を贈られるのは、小学校2年生の時に、豊島区から『歯がきれい』と表彰していただいて以来です」と笑いを誘いながら、「ほぼ一心不乱に、研究以外に何もない人生だったと思う。その成果が受賞となり、これまでの生き方を肯定されたように受け止めました」と感慨深げに語った。

日本の文芸・文化に関わる個人の著作で、高レベルの研究水準にありながら一般読書人にも読まれうる研究著作に贈られる「角川財団学芸賞」は、安藤礼二(あんどう・れいじ)氏の『折口信夫』(講談社刊)に贈られた。

松岡正剛選考委員は「他に候補作がある中で、選考は5分、満場一致で決着した」と作品の傑出ぶりを表現した。そして、「著者には過去にも、『神々の闘争』など数々の折口信夫論考の実績があるが、受賞作は先行成果の焼き直しではない。媒介者としてのエディティングプロセスを感じる」と称えた。

受賞あいさつに立った安藤氏は、「いくつも縁の重なり合いに感銘を受けております。角川文庫で読書の悦びに目覚めた私は、澁澤龍彦、中井英夫の名前を、角川文庫の江戸川乱歩の著作の巻末に付された解説で知りました。そして、角川書店の創立者である角川源義氏は折口信夫の教えを受けて、その教えを出版文化として大成した人です。折口を主題とする書物で角川財団の賞を受けられたことは、偶然ではないと感じています。未来へどんな一歩を踏み出すか、励ましをいただいた気がします」と喜びをあらわにした。

数多くの名作を遺し、作中のさまざまな人物像を通して組織と個人という問題をはじめ、人間の在り方を深く追究した城山三郎。城山が貫いた精神を受け継ぎ、いかなる境遇、状況にあっても個として懸命に生きる人物像を描いた作品、あるいはそうした人物が著者である作品を顕彰する「城山三郎賞」は、瀬木比呂志(せぎ・ひろし)氏の『ニッポンの裁判』(講談社刊)が受賞した。

片山善博選考委員は、「昨今の政治が、国の将来を左右するほどの重要事項を熟議しないで決めてしまう状況にある中、司法の究極のミッションは国民の権利を守ることであらなければならない。私は、唯一司法は機能を果たしていると思っていたが、司法までもが自らの組織を守ることに忠実になってしまっている。そんな社会の不公正や不具合、組織の病理を社会に提示する作業には勇気と正義感を必要とするが、現実のありさまを説得的に描いている」と司法の問題を厳しく指摘しつつ論評した。

元裁判官で、「古巣を批判する書物」(瀬木氏)を書き上げた瀬木氏は、「精神的な負荷も大きな作品でした。章立てをするところから難航し、司法理解の必要性を説いた最終章は、何度となく書き直しました。正確かつ客観的事実に基づいて書くことを心がけ、専門的な内容をいかに興味深く、分かりやすく凝縮することが課題でした」と、難しいテーマへの苦労を告白しつつ、「ともすれば裁判所が法を犯すまでの、危険水域にある中、人権の充実や自由の確保がとても難しくなっている」と社会への警鐘をあいさつの言葉に選んだ。

受賞者にはそれぞれ、賞状・記念品ならびに副賞が贈られた。

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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  • 東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントにて、第37回角川源義賞、第13回角川財団学芸賞、第2回城山三郎賞の贈呈式が行われた
  • 【写真を見る】論評する片山善博選考委員
  • 角川文化振興財団を代表し、有馬朗人理事があいさつ
  • 高埜氏は「近世の朝廷と宗教」(吉川弘文館刊)で受賞
  • 安藤氏は「折口信夫」(講談社刊)で受賞
  • 瀬木氏は、「ニッポンの裁判」(講談社刊)で受賞
  • 受賞者に言葉を贈る藤井讓治選考委員
  • 受賞作をたたえる松岡正剛選考委員
  • 「角川源義賞[歴史研究部門]」受賞の高埜利彦氏
  • 「角川財団学芸賞」受賞の安藤礼二氏
  • 「城山三郎賞」受賞の瀬木比呂志氏
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