スペースシャワーTVが主催する、音楽をテーマにしたアート展「SPACE SHOWER MUSIC ART EXHIBITION」が開催され、水曜日のカンパネラ・主演のコムアイがトークセッション企画「CREATOR'S SESSION」に登場。イベント後半の模様をリポートする。
山田智和監督が手掛けた“ナポレオン”のミュージックビデオ(以下MV)に引き続き、児玉裕一監督の“ラー”のMVにまつわる制作秘話をトーク。コムアイは「水曜日のカンパネラをやる前、よくYouTubeでMVをあさっていたんですが、『児玉さん(の手掛けた作品)に育ててもらった』っていう感覚があったんです。
撮ってる作品の数も多いし、椎名林檎さんもすごく好きなので。中学生くらいの時から林檎さんの新しいMVが出たら見て、そのたびに『げ~っ!』って思ったりして(笑)。そこから『こういうこと面白いな』って、いろんなアイデアをもらっていました。
そんな中で水曜日のカンパネラに誘われて、『やるからにはMVにこだわろう』と思って、いろんな監督に頼んでいったという経緯があったんです。なので、まさか自分がこんなに早く児玉さんに撮ってもらうことがあるとは!っていう感じでした。
(児玉監督が演出すると)決まった時は、自分から頼んだくせに早過ぎて『どうしようかな…』と思ったんです。だから(良い作品ができるように)背伸びしました」と、憧れの存在に撮影してもらえたことに感慨もひとしおの様子。
一方の児玉監督は「“ナポレオン”のMVなど(完成度の高い作品を)見ていたので、『(オファーが)来ちゃった!』と思いましたね(笑)。でも、(水曜日のカンパネラの)音にすごく興味があったので『ぜひやらせてください』と返答しました」と、オファーを快諾したことを告白した。
“ラー”のMVを制作するに当たり、児玉監督は「コムアイさんから『とにかく壮大なビデオを作ってほしい』って言われたんですよ(笑)。壮大か…と思ったんですけど、確かに僕は山田くんみたいなMVとはちょっと違うアプローチでいかないとダメだなと思って。
そんな中で曲を聴いていると、今までの曲と若干印象が違うように聞こえて、『あ、これは全然違うイメージを作っていいんだな』と思ったんです。『じゃあ最初は宇宙から入ろう!』と(笑)。それはすぐ決まりました。
“ラー”っていうのは太陽神なので、わりとストレートに『太陽』『女神』『奴隷』、そして『カレーメシ』(を登場させる)という(笑)」と、イメージを組み立てていったことを明かす。
“ラー”のMV自体が、日清食品の『カレーメシ』とのコラボという側面もあったが、コムアイは「商品の広告っぽくMVを作ることは先方にとってイメージが悪くなると思ったんです。だから、とにかく遊び倒した感じにしようと。日清さんもすごく理解があって、自由にやらせてくれました」と、制約なく取り組めたことを強調。
児玉監督も「コマーシャルとミュージシャンが組む時って、センシティブな問題が多いと思うんですけど、僕は水曜日のカンパネラが大企業を手玉に取っている感じにしたかったんです。
『カレーメシ』というブランド自体も結構遊んでる感じがしていたので、お互いふざけてよく分かんない感じになってるようにしたいなと。“ラー”の曲をリミックスしてCMを作るって話もあったので、元のMVは相当壮大にして、後から壊しがいがあるものにしないとダメだなと思ったんです。
そういう話をコムアイさんと最初に打ち合わせできたんですが、『なんて賢い人なんだ!』と思って。そこで水曜日のカンパネラが今までやってきたことや、今回僕に依頼してくれたことが全てふに落ちた感じでしたね」と、全体を見渡せるコムアイの発想力を絶賛していた。
“ラー”のMVは古代エジプトを想起させる世界観だが、児玉監督は「(その世界観で描くに当たって)本当に、マイケル・ジャクソンのMVを作るつもりでやりました(笑)。マイケル・ジャクソンの“Remember The Time”っていう金字塔があるので」と、意外な参照元を暴露。
その上で「今これをやってしっくりくるのはコムアイさんしかいないんですよ。きょう僕が一番言いたかったのはそれです! 現場にいる奴隷の人たちも、完全に女王として崇めてましたからね(笑)」と、コムアイのスター性を褒めたたえた。
また、コムアイは「カレーメシのパッケージにお米が書いてあって、『ここに座らせてください!』って言ったんです。よくお月さまに座るシーンがあると思うんですけど、あれをお米でやりたいって」と、特にこだわった部分を明かした。
多くの楽曲でMVを制作している水曜日のカンパネラだが、「MVで遊ぶ意義」を聞かれたコムアイは「正直私はCDを売らなくても良くて、MVを作るために音楽をやっているところはあるんですよね。アートワークとグッズとMVを作るのが楽しみで始めたんです」と、加入したいきさつを交えて告白。
続けて「今までいろんなアーティストのMVを見て養われたものもあったので、これからいいものをどんどん世に出すことで誰かに影響を与えるかもなと思うとすごく楽しいし、だとしたらポジティブなパワーを込めたいと思ってやってます」と、MVに込めた思いを口にした。
一方、自らMV制作を行う山田監督は、「オリコンなどのチャートやテレビの音楽番組より、YouTubeでMVを見て曲を知るという機会が増えてるかなと思うんです。動画サイトが貴重な音楽を知る場である以上、MVは絶対に必要で。
数年前、MVの予算が減ってるっていう評論があったんですけど、今またMVが盛り上がってきているので、すごくいい場所だなと。若い人もいるし、ベテランの人たちも交えていろんなチャレンジができるし、今一番面白い場所なんじゃないかと思います」と率直に語った。
児玉監督も「同じ1分間の映像っていう意味では、100円で作ろうが1億で作ろうがどちらが面白いかは分からないじゃないですか。確かに『ネタは出尽くした』と言われるんですけど、昔と見ている媒体も違うし、コムアイさんのような『見たことない生き物』が出現したりすると、やっぱり違いますよね。
そういう意味では、日本のMV界に水曜日のカンパネラの出現っていうのは大きいんじゃないでしょうか。しかもそんなアーティストが『MV作るために曲を作っている』なんて言ってくれたら、僕たちもうれしいですよね」と、あらためて水曜日のカンパネラのスタンスを歓迎した。
なお、当日の模様は3月27日(日)スペースシャワーTVにて放送の「TOKYO MUSIC ODYSSEY 2016 SPECIAL」内でも紹介される。奥深いMVの世界を知るきっかけとして、彼らのトークに耳を傾けよう。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)