旧日本兵の恩赦に尽力 画家・加納莞蕾の足跡を追う

2016/03/22 22:04 配信

加納莞蕾(左)とエルピディオ・キリノ元大統領(右、ともに故人)

加納莞蕾(左)とエルピディオ・キリノ元大統領(右、ともに故人)

BSS山陰放送が開局記念報道特別番組として「『許し難きを許す』~フィリピン収監旧日本兵帰国の陰で~」を制作、3月23日(水)夜7:56~8:55に放送する。同番組は、戦犯としてフィリピンで投獄された旧日本兵の助命に尽くした、島根県出身の画家・加納莞蕾(かんらい、1904~77年)に迫ったドキュメンタリー。

番組の制作ディレクター・齊尾和之氏(同局テレビ総局報道部)は、加納莞蕾の四女で加納美術館(島根県安来市)館長を務める佳世子さんが昨年書籍「画家として、平和を希う人として」を発刊したことが企画の発端だと明かし、「これを期に加納莞蕾という画家の功績を広く知ってもらおうと企画した」という。

加納莞蕾は、旧日本兵の釈放を訴える書簡をフィリピンのエルピディオ・キリノ大統領(当時)に43通も送り続けたほか、ローマ法王らにも「恒久平和」を求める書簡を送付するなど、助命嘆願活動を展開。その結果1953年、キリノ大統領の決断によって、死刑囚を含む旧日本兵108名が減刑・釈放されることとなった。

キリノ大統領への43通を含む総数228通もの嘆願書を書き、要人に送ったその熱意について、齊尾ディレクターは加納莞蕾本人が従軍画家として戦争を体験したことに加えて、同郷の特攻隊司令官だった元海軍少将の存在が大きいと解説する。「この元海軍少将の『未来ある青年を死に追いやったことは自分の負うべき罪であろう。このことが日本国民にじゅうぶん反省されなければ、再び日本を正しめることはできん』という言葉に感銘を受けた加納莞蕾は、その後元海軍少将が戦犯に問われ死刑判決を受けたことをきっかけに、嘆願活動を始めます。このことと、自身の戦争体験から得た考えから、世界平和を求める思いが強まり、長年の活動を続ける原動力となったのだと思います」(齊尾ディレクター)。

番組制作の過程で、キリノ元大統領の孫、ルビー・キリノさんにもインタビュー取材を実施。それをきっかけに、ルビー・キリノさんと加納佳世子さんとがメールで交流するようになり、昨年11月の「キリノ元大統領生誕125周年記念式典」に佳世子さんが招待されることになったという。

最後に、番組の見どころについて齊尾ディレクターはこう語った。「何より注目していただきたいのは島根県安来市という地方にいた画家の訴えが、一国の大統領の決断に影響を与えたであろうという事実。莞蕾の肉声や関係者のインタビューでひも解きながらその足跡をたどっています。そしてこの2人の男性が築いた交流が、長い時をへて娘と孫へと繋がる。2人の初対面のシーンは見どころです。そして番組終盤、加納佳世子さんが父・莞蕾が語った”国際交流”についてのインタビューでは、人と人とのつながりが希薄になりつつある現代に生きる私たちにとって、とても意義ある考えが語られています。ナレーションは俳優の大杉漣さん、重厚で雰囲気のある番組に仕上がりました。フィリピンに収監された旧日本兵の帰国の陰にはこんな話があったのだということを知っていただければ幸いです」。

「『許し難きを許す』~フィリピン収監旧日本兵帰国の陰で~」
3月23日(水)夜7:56~8:55 BSS山陰放送(※ローカル放送)
ナレーション:大杉漣

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