'15年12月に公演された「幽悲伝」がDVD化され、4月2日(土)より発売が開始される。
本作は、古事記に記された「イザナギとイザナミ」の冥府来訪譚をベースに、大和国大王の息子である海里と都月が、思いを寄せる幼なじみ・陽向の政略結婚により引き起こされた国の存続を脅かす惨事に、それぞれが立ち向かっていく姿を描く。
劇作家・末満健一が、'15年10月から11月にかけて公演されたDステ17th「夕陽伝」用に書き下ろし、連鎖公演としてPatch版の「幽悲伝」も上演されることに。「夕陽伝」は岡村俊一が演出を担当し、本作では末満が演出を担当した。同じ脚本でも「夕陽伝」とは全く異なる結末を迎えることになる「幽悲伝」がついにDVDで楽しめるようになった。
今回、劇団Patchの劇団員で、兄・海里に劣等感を抱き、陽向にいちずな恋心を持つ弟・都月を演じた松井勇歩にインタビューを敢行。「幽悲伝」の見どころや都月の人物像に加え、劇団Patchに対する思いを明かした。
――「幽悲伝」公演後の感想は?
嵐のようでした(笑)。今回の舞台は特殊で、普通1カ月くらいの稽古を4カ月やっていたので、逆に本番が始まることの実感がなくて、けど始まったら始まったで気付いたら終わっていたなぁっていう感覚でした。(大阪・森ノ宮ピロティホールは)これまで4年間そこでやることを目標の一つにしていて、ずっと立ちたかった舞台なので、そこに立てたときの壮大さに感動して、せりふ飛びそうになりました(笑)。
――都月を演じるに際してどんな人物像を描いてましたか?
最初は都月って一番わがままやなって思いました。都月は兄に対して定めがどうとか、決まりがどうっていう話をしているのにもかかわらず、どこかでそれを認めてない自分がいて、だから兄上さえいなければという言葉が出てきてしまう。わがままで子供で実は海里の方がちゃんと考えているんじゃないかなって。僕たち劇団のオーディションで役が決まったんですけど、僕はもともと都月を狙ってたわけじゃなかったんですよね。
だけど、読み合わせでメンバーといろんな役を読んでいた時に、都月が好きになって、僕が「幽悲伝」を見に行くなら「都月が一番好きやな」って思うだろうなっていう感情が出たんです。オーディション終わって、都月役に決まったときは、自分が本を読んだ時に都月を好きなった気持ちをそのままお客さんに持ってもらうのが一番大事やなと、僕を通すことで都月をより好きになってもらえるように意識しました。
――ご自身とDステ版の宮崎(秋人)さんの演じる都月との違いは?
そうですね、見たときにまず都月の役に対するアプローチが違うんだろうなって思いました。「夕陽伝」を見たときに、僕がやっていた都月とは別の都月で、「あ、パクろう!」って思った瞬間もありました(笑)。僕の方が後出しになるので、ええとこパクって、自分の良さを出したらいけんなって思いながら見てました(笑)。(演じる)人が違う、演出家が違うだけでその役が全然違う役になるんやなとも思いましたね。
秋人くんの都月は陽向に対する思いや、声の掛け方がすごい繊細で、女の子からしたらキュンキュンするような、いちずにどんな状況になっても日向を思ってるっていうのがあって、そこが僕はちょっと違う方で作っていたと思います。僕は(陽向のことが)好き過ぎて普通の人がついていけない、「あいつちょっとやばいんちゃう?」っていうようなアプローチの仕方をしていたので(笑)。
――都月は感情の起伏の激しいキャラですが、演じていて大変だったところはありますか?
僕、末満さんに昔から「全部一辺倒」って言われていて、それで今回も「(松井は)怒る時は、一個の怒り方しかない、泣く時も、一個の泣き方しかない。でも、普通生きてるんやったら怒る感情でもいろんな怒り方がある、ためて怒ったり発散して怒ったり。そこが都月はないと、何の魅力も都月には感じない。兄にきつく言う時とか、陽向のことで落ち込んだりとか、すごい繊細にやらないと都月をやる意味はない」って末満さんに言われていて、そこはめっちゃ苦労しました。
――兄・海里を演じる村川(勁剛・けいごう)さんの印象は?
いろんな人に言われるんですけど、どちらかというと内面は逆の性格で、僕の方が海里みたいにちゃらんぽらんな性格なんです、普段(笑)。それで村川の方が、Patchのリーダーだし真面目なので、今回あえて末満さんがチャレンジさせてくれました。お互いがお互いを探り合ったりはしました。僕は村川を見て「何を都月っぽいっていわれてんねやろ」、逆に村川は村川で「あれ海里っぽいなぁ」っていうのをお互いやってましたね(笑)。
一緒にいる時間は一番長かったのでめちゃめちゃ言い合ってました。僕は思ったことをバーッて言っちゃうタイプで、村川はどちらかというと受け止めるタイプで、そういうところも役とは結構逆だったりしました。けんかも多くて(笑)。殺陣とか「なんでできへんねん!」って言われて、「でも俺かて頑張ってんねん!」とかいうけんかはありました。そういうところは(劇中の)序章のところに生かされているかも(笑)。
――殺陣はやっぱり大変でしたか?
あ、それも特殊で、僕たちの方って、(毘流古(ひるこ)役の)三津谷(亮)さんに12月から入っていただいたんですけど、僕らは9月から稽古してたんですよね。だから、都月に専念して通しで殺陣の稽古をしたのが12月からだったんです。
それまでずっと(いろんな役の)代役をしていて、5役分くらいやってましたね。だから誰かの役で死んだら、他の役として出てきてっていうのをずっとやっていて、都月の殺陣だけで考えたら、いつの間にか頭に入っていたっていう感じです(笑)。
――今後どのように活躍していきたいですか?
やっぱり、Patchとしてありがたいことに、この公演とか、特に東京から(大阪に)見に来てくださるお客さんとかたくさんいらっしゃって、あと、先輩であるD-BOYSさんと同じ舞台をやることでPatchを知ってくださった方も多くて、「東京でもやってください」ってすごく言っていただけたので、大阪を拠点にはしているんですけど、大阪以外でも公演をしていきたいというのが次の目標ですね。
もっとたくさんの方に「東京でやってよ!」「○○でやってよ!」って言われるような劇団にしていきたいです!
瀬戸康史が主演を務めるDステ版の「夕陽伝」はすでに2月より発売中。今回4月2日(土)より発売される「幽悲伝」と合わせて、同じ脚本でも、演出と演者によって全く違う結末を迎えることになる“2つのユウヒデン”を見比べて楽しんでみては。
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