先日、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門への出品が正式決定した、是枝裕和監督最新作「海よりもまだ深く」の完成披露試写会が4月24日、丸の内ピカデリーで行われ、舞台あいさつに阿部寛、真木よう子、吉澤太陽、樹木希林、是枝監督が登壇した。
同作は、笑ってしまうほどの駄目人生を送る自称作家の中年男・良多(阿部)と元家族が、良多の母・淑子(樹木)の家にたまたま集合し、台風のため翌朝まで帰れず、偶然取り戻した一夜限りの“家族の時間”を過ごすさまを描く。
嵐が過ぎればまたそれぞれの日常に戻ると分かっている彼らの思いが交錯し、“海よりもまだ深い”人生の愛し方を教えてくれるヒューマンドラマとなっている。
舞台あいさつは、“休日出勤”のフジテレビ・笠井信輔アナウンサーの司会で行われた。
主演の阿部は「僕は是枝さんの映画これで3本目だったのですが、ここまで駄目駄目な男を演じるのはこれが初めてです(笑)。でも、こういう男ってどこか憎めなくてかわいいなと思いながら自分で楽しんでやっていました」と、あいさつ。
そんな駄目な男に愛想を尽かして離婚した元妻役の真木は「私はとても大好きな作品になったので、今、見られた皆さんがうらやましいです(笑)。それくらい大好きな作品です」と胸を張った。
2人の息子・吉澤は約2年前の撮影時まだ小学生だったそうで「今日はありがとうございます!」ときちんとあいさつができると、笠井アナも「あの太陽君ですか?」と驚いていた。
そして、阿部演じる良多の母役の樹木は「阿部寛君のような、似ても似つかない息子を生んだ母親役の樹木です。ありがとうございます」と柔和な笑みを浮かべた。
その後、笠井アナから、カンヌへの正式出品があらためて発表されると大歓声が起こる。
「そして父になる」('13年)、「海街diary」('15年)に続き、3作連続でのカンヌ出品となった是枝監督は「本当に特別な場所なので、スタッフ・キャストとその時間を楽しめるといいなと思います。本当に、皆さんの人生に起きる出来事程度の事で作られた小さな物語だと思うんですけど、そういうものがああいう映画祭で上映していただくというのはとても誇りに思います」と、感慨深い表情で感想を語った。
これまで、そんな世界の是枝監督作品に毎回出演している樹木は、その理由について「義理でね」ととぼけ、キャスト・観客は大爆笑。2度目の“カンヌ”については「こんな小さな団地を世界のバイヤーが見てくれて、感じてくれて、買ってくれて、またその国で上映されるというのは、何か“根回し”してもできることではないので、すごいありがたいことだなっていうふうに思っています」と、樹木節で喜びを語る。
意外にもこれが初のカンヌだという阿部は「うれしかったです。監督からメールをいただいて。カンヌなんて場所に行けるなんて…プライベートでは行ったことがあるんですけど、それをこの作品で行けるというのは誇りに思いますね」としみじみと語ると、すかさず樹木が「ねえ、誰と行ったの?」と鋭いツッコミを。これには観客も爆笑する中、阿部も苦笑いを浮かべながら「映画の撮影で、休みの日に行きました」と答えていた。
海外の観客へ向け、「団地の狭い空間の中で撮影をやったんですけど、撮影するにも小さな部屋だったんで、もうぎゅうぎゅうになりながら撮影していて、その距離感も面白かったですよ。それがどのくらい海外の方に笑っていただけるか、通じるかというのが楽しみです」と、意気込みを語る。
カンヌ経験者としてアドバイスを求められた樹木は、阿部に「他(の映画祭)はどこへ?」と質問。阿部が「モントリオールとかです」と回答すると、樹木は「じゃあ、まあ似たようなもんだね。団地のあそこにカーペット敷いても一緒だから」と、大映画祭をひとまとめにする、大物らしい助言を。
さらに、止まらない樹木は「うちの息子(阿部)はね、世が世ならね、あんな小さな団地のお風呂じゃなくてローマ風呂に入っていた(『テルマエ・ロマエ』)んだからね。エベレスト(『エヴェレスト 神々の山嶺』)にも行っているんだから! よくあの団地に入ったわよ。うちの息子はすごくいいの。(作家として)芽が出ないのは世間が悪い。と、母親は思っております」と、すっかり母になり切って“息子愛”を語り、会場は再び大爆笑に包まれた。
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