元くるり・吉田省念が「完全宅録」の新作について告白!

2016/05/16 06:00 配信

音楽

6年ぶりにアルバムをリリースする吉田省念

くるりのギタリスト・吉田省念が、5月18日(水)に6年ぶりとなるソロアルバム『黄金の館』をリリースする。それに先駆けて、吉田本人にインタビューを敢行。前編では、アルバム制作の経緯や、京都の音楽シーンなどについて語ってもらった。

――今回、満を持してといえるアルバムが完成されましたが、発売を間近に控えた今の率直なお気持ちは?

(アルバムをリリースできて)もう本当にうれしい限りですね。不安と期待で、どうにかなりそうですけど(笑)。ホッとするというよりかは、これを作ったことで次に行けるなというか、そういう喜びが大きいですね。

――'13年までくるりのメンバーとして活動されていて、そこから今回のアルバムをリリースされるまで約3年という月日がたちましたが、具体的に今回のアルバム制作のお話がスタートしたのはいつごろでしたか?

くるりを辞めてすぐ、レコーディングの機材を用意して、録音も含めて自分でやっていたんですが、全部自分でやっていると煮詰まってしまって。「うまくいかないな~」って悩んでいたんです。

そんな時に、エンジニアの尾之内和之さんと再会したり、(今作の多くの曲でドラムを演奏した)伊藤大地くんと偶然にも予定があって、ウチのスタジオまで来てくれるってことになったりと、トントンとリズムがついて、レコーディングに入ったのが'15年の2月ですね。

それまでに、'14年にアコースティックのセッションアルバムみたいなもの(四家卯大、植田良太とのセッションの模様を収録したライブ盤「キヌキセヌ」)も自主制作で出していて。

そこには(今回のアルバムの収録曲と)同じ曲も入っていたんですが、あくまでも「アコースティックの、3人のメンバーで演奏したもの」という思いがあったので、正式に自分のソロの作品として、曲ができた時のイメージに忠実に、深く追求してやりたかったっていうのはあったんです。

そのため、どうしても時間はかかってしまったんですが、見方を変えると、さまざまな要素を詰め込んだり、試行錯誤しながらいろんな実験をやった分、次に行くイメージっていうのは割とすぐにできました。長く作った分、(自分なりの)やり方っていうのが見えたことは大きいですね。

――アルバムの制作は、かなりご自宅でも作業されていたとのことですが。

はい、自宅でしかやってないです。全部宅録です(笑)。宅録でこういう感じっていうのはなかなかないと思いますね。打ち込みだったらあれですけど、全部生演奏でやっているので。そういうところも聞きどころではあるかもしれませんね。

――現在京都にお住まいということで、ライブも京都でされることが多いと思いますが、東京と京都で音楽シーンの違いを感じることはありますか?

あ~…、あります(笑)。京都は…何て言ったらいいのかな。

――東京にいる人間からすると、京都の方々はすごく自由に、ご自身の表現を突き詰めている方が多いというイメージがありますが…。

あ~、そういう人は多いですね。自分の営みとともに音楽が存在しているという感じで、活動を続けてらっしゃる方も多いですし。中には野望を持っている人もたくさんいるとは思うんですけど。

やっぱりどんな音楽でも、街の雰囲気だったりとか、そういったものの中から見て感じたことからできているものは多いと思うので、そういう(自由にやっているという)イメージ通りであるとは思いますね。逆に東京の人は…、演奏力が高いですね(笑)。やっぱりみんな、上手な人が多い印象です。

――では、仮に東京でずっと活動されていたとしたら、今回の作品はもっと違うものになっていたと思われますか?

どうなんだろうな…(笑)。東京で、ですか。まあ東京に何年も住んだことがないので、分からないところはありますね。くるりの活動をしていたころは、こっち(東京)に長期で滞在することは多かったですが、生活をするというよりかは「音楽と向き合う」ということでいっぱいいっぱいだったところもあるので。

けど、東京っていう街にはすごく興味がありますし、好きですけどね。面白い人も多いですし。(東京で制作していたら)また質感が違うのかな? ちょっと言葉ですぐには言い表せないですけど。

――今回の作品は「完全セルフプロデュース」と銘打たれていますが、これまで他のアーティストの作品に楽曲提供やプロデュースといった形で制作に関わられたことはありますか?

ないですね。友達のバンドに参加するとか、そこでレコーディングに参加するっていうことはありますけど、そこで指揮を執るようなことは、具体的にはやったことがないです。まあでも、やってみたいですけどね。何かこう、(自分のプロデュース作品として)形にできたらいいですね。

――「自分の作品をプロデュースする」という視点で楽曲を捉えた時に、これまでと楽曲に対するアプローチに違いはありましたか? バンドの一員として曲を作る場合と、今回のようにご自身の名義で楽曲を作る場合では、アプローチも変わってくるかと思ったのですが。

まず、自分のことなので自由ですよね(笑)。ただ、気を付けなければいけないのは、自分のスタジオで自分の音源をやっているので、とりとめなくなっちゃうというか。そこはひとつ、グッと地に足を着けておかないと、突き詰め過ぎて作業が終わらなくなってしまうので。

人と一緒にやる良さっていうのは、その(一緒にレコーディングをする)人がいることで自分の鏡になってくれるところがあって。全部を自分一人でやっていると、曲のいいところを見つけるっていうことがなかなか難しいですし。

なので、(レコーディングした音源を)客観的に聴く時間と、自分が演奏や制作に没頭する時間というのが、ちょっと違う形で必要だったというのはあったのかなと思いますね。

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