村上弘明、“汚れ役”は「非常にしんどかった」
5月28日(土)夜9時から放送のドラマスペシャル「ゴールドウーマン~巨大銀行の闇とたたかう女~」(テレビ朝日系)で、主人公・吉沢環(小雪)に命じられ、退職勧奨を行う菊田祐介を演じる村上弘明にインタビューを行った。
――今回演じられた菊田は退職勧奨するという苦しいポジションでしたが、演じられていかがでしたか?
しんどいですねえ。非常にしんどいポジションで、今までにないくらいしんどかったです(笑)。最初から最後まで悩んで押し込むような撮影でした。10年前の回想シーンでは、本社から子会社への出向が決まり、環と電話で「今日は残りの人生の最初の日だ」というやりとりをするのですが、言葉とは裏腹にそんなに前向きなシーンではないんです。
自分がもうルートから外されたということなので。でも、菊田はそんな苦境を非常に爽やかに切り返していて、このシーンがいい時代に見えるような気がします。それが10年たった菊田の状況は…悲惨なことになっています。現在の菊田は、旧約聖書でエイブラハムが自分の息子・イサクを殺せ!と言われて殺すような、殺さざるを得ない状況とリンクしますね。
ただ、やっぱりドラマですので、あまり重く沈んでやるのも違うと思うのでね。私の役はキーになるキャラクターなので、そこをどう表に出さず、さりげなくやるかというのを気を付けました。
――なるほど。退職勧奨しなければならない立場を演じる上でも、そこまで暗くなり過ぎずに演技されたということですね。
どうあっても部下を解雇するのは変わらないですけど、重くやるよりむしろ自分が恨まれてもいい、恨まれた方が本望だというくらいの気持ちでやろうと。それで少しは憂さが晴れるのであればやってくれという思いでやったんです。なので、ある意味、菊田ならではの憎まれ役になっていると思うし、憎まれる雰囲気を出していければいいなと思っています。
――退職勧奨をする役目の方はどこの企業にもいると思いますが、もし村上さんがそういう立場だったらバッサリできそうですか?
私は抱え込めるなら抱え込みたいです。でも、それは抱え込まずに言わないといけない仕事なので、スパッと言うでしょうね。いろんな形容詞を使ってごまかさずに、最初に結論を言ってあげたいです。相手との関係性にもよりますけど、呼び出して対面したところで相手も何かを感じるだろうし、こっちも察知すると思います。そうしたら言い方もいろいろ変わってくるでしょうから。
――新人教育を担当した環(小雪)が退職勧奨の役目を命令したことについてはいかがですか?
自分の教え子が、10年後に自分の上司になって過酷なことをいろいろと言ってくるのですから、まるで鉄面皮のような女性だなと思いました。でも、菊田は相手のことを思って、相手がそれを受けてどう思うか考え、最終的にはどうやって違う道で生きていけるかということを模索してあげる優しい人。
何ならそれこそが自分にとって一番切る人たちにできることだと思うような人ですから。ただ、その中には死んでしまった人間もいて、最終的に自分がああいう行動に出るのだなと思います。
――環に言った「今日は残りの人生の最初の1日だ」という言葉で自分も救われたりしますしね。
そうですね。巡り巡って自分が救われました。環にかけた言葉が彼女の胸にずっと残っていて「菊田さんのこの言葉で救われたんです」って言われて、あ、そういう時もあったんだと思い、自分に課せられた使命というものがあるんじゃないかと思い直す。
もう一度新たなことに挑戦していきたい、そういう道を見いだして終わるわけですから、あの言葉はドラマの中で大事な役割を果たしていますよね。
――小雪さんと鈴木保奈美さんの印象は?
鈴木さんとは共演シーンがなかったので、台本での印象しかないのですが、鈴木さんが男を操作する女性を演じるというのは面白いんじゃないかなと思いました。小雪さんの方はとにかく血も涙もない感じでどんどん解雇を告げていき、解雇される人たちの思いを受け止めず、上から言われたことを実行しているのですが。それが彼女の使命なので、彼女はちゃんとキャラクターとして演じ切っていたと思いました。
――タイトルの「ゴールドウーマン」はどんなイメージですか?
それは…何なのかよく分からないです。何がゴールドなのだろうって(笑)。ただ、ゴールドというのは希少価値ですよね。社会的にあのポジションに行けるのもまれな存在で、仕事を全うしていくことも大変なので、二つ合わせて、“とてもまれな女性”ということになるのかな?と思いました。
社会でも、やはりどこか情みたいなのもが普通なら出てくるだろうと思うのですが、戦いの中では情をかけたら負けなんです。宮本武蔵のせりふにもありますが「情をかけた分、お主の負けだ」と。それを即座に自分の奥底に抑えて職務をまっとうする。これはなかなかできることじゃないんです。なので、やはりこれがゴールドウーマンなんだなと思いました。見方によっては極悪人に見えるかもしれませんが、それでもそれに耐えて生き残る。そういったメッセージも含まれているのかもしれません。
――そこが共演者・小雪さんと鈴木さんの見どころですね。
そうですね。理想的な会社では社員や家族ぐるみの付き合いで何かを成し遂げようとしているのですが、そういう中で躊躇せずにクビを切るというのはこういう思いなんだということを体現したのが菊田であって、そういった意味では菊田がいることによって、彼女たち二人(環と舞)の“鉄の女”ぶりが際立つんでしょうね。
そういった仕掛けのドラマになっているのかなと思います。最後まで楽しめる内容なので、ぜひご覧ください。
5月28日(土)夜9:00-11:06
テレビ朝日系で放送