声優初挑戦・染五郎「声で全てを表現するのは別世界」
公開中の映画「ポケモン・ザ・ムービー XY & Z『ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』」で、幻のポケモン・ボルケニオンの声を演じている歌舞伎俳優・市川染五郎にインタビュー。初の声優についての感想や、ポケモンの魅力を語ってもらった。
――オファーを受けた時にはどのように感じましたか?
自分にこのようなチャンスが巡ってくるということは想定外だったのでビックリしました。子供のころから「ポケモン」を好きな後輩がいて、彼の方がもっとビックリしていましたし、最近歌舞伎で共演した7、8歳くらいの子供さんも今まさにはまっている子だったので、彼らからの尊敬のまなざしが気持ち良かったです(笑)。改めて思い返してみると、誰もが知っていて、それだけ愛され続けられている作品に、自分が作り手側として参加できるわけですから、不思議な興奮を覚えました。
――初めて声優に挑戦してみての感想は?
舞台や映像作品ではさまざまな役を演じていますが、当然自分の体を使い、その体のサイズの中で役を作っていきます。アニメは最初から、それとは違う器を頂いて演技ができる、そういった面白さがありますね。逆にそれが難しい部分でもあり、収録前に監督から「大きさをイメージして芝居をしてみてください」と言われましたので、ただ振り向くだけでも、人間と比べると大変なしぐさになるし、息を吸うだけでも、その大きさを意識し、想像しながら演じました。声優の勉強をしているわけではないので、あくまで自分の感覚でやらせてはいただいてます。歌舞伎は、現実とはかけ離れた役を作り上げていくことが多く、生活感が役柄に出てしまってはいけないというのがあるので、そういう意味では声優に近いところがあるんじゃないでしょうかね。でも、声だけの演技は本当にプレッシャーでした。
――実際にアフレコしてみていかがでしたか?
難しかったですね。サトシ役の松本梨香さんに乗っかろうという感じでした。すでに歴史のある作品に初めて参加させていただくので、そのテンポ、色合いにうまくなじめればいいなと思いました。本職の方はやはりすごいです。声だけですからね、表情が見えないわけですから。声で全てを表現するというのは別世界だなと実感しました。(満足度は)監督に委ねるだけという感じです。「ポケモン」をずっと見られている方、携わっている方の中に入れていただくわけなので、調和を損なわないようにと思って演じました。
――「ポケモン」映画の魅力はどこにあると思いますか?
前向きさですよね。ボルケニオンにも暗い過去はありますけど、常に前進するという意志を感じますよね。だからこそ、いろんな壁をクリアしていく、前に進んでいく力強さ、進むことによって何かが達成できる、前を向いて進んでいくことの大切さを教えていると思います。自分が演じるボルケニオンの魅力は、怖い、強いだけじゃない愛嬌(あいきょう)がある。大きい割にはかわいらしいところも魅力です。
――どんな方に見てもらいたいですか?
当たり前ですけど、親子ですかね。子供に連れられて、子供のためというわけではなく、親は親の目線で、子供は子供の目線で。親自身のためにも見てほしいですね。僕の子供たちは“声優をやる”ということをまだ理解してないみたいなので、早く見せたいなと思います。
――映画を見にきてくれる方々にメッセージをお願いします。
ボルケニオンを演じるに当たっては、自分がどれだけ変貌できるかを考えて演じてみたので、“市川染五郎”と“ボルケニオンが発する声”に違和感を持っていただきながら、ギャップを楽しんでいただきたいです。ずっと愛され続けている作品に参加させていただけて、自分自身興奮していますし、まだ信じられない感じですが、今回の作品は、人と交ざり合うことはできないと背中を向けて心を閉ざしているボルケニオンが変わっていく、「絆」を強く打ち出した成長物語だと思います。バトルは激しいですが、そこに優しさを見いだしていただける作品だと思うので、この夏、興奮してさらに温まってほしいなと思います。
全国劇場にて公開中