フジテレビ系で放送中の“月9”ドラマ「好きな人がいること」(毎週月曜夜9:00-9:54)。
神奈川・湘南を舞台に、ヒロインの櫻井美咲(桐谷美玲)と、レストランを経営する3兄弟の柴崎夏向(山崎賢人)、千秋(三浦翔平)、冬真(野村周平)が繰り広げる恋模様を描いた本作は、夏らしいおしゃれなロケ地やレストランなども注目を集めている。
そんな作品のイメージをも左右する、セット制作を手掛けた美術デザイナー・安部彩氏に話を聞き、その魅力に迫る。
――千秋、夏向が営んでいるレストラン「Sea Sons」は、湘南の海が舞台となっている通り、非常におしゃれな内装ですよね。
ロケの海や空の映像が多いので、外と室内とのギャップをなくすため、窓を多くして外の明かりをなるべく取り入れるように作っているんです。そして、夏ドラマということで、爽やかなテーストを入れたくて、ところどころにブルーをポイントに使っています。
――確かに青色は目立ちますね。
このレストランには3兄弟の父親が一代で始め、湘南の人たちに愛されながら続けてきたアットホームなレストランを、訳あって今は息子たちが切り盛りしているという設定があるんです。
海を愛したお父さんが息子たちを育てながら経営していたレストランということで、ブルーをイメージを盛り込んだんですね。
だから、店名の「Sea Sons」(シーズンズ)には“Sea”“Sons”(海の息子たち)というダブルミーニングがあるんです。3兄弟の名前にも四季を入れていますし、さまざまな意味が込められています。
――なるほど! センターキッチンにはどんな意味があるんですか?
地元の人と会話しながら料理をするような、一軒家レストランのアットホームな感じを出すためです。例えば、地元の人からもらった野菜をその場で料理しながら会話していた、というイメージですね。
――キッチンの中の青い半円は?
これはピザ窯です。実は、美術スタッフがほとんど女性で…、男兄弟だけで営業しているお店の男性らしさを出す点では苦労しました。そして、あまりアットホーム過ぎずおしゃれな感じも出したいので、かなり試行錯誤しましたね。
このピザ窯も丸いとかわいらしいイメージになってしまうかもしれないという懸念もあったんですが、結局「ピザ窯といえば丸でしょ!」という話になり、美術スタッフで青いタイルをぺたぺたと手作業で貼って完成させました。
周りのスタッフからは「ドラえもん」って呼ばれています(笑)。でも、山崎くんは「地球みたいですね」って言ってくれたので、ぜひ皆さんもそう呼んでくれたら(笑)。
――ロケ先も評判になっていますね。外観やウッドデッキと内装がすごくマッチしていると思います。
監督が“海が見えるウッドデッキ”をロケ地として探していて、セットの製作中にあの場所が決まったんです。ロケ先とセットがうまくつながるよう、センターキッチンの奥にウッドデッキに向かう階段を作りました。
ロケでお借りしているウッドデッキにも、手すりやカウンターを付けたり、看板や洋風の家具を置いたりと手を加えています。
――美咲が居候している柴崎家も、古民家風ですてきですね。
「鎌倉といえば古民家」というイメージがあるかもしれませんが、普通の古民家ではつまらないので、3兄弟らしさを入れました。古民家をちょっとリフォームして、新しい感じがところどころに入っている感じがおしゃれに見えたらうれしいです。まさに「おしゃれ」がこの家のキーワードなので。
壁は木材のまま、天井もホームセンターで買ってきた板をそのまま張っているという設定で作ったら、そのコントラストが男性的な感じの家になっていい具合になったと思います。あとは、男の人ってガレージとかが好きじゃないですか(笑)。
そんなテーストを出せるといいなと思って、床もコンクリートのままにして、あえて土間を残しているんです。そこで靴も洗えるし自転車も直せる。いろんなお芝居ができるといいなと思ったんですよね。今後、活用していただきたいです!
――図面を拝見すると、中庭もあるんですね!
そうなんです。夏向と美咲の部屋で「ロミオとジュリエット」みたいな、高低差のある会話ができるといいなと。
夏向の部屋の窓から見下ろすと美咲の部屋が見えるというのをやってみたかったんですが、本当に美咲が窓の外を見ると、夏向がビールを飲んでいる…というシーンを作っていただき、ありがたいです!
第5話(8月8日放送)では、窓が開いた音がして美咲が「ちょっとそっち行っていい?」っていうシーンもあるんです。シェアハウスって部屋に入っちゃったら出てくるまで会えないというよりは、存在をお互い感じられるといいなと思って。
――美咲、夏向、千秋の部屋それぞれのコンセプトはどう設定されたんですか?
千秋はクールでおしゃれに、夏向はおしゃれだけど温かみを感じられるようにしています。きっと夏向はベッドに寝っ転がって空を見ているか、窓際で片膝を立ててビールを飲んでいる…監督からそんなイメージを言われたので、梁と天窓を入れました。
美咲の部屋は、昔、両親が使っていたけれどリフォームも中途半端なまま物置部屋になっているところを片付けたんだろうという設定。
でも、女の子がこの先住んでいくということであまり冷たくはしたくないし、美咲は等身大の女の子なのでおしゃれ過ぎてもいけない。千秋の部屋の床を濃い色にした分、美咲の部屋の床を明るくして、床に座って絵を描いていても温かみが出るようにしました。これから美咲の部屋もかわいく飾り付けられていく…でもかわいくと言っても、洗濯ロープで洗濯物干しちゃうような子なんで(笑)。そういう子が一生懸命やっているのがかわいく見えるようにしたいと思いました。
――それぞれの部屋の家具のこだわりは何ですか?
ベッドです。夏向はベッドの下が物置になるように高いベッドに、美咲はジタバタしてベッドにダイブしたときの勢いが出るように低くしました。千秋は一番普通ですね。
でも、何か一癖つけたいということで、千秋に「スター・ウォーズ」が好きという設定を加えて、その人形を飾ったんです。
いわゆる、インテリで不思議なお兄ちゃんキャラにありがちな趣味がないかと監督と相談していたら、映画とか、カメラ、時計とかにこだわっている人って周りにもいるよね…ってなりまして。
その中で一番好感度が高いのが「スター・ウォーズ」だという結論に至りました(笑)。
――Twitterでは、そのグッズを見つけてコメントされていた方もいらっしゃったので、大成功ですね!
愛される感じを加えられた、ということですね!「スター・ウォーズ」の人形を飾ってある本棚には多くの洋書を置いてあります。これは、研究熱心な千秋が海外の料理だけではなく、その国の歴史や背景も勉強しているという雰囲気を出したいからです。
夏向の部屋には料理の本がありますが、千秋の場合は彼のプロデューサー目線を表現しようとさまざまな種類の本を置いたんですよ。でも、「初めての和食」のような本はイメージと違うのでありませんよ(笑)。
――そういえば、冬真の部屋は…?
一応2階にある設定なんですが、土間の先にBMXとかを停めているガレージがあるということになっていて、リビングが冬真の居場所ということにしています。本来は自分の部屋から出てこなそうな性格なので、土間に冬真の好きそうなスプレーやスケボーを置いて、リビングに冬真がいても不自然じゃない空間を作っています。
リビングをストーリーの中心にしたいので、部屋、玄関、お風呂、どこに行くときもリビングの前を通らないといけないような作りにすることをこだわりました。美咲の部屋からリビングの明かりがついているのも見えるし、リビングからも美咲が帰ってきたのが分かるので、ちょっとドラマチックになりそうですよね!
――リビングの頭をぶつけるでっぱりが?
日本家屋のルールでふすまと障子って、鴨居と敷居があるんですが、そうすると、ここにどうしても柱がないとおかしいんですけど、昔の人は邪魔だって切ったときは、ああやって“つり束”として残すんですけど、昭和初期のころに比べ、現代人の皆さんは身長が高いのでぶつかっちゃうんです。
慣れてる柴崎家の三兄弟はスッと避けるのですが、美玲ちゃんはよくぶつかってしまうという、ちょっとかわいらしいシーンもありますよ。
安部氏が語ってくれた通り、セットの細部にもこだわりドラマの世界観が演出されている本作。今後、セットの小道具などにも注目して見てみると、新たな楽しみ方が発見できるかもしれない。
そんな話題沸騰中の「好きな人がいること」。8月1日(月)放送の第4話は、目覚めた美咲がリビングに行くと誰もおらず、テーブルの上に“釣りに行ってくる”と千秋のメモが残されていた。
釣りの真っ最中、冬真は彼女がいながらも、先日会った愛海(大原櫻子)が気になっていると千秋に話す。
あきれる千秋に、冬真は「兄ちゃんこそ!」と美咲のことを聞くと、千秋は美咲のことは真剣に考えていると意外な言葉を口にする。そんな千秋に夏向は無言、冬真は夏向の美咲への気持ちにも興味を抱くことに。
一方、レストラン「Sea Sons」で美咲が開店準備をしていると、楓(菜々緒)がやってくる。そして、楓は千秋への気持ちは譲らないと美咲につ突き付けて帰ってしまうのだった。
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