大河ドラマ「真田丸」(NHK総合ほか)では、豊臣秀吉(小日向文世)の死後、石田三成(山本耕史)と徳川家康(内野聖陽)の対立が描かれている。8月21日放送では、三成が家康の襲撃を計画するも未遂に終わった。そして、8月28日(日)放送では、三成とすれ違いを続ける加藤清正(新井浩文)や福島正則(深水元基)が、逆に三成襲撃を企てる。
そんな福島正則を演じる深水元基を直撃し、大河初出演の感想や同じ秀吉の子飼いでありながら三成と袂を分かつ正則の思いなどを聞いた。
――まずは、大河初出演ということで、出演が決まった時の感想はいかがでしたか。
単純にうれしくて、すぐ親に報告しました。驚いていましたが、すごく喜んでもらえました。
大河はやはり、すごく芝居の上手な方が出られるというイメージでしたから、緊張は感じました。現場に入ってみると、他のドラマとは違うことも多くて、例えばリハーサルも(本番と)別日にきっちりとやるのですが、皆さん浴衣などを着て臨まれるんですね。僕は持っていなかったので、「さすが大河だな、そういったものも必要になるのか」と思って。「(自分の知らない)暗黙のルールなどもあるのかな」とドキドキしながらリハーサルを迎えました。
――今回演じる福島正則はどのような人物として捉えましたか?
役をいただいてから調べてみると、酒にまつわる失敗が多いんですね。大事なやりを取られてしまったり、家臣殺してしまったり。最初はむちゃくちゃな人だなという印象でした。
――台本を読まれて、印象は変わりましたか?
最初の方だと、少しずつしか出番がなかったので、“(同じく武闘派の)清正との差は何かな”というのを考えながらやりました。僕としては、清正は一回考えてから行動できるのですが、正則はもっと猪突猛進というイメージでした。なので、複雑な芝居はせず、怒っているシーンならずっと怒っていようというふうに芝居をしました。
それから、今回は正則の若いころから演じるので、活きのいい感じ、イキっている感じを出したくて、とにかくキャンキャンほえていこうと思いました(笑)。
――同じ豊臣恩顧の三成と次第に敵対していくことになりますが、そこに至るまでの正則の思いはどのように想像しましたか?
33回(8月21日放送) で、寧様(鈴木京香)に三成と家康どちらに味方をすればいいのか聞きに行くシーンがありましたが、彼女に言われた通り、家康に付くことが豊臣家のためになるのならば…と思って、迷うことなく進みます。
三成とは昔から馬が合わなかったのだと思いますが、正則はその判断に情は持ち込まない男だと思います。とにかく一本気な男なんです。
――これまでもずっと、清正・正則と三成のすれ違いが描かれてきましたが、どのように3人の関係を見ていましたか?
清正は、「一緒に酒を飲もう」と誘うこともあって、三成と分かり合いたいという思いがありますよね。あっさり断られていて、それが面白いんですが(笑)。ただ、正則の方は理解し合うのを諦めていて、「あいつとは飲む気にもならない」という感じだと思います。お酒でコミュニケーションを取るのもそうですが、どうしても正則たちは体育会系のノリですし、三成はそうではないですからね。
――大酒飲みのイメージがある正則ですが、やはり正則を演じるに当たって酒は重要なアイテムになりましたか?
そうですね、最初も大きな枡で酒を飲むシーンがあって。もちろん水でしたが、2リットルくらい飲みました。ただ、酒豪ぶりを見せるシーンはそれくらいです。
一応、腰には瓢箪(ひょうたん)が付いているのですが、「これ、いつ飲もうかな」と思いながら、一回も飲めずにいるんです(笑)。襲撃前の廊下のシーンでも飲みながら歩きたかったですし、悲しくても怒っていても飲んでいるというのも面白いかなと思ったのですが、今回は、他のところで正則らしい豪快さが出ればいいかなと思ってやっています。
それから、正則は、宴会に参加して徳川に付くことを決めます。もちろん、きっかけは寧様の話なのですが、最終的には酒を飲んでコミュニケーションを取れたということが正則の中で大きいのではないかと感じました。
――豊臣恩顧の正則ですが、秀吉のことはどのように見ていたと思いますか?
昔から知っている間柄ですが、あの秀吉ですからやはり怖いですよね。でも、正則は「秀吉さんは多分こういうことを考えて、怒ってみせているのだな」と、秀吉の腹の底まで理解することができる人間だと思います。ただ、それは絶対に表には出さないし、出せないと思います。話せるのは、奥さんくらいじゃないですかね。
――小日向さんが演じるのを近くで見ていて、どのように感じましたか?
小日向さんは実際にこんな人なのではないかと思って、普段の小日向さんも怖くなってしまいました(笑)。本当はすごく優しい方で、最初のころの秀吉みたいにフランクな方なのですが、途中はどちらが素なのか分からなくなるくらいでした。
――今後接近していく家康については、正則はどのように見ていたと思いますか?
豊臣を守ることを一番に考えているので、徳川なら秀頼を守ってくれると思ったんだと思います。
ただ、そのあとで家康自身にもほれ込むでしょうし、奥さんももらいます。そうやって絆が深まったことで、豊臣への恩はもちろん忘れませんが、徳川とのつながりも重要なものになった。それは生き残りのための計算ではなくて、自然とそうなったというのが、正直なところだと思います。
毎週日曜夜8:00-8:45ほか
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