【試写室】「科捜研の女」土門刑事の“矜持”に震える
毎週木曜に放送中の沢口靖子が主演を務める木曜ミステリー「科捜研の女」(毎週木曜夜8:00-8:54テレビ朝日系)。初回、第2話共に視聴率10%(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)を超える安定した数字を残す同作で、10月29日(木)の第3話では“シリーズ最強の女刑事”佐妃子(池上季実子)が関係する事件の真相を追う。そんな第3話を一足先に試写で見て、見どころを紹介する。
ストーリーは、京都市内に住む無職男性・岩清水(高木万平)の死体が、川のほとりで見つかる。マリコら科捜研による検視、鑑定の結果、石などの固い凶器で頭部を殴打され殺害されたことが分かる。
岩清水は4年前に大量の乾燥大麻をお茶に偽装してブラジルから日本に持ち込み、3年の実刑判決を受けていた人物。しかし、母の悦子(円城寺あや)によると、岩清水はブラジルに語学留学中、現地で親しくなった知人からお茶を購入しただけで、中身が大麻だとは知らなかったと話していたという。
直後、川の中から岩清水のスマートホンが見つかり、前歴のある男の指紋が検出された。その男は市内で空調設備会社を営む松木(川野直輝)で、3年前に彼を傷害罪で逮捕したのは、他ならぬ佐妃子だった。
土門刑事(内藤剛志)が聞くと、佐妃子は薬物の一斉摘発の際、現場近くでけんか騒ぎを起こしていた松木を逮捕したが、そのあとは担当部署に引き継いだため、よく覚えていないと話す。
土門らは、松木の恋人・今西舞(渋谷飛鳥)の部屋を張り込み、現れた松木を任意同行。被害者のスマートホンに指紋が付着していたことを問いただすと、松木は落ちていたスマートホンを拾い、壊れていたため川に捨てただけだと主張するのだが…というもの。
本作はシリーズ17年目に突入する長寿ミステリードラマだが、実際の捜査現場の技術の進歩に伴い毎シリーズ新しい科学捜査の手法を見ることができる。
例えば、第3話では水没物指紋検出、成傷器鑑定、残留血液DNA型鑑定、足跡鑑定など。警察関係者ですら一目置くほどのさまざまな最新科学捜査技術を惜しげもなく披露しており、他の刑事ドラマのようにストーリーを追うだけでは味わえない楽しみ方ができる。
そんな第3話のキーパーソンは今シリーズから新メンバーとして加入した佐妃子と蒲原(石井一彰)。佐妃子の個人的に好きなシーンは、佐妃子がマリコの目元のクマが気になり、コンシーラーを勧めるところ。マリコの素のようなリアクションには、ほのぼのとさせられた。
そして蒲原は佐妃子の元部下で彼女の信奉者という役どころ。それだけに、これまでも必要以上に大門やマリコらと群れず、淡々ときっちりと仕事をこなしてきた。そんな彼が、今回ある行為により土門と言い争いになる。
蒲原のひょうひょうとした態度もこれまでの土門の部下らしからぬものがあって興味深いのだが、個人的にはそこでの内藤の演技が抜群にササった。“古き良き上司(先輩)”ってこうだったよなあ…と思わず、うなってしまうというか、こんな人になら叱られてもいいと思う若者も多いのでは?
とかく、若い人に気を使って言いたいことも言えない上司が多い中で、内藤の叱りっぷりは胸に響くものがあった。詳しいシチュエーションは言えないが、「それは誰の正義だ!」と画面からこちらに向かって言う(ように見える)内藤には、ついうっかり「先輩すいません! 分かりません!」と謝ってしまいたくなるほど。
そして畳み掛けるように、諭すように蒲原に話すマリコにも同じくらい心を打たれるものがある。やっぱり17年目に突入するコンビネーションだけに、アメとムチならぬ、HOT&COOLなタッグの流麗なやりとりには脱帽させられた。
本作では、ストーリーや最新科学捜査技術だけでなく、ベテラン俳優陣の魂の演技とストーリーを通して深く考えさせられる“正義”とは何かということ。いやはや果たして、正義って何かねえ…?
毎週木曜夜8:00-8:54
テレビ朝日系で放送