【試写室】「カインとアベル」深い愛の物語に好感
「旧約聖書の『創世記』第4章に登場する兄弟の名前は？」と聞かれて正解を言える人は、日本人の何％くらいなのだろうか。
筆者のようにフランス・ニース生まれの帰国子女なら、「あ、カイアベね」とすぐにピンとくるのだが、大半は困り顔だろう。※一部フィクションです。
先日“大人の社交場”、平たくいえば某キャバクラで調査したところ「分かった！ カエサルとシーザーでしょ？(同じ人だよ)」とか、「ジャイアンとキリングでしょ！(番狂わせね)」とか「タカとトシでしょ？(欧米か！)」などなど、思わず口をパッカーンと開けたくなる答えばかりだった。
と、不毛な前フリはさておき、各局で放送されているドラマやバラエティーなどを事前に完成DVDを見て、独断と偏見とジョークに満ちたレビューで番組の魅力を紹介する、Smartザテレビジョン流の「試写室」。
今回は毎週月曜に放送中の、Hey! Say! JUMP・山田涼介の主演ドラマ「カインとアベル」(毎週月曜夜9:00-9:54フジテレビ系)を取り上げる。
そう、冒頭の答えは「カインとアベル」であり、本ドラマはアダムとイヴの息子たちの神話で、兄・カインが神・ヤハウェ(＝すべての父)からちょう愛を受ける弟のアベルに嫉妬する、“愛への渇望”をテーマに描かれた物語。
山田演じる主人公が家族や仕事、そして恋する人とのせめぎ合い、葛藤を通じながら“本当に大切なもの”をその手につかもうとする恋と成長を描くヒューマンラブストーリーとなっている。
10月24日(月)の第2話では、アウトレットモールのプロジェクトチームは次の段階へと進む。高田優(山田)は、矢作梓(倉科カナ)と設計の担当に。設計を依頼するのは大御所建築家・神谷仁(竜雷太)だ。
団衛(木下ほうか)によると、神谷はわがままでクセが強いため、優と梓は苦戦を強いられそうな気配。一方、優の兄で副社長の隆一(桐谷健太)は、バンコクの事業で組む現地ゼネコンの経営不振が発覚し、表情がこわばっていた。
父・貴行(高嶋政伸)は事業から手を引くことも考えていいと言うのだが、隆一は乗り切れる見込みがあると、資金繰りを進めることに。
そんな折、優と梓は、同じ会社の設計部でイメージ図を描いた長谷川守(小林隆)と神谷を訪問する。優があいさつをすると、神谷は意味ありげにうなずく。実は、神谷は優の祖父・宗一郎(平幹二朗)に孫の印象を教えてほしいと頼まれていたのだ。
宗一郎と神谷は旧知の仲であるのだが、神谷はそれを知っていても厳しさは変わらない。長谷川のイメージ図を見た神谷は、好きなように設計させてもらうと、3人を帰してしまう。
翌朝、貴行は隆一に見合いをさせようとしている代議士の娘とゴルフに行くと告げる。隆一は恋人である梓のことをハッキリと言い出せずにいた。
数日後、優たちは再び神谷のもとへ。神谷が描いた設計図は確かに立派だが、コストも膨大なものになってしまうため、長谷川の提案で一度チームに持ち帰る。だが、受け入れられず…というストーリー。
正直、第1話を見るまでは全然ピンときていなかった今期の“月9”。いきなり旧約聖書がどうとか、デベロッパーがどうとか言われても…と。ただ、見てみると日本人が好きな家族愛、恋人との愛、そして仕事への情熱、嫉妬…といった人間の感情をよく表現したドラマだった。
特に山田演じる優は実に感情移入しやすいキャラクターだ。あ、ルックスに関してはともかく。
家庭では優秀な兄と何かと比べられ、優秀ではないけど兄の力で大きなプロジェクトに入り、案の定仕事は最初うまくいかないけど、周囲の叱咤激励でとにかく真っすぐに、ひたむきに働いていく。私も自転車通勤で優秀な兄がいる身だけに、優の立場をおもんばかると恋しさとせつなさと心強さすら感じる。
それはともかく、倉科演じる梓でなくとも、優のどこか繊細で放っておけないキャラクターに、視聴者は「頑張れ優くん！」といった感じで応援したくなるのではないだろうか。
そして兄の浦ちゃん…ならぬ桐谷。父に忠誠を尽くし自分の人生を犠牲にしても家庭を守ろうとする顔、弟思いのよき兄としての顔、非情なビジネスマンとしての顔、恋人との将来を夢見る顔、さまざまな顔を持つ役どころだが、個人的には弟思いのよき兄の顔が一番しっくりくる。
ただ、時折見せるたくらみ顔というか、弟にどこか畏怖の念すら抱いているような目をするのが見ていてすぐに感じ取れ、せっかくの美しい兄弟愛が崩れていってしまうのだろうか…と思うとちょっぴり不安。この2人の関係性がどうなっていくのか、海の声に耳を傾けたいところだ。
そんな2人の父・貴行を演じる高嶋。あのひげ具合と立ち居振る舞いがいかにも大企業の社長っぽいし、こちらはこちらで父や姉・桃子(南果歩)への複雑な感情がどうドラマの縦軸に絡んでいくのか見どころ。
ものすごく個人的な感情で恐縮だが、高嶋が「姉さん」って口にするだけでドキッとするし、懐かしいニオイがしてうれしくなるのは、恐らく若い人には知る由もなく…。
この家族の行く末がどうなっていくのか見守りたい。まさかとは思うが、女装の家政夫がやってきて家庭を崩壊させ、やがて再生するなんていう結末は…ないか。局違うし。
その他でいえば、名優・平の貫禄の演技、第2話で登場する小林隆の「好きなことをしてお給料を～」のくだりにはものすごく共感を覚え、同じく2話ゲスト・竜雷太の建築家の名を借りた“ラスボス感”、木下ほうかのイヤミ課長(部長だけど)っぷりはもう鉄板！
優が所属する部署の同僚にも山崎紘菜や戸塚純貴といった若手注目俳優がぜいたくに配置されているし、シメに流れる主題歌もとても耳に残る歌だ。正直そんなにHey! Say! JUMPの楽曲をちゃんと聴いたことがなかったが、今回の曲は何度でもリピートして聴きたいくらい、癖になる曲。
性懲りもなくまた長々と書いてしまったが、それくらい良い意味でツッコミどころが満載で、視聴率うんぬん言われるけど、数字では測れない物語としての魅力がある「カインとアベル」。粗探しより、アラッ！という発見を探してみては？
例えば山田にキュンとするもよし、物語を追うもよし、桐谷のアニキ萌えを見るもよし、倉科のキュートさにデレるもよし、どんな見方をしてもいいとは思うが、何でもかんでも否定せず、自分だけは味方だと思って見るとまた違った味わいがありそうだ。
ただ、今さらこっそり打ち明けると、実はこのドラマが発表されたとき、タイトルをパッと見て…てっきり親友同士が共謀してDV夫を殺害し、吉田羊的な人に追い詰められる物語なのかな？と思っていたのはナイショですよ。もし告げ口したら全力でこの言葉を叫ぶだろうな。
ブルータス、おまえもか！
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
毎週月曜夜9:00-9:54
フジテレビ系で放送
